巫女さんデビュー?
「……うわあ、めっちゃ似合う」
「うん、可愛すぎるよ藤谷くん!」
「……あ、その、ありがとうございます……」
それから、数分経て。
お着替えを終え、おずおずと姿を見せた僕へとたくさんの言葉が届く。なんと、巫女さんになった僕へのお褒めのお言葉で。……僕が、可愛い? うん、何とも信じ難いご評価だけども……でも、そう言えば更科さんにも言われたことがあったような……その、恐悦至極に存じます。……ただ、そうは言うものの――
(……あの、更科さん。その、随分と今更ではあるのですが……そもそも、神主さんではダメだったのでしょうか? ……まあ、人数のバランスは崩れてしまいますけども)
そう、声を潜めつつ尋ねてみる。……いや、よくよく考えたら今は潜める必要もないと思うけど……うん、つい。
ちなみに、土橋さんに代わり僕がホールを担当することに異存はない。そもそも、田中さんがキッチン担当の生徒達にホールをお願いしようとしていた時、僕自身が立候補しようと思ったくらいだし。……ただ、女子の土橋さんは巫女さん担当――なので、男子の僕が代わるわけにはいかないと考え直して。……ただ、よくよく考えたら神主さんとしてホールを担当してもよかったんじゃないかと思い直したわけでして。すると――
(うん、別にそれでもよかったと思うよ。神主さんと巫女さんのバランスは崩れちゃうけど、緊急事態なんだしそうも言ってられないしね)
(……では、どうして……)
(……うーん、強いていうなら……うん、あたしの趣味かな?)
(あたしの趣味!?)
(うん、実は前々から思ってたんだ、遥くんに女装してみてほしいなあって。ほら、遥くんって可愛いから、絶対似合うと思ってたし。ほんと、めっちゃ可愛いよ、遥くん!)
(……そ、そうですか……)
同じく声を潜めつつ、ぐっと親指を立てお褒めくださる更科さん。ただ、申し訳ないけど僕の衝撃はとりわけ称賛の前のお言葉で。……うん、前々から思ってたんだね、僕に女装をしてほしいって。まあ、更科さんが喜んでくださっているなら何よりだけども。
ともあれ、あまり長く営業を中断しているわけにもいかない。そういうわけで、みなさん再開の準備をしているのだけども――
(……ところでさ、遥くん。我慢しなくていいから、今からでも行ってきたら?)
僕の様子に異変を感じたのだろう、ふとそうお尋ねになる更科さん。もちろん、そのご配慮はありがたい。大変ありがたい、のだけども――
(……いえ、それはなりません。巫女さんはお手洗いに行かないのです)
「アイドルかよ」




