お昼休み
「――おっはよ〜、唯菜」
「おっす、唯菜」
「うん、おはよう佳子、翔」
それから、20分ほど経過して。
教室の開いた扉の前で、一組の男女生徒――クラスメイトの竹内翔くんと田中佳子さんに迎えられ、朗らかな笑顔を見せる可憐な少女。それは、ほとんどいつもと変わらない光景……では、あるのだけども――
「でもさ、唯菜。今日、なんか遅くない? あっ、もしかして寝坊とか?」
ほどなく、そう問いかける田中さん。そう、いつもと違うとすれば……普段より、更科さんが教室に姿を見せる時間が遅いということで。
「……あ〜、いや〜、なんというか……まあ、よくよく考えたら、そんなに早く来なくても十分間に合うかなって。だから、明日からもこんな感じになると思う」
「え〜! だったら、ホームルームまでゆっくりお話しできないじゃん!」
「……あはは、ごめんね? でも、休み時間とか昼休みはゆっくり話そ?」
「……まあ、それなら」
田中さんの問いに、少し困ったような笑顔で答える更科さん。……まあ、そうなるよね。間違っても、僕とのことは言えないわけだし。……うん、申し訳ないです。
――それから、数時間が経過して。
「――やっと終わった〜! さあ、ご飯だご飯! みんな行くよ!」
四時間目の終了後、先生が教室を出てほどなくパッと立ち上がる田中さん。そして、彼女の呼びかけに呆れたように、それでも微笑ましそうに応じる五人の男女生徒達。いつも一緒に食堂に行っている男子三人、女子三人のメンバーで、今日も楽しそうに教室を出ていく様子が何とも微笑ましい。ちなみに、その中には竹内くん、そして更科さんもいらして。……さて、僕も――
「……ね、ねえ、藤谷くん。その……よかったら、一緒に食べない? お昼」
「…………へっ?」
鞄からお弁当を取り出していると、ふと頭上から控え目な声が。驚き顔を上げると、そこには緊張したような面持ちの女子生徒。里中弥湖さん――ミディアムボブの黒髪を纏う、あどけなく可愛らしいクラスメイトの女の子で。……でも、どして? どうして、僕とお昼を――
「……その、やっぱり嫌?」
「……へっ? あっ、いや全然そんなことなくて!」
「……そっか、よかった。じゃあ、食堂でもいいかな? 私、いつも食堂だから、お弁当持ってきてなくて」
「あっ、はいもちろん。……あっ、でも、僕が行ってもいいのでしょうか? 僕、お弁当ですし」
「うん、大丈夫だよ。確かに、二人ともなにか持ち込むとなればちょっと気が引けるけど、片方だけなら仕方ないじゃん。それに、確か持ち込み可能って書いてあったはずだし」
「……まあ、そういうことでしたら……」
未だ困惑しつつも、里中さんの言葉に小さく頷き答える僕。どうして、僕を――その理由は全く以て不明なのだけども……それでも、こんな僕を誘ってくれたのにお断りするのも申し訳ないしね。




