登校
「――おっはよ〜、遥くん!」
「……わっ! あっ、はい……その、ご機嫌うるわしゅう、更科さん」
「……いや、そんな挨拶してたっけ? 遥くん。そもそも、現実で初めて聞いたよ、それ」
翌日、麗らかな朝のこと。
緑豊かで小さな公園にて一人そわそわしていると、ふと僕の右肩にポンを叩く感触、そしてすぐそばから朗らかな声が。もちろん、確認せずとも分かるけども……ともあれ、振り向くとそこには声音に違わぬ朗らかな笑顔を見せる可憐な少女、更科さんのお姿があって。……うん、ほんとびっくりです、この状況に。
さて、昨日の告白の結果だけれど……うん、なんと言えばいいのだろう。昨日のお話の通り、身体の相性を確認するためあの後セッ、セッ……うん、セックスをしたんだけど、その結果が……うーん、なんて言うのかな? 例えば、付き合う=卒業だとすれば、その学校の入学試験には合格した、みたいな……うん、余計に分かりづらいよね。つまりは、まだお付き合いはしていないんだけど、今後そうなる可能性は残してくださったということで。……うん、ほんとびっくりです。なんかもう、色々とびっくりです。
だけど、驚愕はここで止まらず……なんと、本日から一緒に登下校をすることに。まだお互いほとんど何も知らないし、今後も一緒にいられる時間はそれほど多くないだろうから、基本的に登下校は一緒にしようと更科さんの方から提案してくださって。……うん、ほんとありがとうございます。
そういうわけで、なんと校舎までの道を更科さんと共に歩いているという、何とも信じ難い奇跡的な状況にあるわけなのだけども――
「……いやあ、それにしても……ふふっ、なんかすっごく不思議な感じ。まさか、昨日まで話したこともなかった男の子と、今こうして一緒に登校してるなんて」
「……そう、ですね。僕なんて、未だに夢じゃないかと思ってるくらいで……」
「ふふっ、大袈裟だなぁ。あっ、でも不思議というなら登校どころの話じゃないよね。昨日なんて、その日に初めて話した男の子となんと同じベッドに――」
「……や、やめてください更科さん」
「ふふっ、そんな照れなくても。お互い、もうさらけ出した仲じゃない。生まれたままの姿を」
道すがら、更科さんは楽しそうに、そして僕はたどたどしく会話を交わす。いや、更科さんとなのだから、もちろん僕も楽しいのだけれど……ただ、後半の方は僕としてはあまり積極的にお話ししたい内容ではなく……まあ、事実なんだけども。
ともあれ、それでもやっぱり楽しい時間であることに変わりはなく、気がつくとまだ少し遠くながらも前方に校舎が見えてきて……うん、やっぱりあっという間だったなぁ。
「……それでは、更科さん。また後で」
「……うん、ごめんね遥くん」
名残惜しくもそう言うと、言葉の通り申し訳なさそうに微笑み答える更科さん。というのも――更科さんのご希望により、登校を一緒にすることになったものの、教室まで一緒に、というわけではなく、それなりに校舎へと近づいてきた辺り――同じく登校中の生徒が多く見えてくる辺りでいったんお別れし、別々に同じ教室へと向かっていくことになっていて。
だけど、もちろん謝る必要なんてない。僕なんかと一緒の……それも、二人で一緒のところを見られるのに抵抗があるのは当然のことだし、むしろ僕の方が申し訳ない。なので、更科さんのこのご希望は僕にとってありがたかったくらいで。……まあ、一緒にいる時間が少なくなるのはもちろん寂しいけども。




