宮野さんの心中
――その後も、次はどこに行こうかと楽しくお話ししながら賑わう中を歩いていく僕ら。そして、
「……大変お上手ですね、優李くん」
「そう?」
「はい、とてもお上手です、古里くん。葎黎の狙撃手の名は、この場を以て古里くんにお譲りすることに致します」
「……いや、いらないけど」
中庭にて、射的を楽しみつつほのぼのとそんな会話を交わす僕ら。だけど、僕の申し出は敢えなくお断りされてしまい……うん、いらないよねこの異名。あと、そもそも僕のでもないし。
ともあれ、古里くんは本当にお上手で。瞬く間に打ち抜いていき、景品をどんどん取っていく。それこそ、このお店を出している二年B組の先輩方がちょっと困ったご様子なくらいに。
だけど、古里くんもそんな先輩方のご様子に気付いていたためか、景品を一つだけ受け取り他のものは全て返してしまって。まあ、ちょっと勿体ない気がしないでもないけれど……でも、古里くん自身がそれでいいのであれば、もちろん僕があれこれと言うことじゃない。……ところで、一つだけ受け取った景品は古里くんの好みとは違う気もするけれど……ひょっとして、里中さんにあげるのかな?
その後、古里くんがお手洗いへと。その間、宮野さんと二人になったわけだけれど……うん、ちょっと気まずいね。雑談もできないような間柄でもないとはいえ、二人きりというのはなかなかにレアな状況で――
「……あの、藤谷くん。少し、お聞きしたいことがあるのですが……」
「へっ? あっ、はいどうぞ!」
何のお話をしようか頭を巡らせていると、控え目なご口調でそう口にする宮野さん。……うん、助かった。それで、いったいどんなことを――
「……その、藤谷くんはどのように思ってます? 弥湖のこと」
「…………へっ?」
思いも寄らない宮野さんの問いに、思わずポカンとする僕。……えっと、いったいどう……いや、ともかく今はご質問に答えなくちゃ。なので――
「……僕は、友達だと思っています」
そう、躊躇いつつ口にする。僕は、友達だと思っている。尤も、里中さんが同じように思ってくれているかは分からないけれど……でも、きっと不快にはならないよね? 僕が、勝手に友達と思っていても。
「……そう、ですか。はい、とても素敵なことだと思います。……ですが、あくまでわたくしの勝手な願望なのですが……藤谷くんが、弥湖と結ばれてくれたら嬉しいと思っています。お二人は、傍から見ていてもとてもお似合いのように思えますので」
「…………」
控え目に――それでも、明確な意思を宿した声音でそう口にする宮野さん。里中さんと僕が、お似合い――それはそれで、宮野さんの本心なのかもしれない。
だけど……そこにはきっと、古里くんに対する宮野さんの想いも関わっていると思う。里中さんに対する古里くんの想いに、里中さん自身は分からないけれど、宮野さんは間違いなく気がついているだろう。そして、仮に里中さんと僕が結ばれることになれば、古里くんは里中さんへの恋を諦めることになるかもしれない。尤も、諦めるかどうかは分からないけれど……いずれにせよ、古里くんの想い人に別の恋人がいるという状況は、宮野さんにとってありがたい状況ではあるだろう。
もちろん、そのように思うことは何ら悪いことではない。宮野さんは自身の恋を成就させたいのであって、決して誰かが不幸になることを願っているわけじゃないのだから。
……だけど、宮野さんのご希望を叶えることはできなくて。僕なんかがお相手なんて、そもそも里中さんが嫌だろうけど……だけど、そのような事情を除いても、そもそも僕は更科さんが好きだから。なので――
「……あの、宮野さん。僕は――」
「ごめん、お待たせ二人と……ん、どうかした?」
「あっ、いえ!」
「……いえ、何でもありません、優李くん。それでは、そろそろ戻りましょうか。藤谷くんが遅れてしまうといけないですし」
返答の最中、ふと被さる形で言葉が届く。お手洗いに行っていた古里くんが、他の人達にぶつからないようにこちらに戻ってきていて。……大丈夫、だよね? さっきのお話、聞こえてないよね?
ややあって、教室の前へと戻ってきた僕ら。一度目の自由時間が終わり勤務に戻る僕に、まだ自由時間ながらも二人が一緒についてきてくれて。そして、二人といったんお別れし教室の中へと……うん、今はお仕事に集中しなきゃね。




