身に覚え?
「……美味しい」
「そうですね、優李くん。こちらのカスタードも、とても美味しいです」
それから、少し経過して。
比較的人の少ない辺りにて、それぞれタイ焼きを口にする僕ら。古里くんがつぶあん、僕がカスタード、そして僕らが決めた後、じっと悩んだご様子で宮野さんがカスタードを選んだわけで。……うん、美味しい。クリームもだけど、特に生地がすっごく美味しい。
「……あの、優李くん。その……良ければ、少し交換しませんか? 実は、そちらのお味もとても気になっていまして……」
ややあって、古里くんへと控え目に尋ねる宮野さん。そして、彼女のこの言葉は少しばかり予想していて。古里くんと僕がそれぞれ選んでから、宮野さんが僕と同じカスタードを選んだわけだけれど……それは、古里くんにこの提案をするためじゃないかなあと何となく思っていたからで。
尤も、古里くんと交換をしたいのであれば、古里くんと違う味にしさえすれば良く、僕と味を同じくする必要はない。だけど、二人いる内の一人だけにこの提案をするのは躊躇われたのだろう。だから、宮野さんは僕と同じ味に合わせた。これなら、古里くんだけにこの提案をしても不自然じゃない。違う味を食べてみたい、という理由であれば、同じ味の僕に交換を求める方が不自然なわけだし。……まあ、あくまで僕の推測ではあるのだけども。
ともあれ、困ったご様子の古里くん。……うん、そうなるよね。かと言って、古里くんの代わりに僕が宮野さんと交換をする、というわけにもいかない。宮野さんと僕は同じカスタードなわけだし、そもそも彼女は他でもない古里くんと交換をしたいわけで。……まあ、あくまで僕の推測ではあるのだけども……でも、これに関してはなかなかに確信を抱いていて。
「……うん、それじゃあ……その、この辺りを好きなだけ千切ってもらえると……」
「……あの、優李くん。それは、ちょっと難しそうなのですが……」
ややあって、困ったご様子ながらも宮野さんへタイ焼きを差し出す古里くん。この辺りとは、まだ自身の口をつけていない辺りで……うん、見覚えあるなあ。というか、身に覚えがあるなあ。あれは、初めて更科さんと一緒にクレープを食べに行った時で……まあ、結局は彼女が僕の食べかけのところをパクリといっちゃったわけだけども。……うん、恥ずかしいね。
その後、なかなかに千切りづらいこともあってか、最終的には宮野さんが恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに古里くんのタイ焼きへそのままお口を。一方、古里くんも恥ずかしそうに顔を逸らして……うん、申し訳ないけどちょっと微笑ましい。




