更科家にてクッキング?
「――いらっしゃい、遥くん! 待ってたわ!」
「あっ、はい、お邪魔しますお母さま! ……その、すみません、突然」
「何言ってるのよ遥くん! 遠慮なんてせず、いつでも来てくれていいのよ。それこそ、唯菜がいない時でも」
「あたしの男に何するつもりだよオバさん」
「……あら、オバさんだなんて……唯菜も、あと20年もすれば同じくらいになるのにねえ、ふふふっ」
それから、10分ほど経て。
僕の顔を見るやいなや、満面の笑顔で迎えてくださる山吹色の髪の女性。可愛らしく綺麗で、そしてとても優しい更科さんのお母さまで。……でも、最後の方の満面の笑顔がなんだか怖い。あと、最後のお言葉でお母さまのご年齢がだいたい分かってしまって……うん、やっぱりお若い。でも、実際のお歳以上に遥かにお若く見えるからびっくりで。高校生の実のお母さま、という前提がなければ、きっと20代だと思っただろうくらいに。
さて、今いるのは更科さんのお宅のリビング。本日はなんと、ここ更科家のキッチンでお料理をさせていただけることになって……うん、ほんとにいいのかな?
「それで、何を作るの? 遥くん」
「……そう、ですね。お二人は、なにかご希望はありますか?」
「……うーん、そうだね。今は、ご飯とかよりスイーツの方が……それじゃあ、クレープで!」
「いいわね、唯菜。私も、クレープでお願いできるかしら?」
「はい、もちろんです。それでは、しばらくお待ちいただけたらと」
それから、少し経過して。
キッチンに立ち、ダイニングテーブルで待つお二人へご希望を伺う。うん、美味しいよね、クレープ。お二人のご感想次第では、和風喫茶ではあるけれどメニューに入れてもらうようお願いするのもアリかもしれない。
さて、気を引き締めクレープ作りを開始。ありがたいことに、冷蔵庫にある食材は自由に使ってよいとのことで……うん、ほんとにありがたい。何としても無駄にしないように……いや、食材を無駄にしちゃ駄目なのは今に限ったことじゃないけども。
それでは、クレープを作る工程だけども……うん、ご説明は省いてもいいかな? そういうわけで(どういうわけで?)、調理開始からおよそ一時間――お二人ご希望の、カスタードクリームとフルーツがたっぷり入ったクレープが完成したわけでして。……うん、上手くできた……よね?
「…………うわぁ」
「……い、いかがでしょうか?」
それから、ほどなくして。
ダイニングテーブルにて、隣でクレープを口にする可憐な少女。そんな彼女に、一口目を終えた後おずおずと尋ねてみる。……さて、ご感想のほどは――
「……めっちゃ、美味しい」
「……ほんとう、ですか?」
「うん、ほんとに。というか、演技でさっきみたいなリアクションができるほど器用じゃないし、あたし」
「ええ、本当に美味しいわ、遥くん。お母さん、感動しちゃった」
「……そう、ですか……よかった」
緊張で息も止まりそうな僕に、お二人の温かなお言葉が届く。本当に嬉しそうなご表情から、本当に美味しいと思ってくださっていることがひしひしと伝わって……うん、よかった。ほんとに、よかった。
「ねえ、遥くん。クレープのお礼、というわけでもないけど、よかったら夕ご飯を食べていかない? 遥くんのためにお母さん、腕によりをかけて作っちゃうから」
「……へっ? あっ、いえそんなお気になさら――」
「食べていってよ。あたしも、遥くんと一緒にご飯食べたい。学校では別々なんだし」
「……更科さん……はい、ありがとうございます更科さん、お母さま。それでは、ご相伴に与らせていただきます。……ですが、もしよろしければ、僕にもお手伝いさせていただけませんか?」
「そう? だったら、お願いしちゃおうかな。遥くんと私の、初めての共同作業ね」
「……へっ? あっ、その――」
「いやあたしも手伝うからね? 二人っきりにさせるわけないでしょ」
そんなこんなで、少しのんびりした後、今度は三人でキッチンへと。更科さんが真ん中、お母さまが左、僕が右という配置で。なので、僕の左には白と薄桃のエプロンを纏った可憐な少女がおはして……うん、めっちゃ可愛い。……保つかな? 僕の心臓。




