文化祭に向けて
「――さて、みんな。なにか希望があったら、遠慮せずどんどん言ってね!」
「はーい、メイド喫茶!」
「おっ、いいねえ。学祭の定番だよね〜」
「お化け屋敷!」
「うん、それもいいね。だったら、私は雪女をやってみたいな〜」
それから、数日経た放課後のこと。
教壇から、華やかな笑顔でみんなへ話しかける女子生徒。クラスのリーダー的な存在の女の子、田中佳子さんで。そして、彼女の隣では同じくリーダー的存在の男の子、竹内翔くんが和やかな笑顔でみんなの意見を黒板に書いていく。……いつもだけど、いい雰囲気だよね、あの二人。ひょっとして……いや、よそう。野暮な詮索はよくないよね。
さて、何をしているのかというと――体育祭が終わってほどなくだけれど、来月の11月に開催される文化祭に向けての話し合いが行われているわけでして。
「いや〜、楽しかったね。体育祭の時もだけど、みんなで一つの目標に向かって頑張るって、やっぱりいいもんだよね」
「そうですね、更科さん。僕も、とても好きです、こういうの」
それから、一時間ほど経て。
帰り道にて、本日も和やかな雰囲気で会話を交わす僕ら。話題は、少し前まで行われていた文化祭についての話し合いに関してで。あれ以降も、みんなで和気藹藹と意見を出し合い、話し合いを経て最終的に和風喫茶に決定しまして。そして――
「……それにしても、もう今から楽しみです。更科さんの巫女さん姿」
「……まあ、ちょっと恥ずかしいけどね。でも、みんな期待してくれてるし、頑張らないとね」
お言葉の通り、少し恥ずかしそうにお答えになる更科さん。僕らE組の和風喫茶では、ホールの担当者は男子は神主さん、女子は巫女さんの衣装で接客をすることになり、そして更科さんが巫女さんの一人を担当することになったわけでして。
「でもさ、ほんとはちょっと嫌なんじゃない? あたしの巫女姿が、みんなに見られること。すっごいヤキモチ妬きだもんね〜、遥くん」
「……いえ、そんなことは……」
すると、ふとそんなことを言う更科さん。その表情は何とも楽しそうで、僕をからかっていることがありありと伝わって。……まあ、過去の件を鑑みればそう思われても仕方がない。ない、けれども――
「……まあ、嫉妬のような気持ちも全くないとは言えません。ですが、それはそれとして、更科さんが皆さんに褒められるのは僕にとってもとても嬉しいことなので」
「……ふふっ、そっか」
そう、本心から口にする。すると、少し可笑しそうに微笑む更科さん。彼女が巫女さんになるのは未来のことなので、厳密に言えばまだ褒められると決まったわけではないけれど……でも、絶対そうなるよね。だって、更科さんだし。
「でもさ、ちょっと意外だったな。遥くんもホールを希望すると思ってたから。ほら、バイトでも接客を担当してるでしょ?」
「……そう、ですね。確かに、職場では接客を担当しているのですが……ですが、どちらかと言えば料理の方が得意かな、と自分では思っていまして」
「……そう、なんだ」
「……それでも、やはり不安はありますけどね。両親は褒めてくれてますけど、いざ他の方々に食べていただくとなると……」
至極尤もな更科さんの問いかけに、何ともたどたどしく答える僕。確かに、職場では主に接客を担当しているけれど、どちらかと言えば料理の方が得意だと自分では思う。……とは言っても、皆さんに受け入れていただけるかどうかと思うとやっぱり不安ではあって――
「――だったら、先に試してみる? あたしで」
「…………へっ?」




