体育祭
「――さあ、みんな頑張ろうね! でも、無理はしないでね! 休む時はちゃんと休んで、みんなで最高の思い出にしようね!」
それから、二週間ほど経て。
グラウンドの隅の方にて、大きな声でみんなへ呼びかける女子生徒。クラスメイトで更科さんの友人でもある女の子、田中佳子さんで。そして、同じく更科さんの友人の男の子、竹内翔くんを中心に大きな声で田中さんの言葉に応える。……まあ、僕はそんなに大きな声を出してないけども……その、ごめんなさい。
ちらと、視線を移す。そこには、今日も朗らかな笑顔を浮かべる可憐な少女、更科唯菜さんのお姿が。今日も可愛いなぁ……あっ、目が合っちゃった! すると、一瞬ながらニコッと僕へ微笑みかけ……うん、照れちゃうね。あと、バレてないかな? 心の声。
さて、本日は体育祭。みんなで今まで頑張ってきた成果を発揮する日が、いよいよやってきたわけでして……うん、僕も頑張ろう。
「…………すごい」
それから、30分ほど経過して。
ポツリと、感嘆の声が。僕だけでなく、ここE組のエリアのあちこちから同じようなお声が。ところで、体育祭はクラス別でチームを組むことになっているので、このエリアには一年生、二年生、三年生のE組の生徒がいるという何とも新鮮な雰囲気でして。
さて、何に対しての感嘆かというと……今しがた行われていた100メートル走にて、我らが一年E組の端整な男の子、古里優李くんが見事1位でゴールテープを切ったからで。尤も、クラスメイトなので足が速いのは体育の授業などから知っていたけど、それでも改めて――
「ねえ、栄子。よく見たら、古里くんってカッコよくない?」
「だよね、以前から思ってた!」
すると、近くから届く称賛のお声。そして、少し遠くの二年生や三年生からもそのようなお声が。……何だろう、自分のことじゃないのに、こう――
「ふふっ、嬉しそうだね遥くん」
「……あっ、はい。同じチームですし、それに……古里くんが人気なのは、僕も嬉しくて」
「ふふっ。そういうとこ、遥くんらしくていいと思う」
「……あ、ありがとうございます。
僕の隣で、楽しそうに微笑む女子生徒。可愛らしいクラスメイトの女の子、里中弥湖さんで。……そっか、僕らしいんだ。こうして褒めていただけるのは、もちろん嬉しい。嬉しいの、だけども――
「……その、里中さん。申し訳ないのですが、少しばかり離れていただけますと……」
「え〜? でも、しょうがないじゃん。ここ、結構狭いんだし」
そうお願いするも、応じてくださるご様子のない里中さん。さて、どういう状況かと申しますと……こう、あまりに近いといいますか、もはや密着と言って差し支えないほどでして。なので、申し訳ないのだけども、少しだけでも離れていただけたらなぁと。ほら、古里くんが複雑そうにこっちを見てるし、それに……うん、ここE組のエリア内からも、何だか冷え冷えとした視線を感じるわけでして……うん、困ったね。




