無理があったかな?
さて、その後もカラオケは続く。何とも異質な組み合わせでどうなるかとも思ったけど、意外と楽しく過ごすことができて……まあ、そもそも僕からすれば三人の内二人は友達だしね。……まあ、お二人が友達と思ってくれていれば、の話だけども。
「あっ、そろそろドリンクも減ってきたし、みんなの分も取りに行ってくるよ。それじゃあ、行こ? 遥くん」
「……へっ? ……あ、はい」
「あの、それなら僕が――」
「ううん、いいの。古里くんは舞歌は二人で待ってて」
里中さんのお言葉に、戸惑いつつ頷く僕。そして、果たして止めに入った古里くんをニコッと笑いかけ留める里中さん。……うん、意図は分かる。そもそも、里中さんはそのために来ているわけだし。一方、古里くんのことを思えば、もちろん僕はここでお断りするべきなんだけども……でも、上手い口実なんて思いつかないわけでして。
そういうわけで、申し訳なくも里中さんと共にお部屋を後に。そして、他愛もない会話を交わしつつ角を――
「――っ!!」
「……へっ?」
刹那、ポカンとする里中さん。というのも、とっさに僕が里中さんの手を取り留めたからで。そして、その理由は――
「ねえ、唯菜はどうする?」
「……うーん、あたしはお水かな」
「お水なの!?」
角の向こう、ドリンクバーの前で和やかに会話を交わす二人の女の子。一人は、クラスメイトの田中さん。そして、もう一人は……クラスメイトで友達でもある可憐な少女、更科唯菜さんその人で。
「……ふふっ、意外と大胆だね、遥くん。まさか、いきなり手を掴むなんて」
「……その、申し訳ありません、里中さん」
その後、声を潜めつつ会話を交わす。……うん、ほんとに申し訳ない。……ところで、いつの間にか僕の呼び方が変わってるけれど……ひょっとして、宮野さんの影響かな?
ともあれ、じっと息を潜め状況を窺う。ボーリングに行くと聞いていたけど、今日はカラオケの気分になったのかな? それとも、ボーリング場が満員だったため急遽カラオケに変更した、とか。いずれにせよ、もちろん誰も何も悪くないんだけども……うん、よりにもよって今日に、とは思ってしまって……。
「……でも、なんで隠れてるの? もしかして、実は仲が悪い、とか?」
「……それは」
すると、きょとんと首を傾げ尋ねる里中さん。……うん、まあそうなるよね。でも、本当のことを言うわけにはいかない。なので、思案を巡らせた後――
「……僕は、更科さんが好きなんです。ですが、ご存じの通り臆病な僕は、彼女に話しかけることもできない有りさま。なので、ここでバッタリ会ってしまおうものなら、きっとパニックになってしまうといいますか……」
引き続き、声を潜めつつそう話す。……ちょっと、無理があったかな? ……でも、そこまで不可解なこともないよね? 僕が臆病なことはきっと気付いているだろうし、気付いていなかったとしても、僕の印象からして驚くことでもないはず。実際、校内では更科さんと話していないわけだし。まあ、最後のパニックに関しては少し言い過ぎかもしれ……いや、そうでもないかな? 実際、この状況で会っちゃったらほんとにパニックになるだろうし。ともあれ、里中さんのご反応は――
(……やっぱり、そうなんだね)
「……へっ?」
「ううん、何でもない。あっ、空いたみたいだよ、遥くん」
すると、いっそう小さな声でなにかを口にする里中さん。だけど、その内容までは聞き取れず……まあ、詮索なんて野暮なことはしないけども。
ともあれ、無事にドリンクバーへと到着。その後も慎重を期しつつ歩いていき、更科さんと出会すことなくお部屋へと戻り……ふぅ、よかった。




