羨望?
「……さて、さっそくだけど……誰から歌う?」
さて、時は今日に戻り――みんなを見渡しつつ、朗らかな笑顔でそう問いかける里中さん。だけど、誰からも手は挙がらず……うん、まあそうなるよね。
「……うん、やっぱりここは私かな」
ややあって、仕方なさそうに微笑む里中さん。……うん、そうなるよね。里中さん以外、まず立候補するタイプじゃないだろうし。……いや、里中さんもどちらかと言えば立候補側じゃないと思うけども。
「……うーん、立候補はしたものの……それでも、トップバッターはやっぱり緊張するなあ」
ややあって、リモコンを操作しつつそう口にする里中さん。……うん、そうだよね。お言葉に甘えてしまったけど、やっぱり申し訳な――
「……ん?」
ふと、ポツリと声をもらす僕。というのも、隣に座る里中さんがニッコリと僕へマイクを差し出していたからで。そして、戸惑う僕へと満面の笑顔で言葉を紡ぐ。
「――だから、一緒に歌って? 藤谷くん」
「――お二人とも、とても素敵でした。それに、とても息もピッタリで。優李くんも、そう思いますよね?」
「……うん、そうだね」
「ほんと? ありがと舞歌、古里くん」
「……あ、ありがとうございます」
それから、五分ほど経過して。
流行りのデュエット曲を、緊張しつつもどうにか歌い終えた里中さんと僕。……いや、緊張してたのは僕だけかもしれないけども。……あと、流行りに疎い僕でもなんとか分かる曲でよかったです。
そして、宮野さんは楽しそうな、古里くんは複雑そうなお表情でそれぞれご感想を……うん、古里くんはそうなるよね。その、申し訳ないです。……でも、そんなに息ピッタリだったかな?
「それでは、わたくし達も一緒に歌いませんか? 優李くん」
「……えっ、僕は……その、歌うのとか苦手だから、今はちょっと……」
「……そう、ですか。苦手でもわたくしは一向に構わないのですが、無理強いはよくないですし、ひとまず先に歌いますね。ですが、後で是非ご一緒に」
「……うん、分かった」
ほどなく、古里くんとの会話の後に曲を送信する宮野さん。……うん、古里くんはそうなるよね。実際に歌うのが苦手かどうかは分からないけど、好きな人の前で他の異性の人とデュエットというのはできれば避けたいところだろうし。僕だって、更科さんがその場にいたら流石に……うん、やめよ。想像するだけでもちょっと怖いし。
ところで、それはそうと……うん、意外と積極的に話すよね、宮野さん。いや、もちろんいいことなんだけども……ただ、里中さんから聞いていた印象とはちょっと違うなあと。やっぱり、里中さんの存在が心強いからかな? まあ、それはそうと……いいなあ、宮野さん。古里くんをファーストネームで呼べて。……いや、僕が呼んじゃダメだと言われてるわけじゃないし、きっと古里くんも受け入れてくれるとは思うけども……うん、僕にはハードルが高くって。




