どうしてこうなった?
――それから、一週間ほど経て。
中間試験を終え、教室の中はまるで牢獄から解放されたような雰囲気に。……いや、牢獄にいる気分なんて知らないけども……ともあれ、大半の生徒が晴れやかな笑顔でお話を続けたり教室を後にしたりしていて。
そして、更科さんは田中さんや竹内くん達とボーリングに行くとのこと。テストの最終日にはグループのみんなでボーリングに行くのが風習のようになっているとのことで、更科さんご本人は今日はあまり気の進まないご様子だったけれども……それでも、楽しんできてくれたら嬉しいな。そして、僕はというと――
「――それにしても、このようなお顔触れでカラオケだなんて未だに驚いています。優李くんも、そのように思いませんか?」
「……うん、そうだね宮野」
「もう、ですから舞歌でいいと申し上げてますのに」
隣の席の端整な男の子、古里優李くんへと柔らかな笑顔で話しかける清麗な女の子。宮野舞歌さん――今のやり取りなどから察せられるかもしれないけれど、古里くんにご好意を寄せているというクラスメイトの女子生徒で。一方、古里くんは困ったご様子で正面の僕の隣へと度々視線を向ける。そこには――
「ふふっ、さっそく楽しそうだね二人とも。ねえ、藤谷くん」
「……そう、ですね、里中さん」
そう、ご自身も楽しそうに話すあどけなく可愛い女の子、里中弥湖さんのお姿が。古里くんと宮野さん、そして里中さんと僕という、何とも異色な組み合わせの四人でカラオケに訪れているわけでして……うん、どうしてこうなった?
――お話は、40分ほど前に遡る。
『――ねえ、藤谷くん。実は、折り入ってお願いがあるの』
帰り支度をしていると、ふと僕の席に来てそう口にした里中さん。そして、ここでは話しづらいからということで、教室を出て少し遠くの踊り場へと移動。そこで里中さんから話されたのが概ね下記の内容で。
前述の通り、宮野さんは古里くんにご好意を寄せていて、その想いを叶えるべく友人である里中さんへとご相談を。思い切って古里くんをデートに誘ってみてはどうか、と里中さんが提案すると、そんな勇気はなく、どうにか誘えて奇跡的に承諾を得られたとしても、最初から二人だときっと緊張でほとんどなにも話せなくなる、といったご回答が返ってきたとのことで……うん、分かるなぁ、そのお気持ち。
そこで、里中さんが提案したのが、里中さんと僕を含むダブルデートで。友達の里中さんと一緒なら、宮野さんの緊張も少しは解れるだろうし、里中さんからの助けも期待できる。そして、里中さん側の相手に僕を選んだのは、里中さん自身が僕と仲が良いと思ってくれていること、そして僕が一緒であれば古里くんも承諾してくれるかもしれない、と考えたからとのことで。最近になって古里くんと僕がお話しするようになったことを、里中さんもご存じだったみたいで。
……うん、上手い計画だと思う。これなら、宮野さんの懸念が色々と解消されるわけだし。……でも、古里くんが断れなかった理由は、万が一にも里中さんと僕の仲が進展してしまったら、といった不安も恐らくは多分にあったからで……うん、ごめんなさい。でも、僕は更科さん一筋なので、どうか安心していただけたらと。




