気になりすぎて?
「……なるほど、そんなことが」
それから、少し経過して。
そう、納得のご様子で頷く更科さん。あの日の古里くんとの件を、今しがた大まかにお話ししたわけで。……うん、痴情のもつれは語弊がありすぎたよね。いや、語弊というか完全な間違いだし。
それでも、古里くんの意中の人がどなたかまでは伝えていない。以前、古里くんに僕が恋敵のように認識されていたこと、そして誤解が解けた後、古里くんに恋の協力をしてほしいとお願いを受けたことなどは伝えたけれど……でも、ここまで言っておいてではあるけれど、せめて彼の想い人がどなたか、という部分だけでも伏せておかないと、って思ったから。もちろん、更科さんが言いふらすなんて全く以て思ってないけども……でも、そういう問題ではないかなあと。
「……それで、遥くんはなんて言ったの? 協力してほしいって言われた時」
「はい、僕でよければと」
「協力するの!?」
僕の返答に、目を見開く声を上げる更科さん。……あれ、そんなにおかしなことかな? まあ、確かにその時点ではほとんど関わりもなかったけども……でも、お断りする理由もないわけでして――
「……へぇ、そうなんだ。遥くんは、あたしが他の人と付き合ってもいいわけだ。ふーん」
「…………へっ?」
ふと、そんなことを仰る更科さん。それも、心做しか随分と冷えたご視線で。……あれ、どうしてそんな結論に? まあ、それはともあれ――
「……もちろん、それは更科さんご自身の意思によるものであり、僕が口を出していいことではありません。ですが……僕は、嫌です。もちろん、自分でも烏滸がましいとは承知していますが……それでも、更科さんの隣にいるのはいつでも僕でありたいので」
「……そ、そっか……うん、それならいいけど」
躊躇いつつ返事をすると、さっと目を逸らしお答えになる更科さん。心做しか、その綺麗な頬がほんのりと染まっていて。そして、さっきまでのあの冷気はすっかりなくなっていて……ふぅ、よかった。
「でもさ、遥くん。だったら、古里くんの好きな相手って誰のこ……ん? ……ああ、うん、そっか。もしかして、里中さん?」
すると、ご思案の後そう問いかける更科さん。……うん、ほんとすごすぎるよね。探偵さんになれるんじゃないかな? そして……うん、もうこうなっては流石にごまかしようもなく……なので、
「……その、すみません古里くん」
「……いや、ここにいないけどね、古里くん。でも、つまりは古里くんが里中さんを好きで、それで古里くんの恋が叶うように遥くんが協力するってことね」
「……はい、そういうことです」
「なるほど、それで古里くんがちょくちょく遥くんのことを鋭い目で見てたわけだ。里中さんとすっごく仲良いもんね〜、遥くん」
「……はい、そういうことです」
観念して古里くんへ謝罪をすると、途中まで納得のご様子、そして途中から満面の笑顔でお話しなさる更科さん。だけど、それはさっきも見たような、まるで笑っている気のしない笑顔で……いや、仲が良いのは事実かもしれないけども、それでもそこまで仰るほどでは……ところで、それはそれとして――
「……ですが、更科さん。以前から、古里くんの視線には気付いていたんですよね? でしたら、里中さんと僕がお話ししている時などに、更科さんであれば古里くんのご好意が里中さんに向いていることに気付いていても不思議ではないかなと……」
「……ああ、そう言われれば。でも、その時は気づかなかったんだよね。里中さんとと〜っても楽しそうにお話ししている遥くんが気になりすぎて」
「……そ、そうでしたか」
そう尋ねると、いっそう満面の笑顔で答えてくださる更科さん。……いや、もちろん楽しいことは否定しないけども……でも、そこまで言うほどだったかな? ともあれ……うん、聞かなきゃよかった。




