体育祭に向けて
「――それじゃあ、参加種目を決めるけど、なにか出たい種目があったら言ってね!」
「はい、サバイバルゲーム!」
「いや無いよ。さっき説明したよね、種目」
それから、二週間ほど経た放課後のこと。
一年E組の教室にて、壇上の田中さんと竹内くんを中心に和気藹々と言葉が飛び交う。そんな雰囲気が何とも微笑ましく、何気なく視線を移すと更科さんもまた微笑んでいて……あっ、目が合っちゃった。……うん、照れますね。
さて、今話し合っているのは、来月の十月に開催される体育祭の参加種目に関してでして。……うん、もうこんな時期かあ。
「――それにしても、もうこんな時期かあ。ねえ、遥くんはなにか思い出とかある? 体育祭の」
「……そう、ですね。やはり、あれですかね。小学四年生の時に借り物競走に参加していたのですが、借り物のメモになんと友達と記されていまして。そして、ご存じの通り僕には友達がいなかったのですっかり途方に暮れてしまい、そんな僕を見かねた担任の先生が友達として一緒に走ってくださり――」
「……うん、もう大丈夫。なんか……ごめんね?」
それから、少し経過して。
帰り道、街路樹が彩る穏やかな道を進みながらそんなやり取りを交わす僕ら。……でも、どうして更科さんが謝罪を? 悪いことなんてなにもしてないのに。
「でもさ、遥くん。掘り返すのも申し訳ないなと思うけど……もし、借り物競走に参加したとして、それでまたお題が友達だったら、誰を連れてくの?」
「……そう、ですね」
すると、ややあってそう問いかける更科さん。もちろん更科さんを、と言いたいところではあるけれど……だけど、残念ながらそれはできなくて。繰り返しになるけれど、僕らは校内では基本的に関わらないことになっているから。さて、そうなると……うん、やっぱり里――
「……まさかとは思うけど、里中さんと仲良く手を繋いでゴールする、なんて言わないよね?」
「……へっ? あっ、いえ……」
瞬間、背筋がゾッとする。……あれ、すっごく笑顔なのにすっごく怖い。どうやら、里中さんを連れていくのはダメなようでして。……あと、手を繋ぐ必要があるのかは分からないけど……まあ、借り物競走ってそういうイメージかもね。ともあれ……ふむ、だとするとやっぱり――
「……古里くん、でしょうか」
「……ああ、そう言えば最近ちょっと話してるよね。なんかきっかけとかあったの?」
僕の返事に納得をしつつも、ちょこんと首を傾げ尋ねる更科さん。……うん、めっちゃ可愛い。思わず抱きしめたくなるくらいに。……まあ、もちろんそんな度胸もないけども。
ただ、それはさて措き……うん、何とお答えしたものか。きっかけというなら、もちろんあの件――微力ながら、古里くんの恋に協力すると約束したあの件なのだけども……でも、古里くんの大切なプライバシーに関わることだし、許可もなく僕の口から話していいことじゃなくて。なので――
「……まあ、いわゆるフィーリングといいますか――」
「絶対嘘でしょ。だったら、とっくに仲良くなってるはずだし」
「……ご尤も」
「……そう言えば、確か夏休みのちょっと前くらいからちょくちょく遥くんのこと見てたよね? 古里くん。それも、最近まではちょっと敵意のある感じに。それと関係あったりする?」
「…………」
……うん、すごいね更科さん。そして、こうなると流石にもう、あの時のお話について全く何もお伝えしないわけにもいかなくて。それでも、古里くんの大切なプライバシーに関することなのでなるべくオブラートには包みたい。……うん、なるべくオブラートに――
「……その、実はちょっとした痴情のもつれが――」
「どゆこと!?」




