好きな人
古里くんの問いに、しばし口を結ぶ僕。里中とは、里中弥湖さん――ミディアムボブの黒髪を纏う、あどけなく可愛らしいクラスメイトの女の子で。だけど、驚いたかと問われればそうでもなくむしろ予想の通りで。というのも、古里くんの視線を強く感じていたのが、とりわけ里中さんとお話ししている時だったから。なので――
「……古里くんは、里中さんにご好意を寄せているのですね」
「……あっ、いや、そういうわけじゃ……ただ、ちょっとだけ気になってるだけで……」
躊躇いつつも確認すると、両手を横に振りつつ答える古里くん。だけど、あからさまに慌てたその様子や、顔が染まっていることからも流石に疑う余地もなく……うん、微笑ましい。
でも、ほのぼのしてる場合ではなく、今は質問に答えなくちゃ。……でも、果たして何と答えるべきか……うん、やっぱり――
「……里中さんとは、えっと……友達?」
そう、たどたどしく答える。……まあ、里中さんがそう思ってくれているかどうかは分からないけど、他に適切な説明も思い浮かばなくて。……でも、嘘というほどでもないよね? たぶん。
「……友達……うん、まあ付き合ってるわけじゃないっぽいし、それは信じる。けど……藤谷は、どう思ってるの? 里中のこと」
すると、僕の言葉に頷きつつも不安そうに尋ねる古里くん。里中さんのことをどう思ってるか――流石に、その意味を確認する必要はなく。なので――
「……僕は、更科さんが好きなんです」
「…………へっ?」
そう答えると、ポカンと目を丸くする古里くん。更科さんが好きというのが意外、というより、古里くんと同じく僕も里中さんが好きだと思っていたからだろう。実際、里中さんとお話しするのも楽しいし。
「……そう、なんだ。うん、更科も可愛いし、いつも笑顔で明るいしね。えっと、それじゃあ里中とは――」
「はい、さっきも言ったけど友達です。……尤も、里中さんがそのように思ってくれているかは分からないのですが」
「……まあ、里中の方はそう思ってないかもね」
「……あ、やっぱりそうですよね……うん、思い上がりも甚だしく恥ずかしいです」
「……いや、そういう意味じゃないんだけど……うん、まあいっか」
更科さんが好きという僕の言葉に、驚きつつも納得を示してくれる古里くん。……ふう、よかった。信じてくれたみたいで。……まあ、そもそも疑う理由もないだろうしね。
「……えっと、それなら……協力とか、してくれたりする? 里中とのこと」
「はい、僕でよければもちろん」
「……そっか、ありがと。僕も協力するよ。藤谷が、更科と付き合えるように」
「あ、ありがとうございます。……ですが、その、お気持ちだけいただけたらと……」
控え目に尋ねる古里くんに、そこには迷うことなく答える僕。古里くんの恋は応援したい。なので、微力ながら僕が彼に協力することに関しては何の問題もないのだけども……でも、僕への協力に関してはお気持ちだけいただけたらなあと。ほら、更科さんは校内では僕と関わらないご方針なので、協力は少々まずいかなあと。




