二学期
「――おっはよ〜、唯菜」
「おっす、唯菜」
「うん、おはよう佳子、翔」
それから、一週間ほど経て。
教室の開いた扉の前にて、一組の男女生徒に迎えられ笑顔を見せる可憐な少女。クラスメイトで僕の友達でもある美少女、更科唯菜さんで。ちなみに、本日も途中までは一緒に登校しております。
さて、今は九月上旬――僕にとってこれまでになく充実していた夏休みを終え、再び更科さんと登下校ができるという、これまた僕にとってこれまでになく充実した学校生活へと戻ってきたわけでして……やったー、更科さんと毎日会える!
「――さて、平安時代の貴族の恋愛は、まず和歌から始まります。そして――」
それから、数時間後。
三限目――古文の授業にて、柔らかで透き通った声音が心地好く響く。同じ日本という国でも、時代によって恋愛の仕方がこうも違うというのは何とも新鮮で……いや、そこまで大きく違うわけでもないのかな? 昨今でいえば、マッチングアプリなどでメッセージのやり取りをしてから会う、みたいな感じが流行っているとも聞いたことがあるし。……まあ、それはそれとして――
「…………」
背中に、じっと鋭い視線が。そして、確認せずとも分かる。僕の二つ後ろ、そしてその右横の席の男子生徒の視線で。二ヵ月ほど前――夏休みに入る少し前くらいから度々感じていた視線で、夏休みが終わり二学期に入ってからやはり再び感じていて。……そして、その理由もおおかた察してはいるつもりで。
「やっと終わった〜! さあ、歌いに行こう! もちろん、唯菜も行くよね?」
「……あっ、えっと……うん」
「えっ、ほんとに来てくれるんだ!? 最近、放課後は断られたのに」
それから、数時間後。
放課後のホームページが終わり、ほどなく教室が賑やかになる。具体的には、教室の真ん中辺り――田中さんや竹内くん達がいる辺りで。そして、その中には更科さんのお姿も。ちなみに、僕と一緒に下校するようになってから、更科さんは放課後のお誘いを断っていたのだけど、今日は僕に用事があるため先に帰ってほしいと彼女に伝えていたから承諾したのかなと。……でも、そもそも僕との下校のためにお誘いを断るとなると大変申し訳ないというか……なので、僕に気を使わずお誘いを受けてほしい、とは言っているのだけど、彼女自身が僕と一緒に帰りたいからと……うん、申し訳ないけどやっぱり嬉しい。
その後、和気藹々とした雰囲気で教室を出る複数の男女生徒。その中の一人、更科さんが扉の辺りでチラと僕の方を。そんな彼女に、行ってらっしゃいと心中で伝える。……まあ、伝わってるかは分からないけど。それから少しして、教室には僕を含め二人だけに。それから少しして立ち上がり、念のため辺りを確認しつつ窓際の席へと歩いていく。そして――
「……僕に、聞きたいことがあるんですよね? 古里くん」
そう、躊躇いつつ尋ねてみる。マッシュヘアの茶髪を纏う端整な男子生徒、古里優李くんへと。ちなみに、夏休みに入る少し前から度々感じていた視線もこちらの男子生徒の視線で。
そして、用事とは古里くんとのこと。放課後、僕に聞きたいことがあるとのことで、二人になるまでこうして教室に残っていたわけで。
すると、僕の言葉にそっと頷く古里くん。そしてそっと立ち上がり、じっと僕を見つめ言葉を口にする。
「――里中とは、どういう関係?」




