更科さんのお部屋にて
「……ここが、更科さんの……」
「いや、もう何度も来てるよね? 何その初めてみたいなリアクション」
それから、少し経過して。
僕のリアクションに、再び呆れたように尋ねる更科さん。……うん、そうなるよね。彼女の言うように、もう何度も来てるんだし。
さて、今いるのは更科さんのお部屋。散らかりなどはなく綺麗だけれど、整然としすぎてはいない――恐らくは、彼女が普段過ごしているような状態のお部屋で。そして、そういう状態で迎えていただけることにとても嬉しくなってしまう自分がいて。
「……それにしても、ごめんね遥くん。お母さんが、バカなこと言って」
「あっ、いえお気になさらず! その、ちょっとしたご冗談だということは分かっていますし」
(……まあ、完全に冗談かどうかは怪しいけど)
「……ん?」
「ううん、何でもない」
その後、並んでベッドに腰掛けつつそんなやり取りを交わす僕ら。ところで、聴こえなかった部分は何と……うん、まあいっか。ご本人が何でもないと仰ってるんだから、詮索するのも野暮だと思うし。それよりも、
「……ですが、やっぱり仲が良いですよね。更科さんとお母さま」
「……うん、まあね。大切に育ててもらってるし、辛い時とかも寄り添ってくれるし。だから、何だかんだ言っても感謝してる」
そう言うと、先ほどお母さまとお話しなさっていた時とは一転、和やかな笑顔でお答えになる更科さん。あの時は少しピリピリしてた気もするけど、それでもお二人が仲が良いことは以前からも十分に伝わっていて。
「さて、さっそくだけど、何しよっか?」
すると、照れくさかったのか、少し慌てたようにそう問いかける更科さん。そんな彼女が可愛らしく、思わず微笑が……いや、もちろんいつも可愛いんだけども。
「……うーん、これは……うん、打つ手なしかな。ありません」
「ありがとうございました、更科さん」
それから、30分ほど経て。
少し悔しそうに、それでも柔らかな微笑で投了の意を口にする更科さん。さて、今しがたまで行っていたのは囲碁。こちらに来た時はわりと度々対戦していて、数えてはいないけど対戦成績はだいたい互角くらいで。
「さて、さっそく次の勝負だね。勝ってイーブンに戻しちゃうよ」
「はい、更科さん。ですが、少々お手洗いをお借りしてもよろしいですか?」
「うん、もちろん。という、毎回のことだけど許可なんて取らなくていいのに」
そんなやり取りを交わした後、お手洗いのためいったんお部屋を後にする僕。そして用を足し、お部屋へ戻るべく階段を――
「――あっ、ちょっといいかな? 遥くん」




