更科さんのお家にて
「……お、お初にお目にかかります! 拙者、葎黎高校に所属の藤谷遥と申――」
「……いや、知ってるけど。そもそも、初対面の人を招いた覚えないし。あと、そんな自称だったっけ?」
それから、二週間ほど経て。
たどたどしく挨拶をする僕に、呆れたように答える可憐な少女。……うん、そうなるよね。だけど、もう何度もお邪魔している今になっても、僕の胸は初めてお伺いいた時と同じくらいのドキドキでおかしくなってしまっていて。……まあ、それにしたってこの挨拶はおかしいけども。
さて、今いるのは白を基調とした二階建ての綺麗なお宅――更科さんのご自宅の前。そして、今しがた扉を開いた更科さんがこうして僕を迎えてくださっていて。
「……お、お邪魔します」
「ふふっ。もう何度も来てるのに、まだそんなに緊張してるんだ?」
「……その、申し訳ありません。こんなおどおどしたままではダメだと、こんな性格は直さなくてはダメだと分かってはいるのですが……」
ほどなく、ドキドキのまま扉の中へ。そして、そのまま玄関を上がり、更科さんの後に続きゆっくりと廊下を歩いていく。更科さんの仰る通り、もう何度もお伺いしてはいるのだけども……うん、慣れる気がしない。こんなおどおどした性格は直さなきゃと思ってはいるんだけど、それでもどうにも――
「……ううん、ダメなんかじゃない。そんなとこも可愛いよ、遥くん」
すると、ふと振り返り告げる更科さん。そのご表情は柔らかく、そしてどうしてか嬉しそうでもあって。……えっと、いいの? まあ、それなら僕としては助かるんだけども。
「あら、いらっしゃい遥くん。今日も来てくれて、私も嬉しいわ」
「あっ、はい、ありがとうございます! その、お初にお目に――」
「いやお初じゃないでしょ」
「ふふっ、いつも面白い子ね、遥くんは」
更科さんの後に続いてリビングへ入ると、柔らかな微笑で迎えてくださる山吹色の髪の女性。更科さんのお母さまで、更科さんが同じくらいにお歳を重ねたらこういう感じになるんじゃないかな、と思うようなとても可愛らしく綺麗な女性で。
「……それにしても、ほんとに可愛いわね遥くん。思わず、ぎゅってしたくなるくらい」
「……へっ? あっ、いえそんな――」
「ちょっとお母さん、あたしの男に手を出そうとしないでくれる? いい歳こいて」
「……あら、ぎゅっとすることに歳は関係ないと思うんだけど……後で楽しくお話ししよっか、唯菜?」
お母さまの思わぬお言葉に困惑していると、いつの間にやら親子お二人で会話が進んでいく。……あれ、なんだかピリピリしてます? ……あと、さっきのお言葉ですが……もちろん、冗談ですよね? お母さま。




