プール
「……あの、更科さん。どうして、僕はここにいるのでしょう?」
「……いや、そんな記憶喪失みたいこと言われても。確か、四日前に言ったと思うんだけど」
それから、二週間ほど経て。
そう、おずおずと尋ねてみる。すると、呆れたようにお答えになる可憐な少女。クラスメイトで僕の友達の女の子、更科唯菜さんで。……うん、僕なんかが友達なんて我ながら烏滸がましいとは思うけれど……でも、そんなに的外れでもないよね?
さて、今いるのは学校から少し遠めに在する屋内の市民プール――そこに、なんと更科さんと一緒に訪れているわけでして。
『――ねえ、遥くん。プール行こうよ!』
四日前の夜のこと。
本日の勉強が一段落した辺りでスマホを見ると、画面に一件の着信履歴が。お相手は、なんとあの更科さん。まあ、僕の場合、そもそも他に連絡をくれるようなお相手もいないので更科さん以外の方がびっくりで……あれ、前にも言ったかな? これ。ともあれ、未だにドキドキしつつかけ直すと、さっそく上記のお言葉が届いたわけで。
……うーん、プールかあ。もちろん、こうしてお誘いしてくださったのはとても嬉しいしありがたいのだけども……正直、泳ぐのはそれはもう苦手中の苦手で。なので、おずおずとその旨をお伝えすると――
『……ふーん、遥くんは見たくないんだ? あたしの水着姿。そっか〜、遥くんはあたしに興味ないんだ〜。やっぱり里中さんの方がいいんだ〜』
『……いえ、決してそういうわけでは……』
すると、スマホ越しにもありありと伝わる不満な声音でそう口になさる更科さん。……いえ、決してそういうわけでは……あと、里中さんは関係ないかと。
そういうわけで、改めてだけど今、更科さんと二人でプールサイドにいるわけだけども――
「ところで、遥くんはラッシュガードなんだね。すっごく似合ってる」
「……あっ、ありがとうございます」
隣から、柔らかに微笑み褒めてくださる更科さん。彼女の言うように、僕が着ているのはラッシュガード。機能性を重視して、というよりは、下半身だけでなく身体全体が隠れるため選んだのだけれど……そっか、似合ってるならよかった。悪い意味で目立つようなら、一緒にいる更科さんに申し訳ないし。そして、
「……その、更科さんもとてもお似合いです」
「ふふっ、ありがと。でも、他の人達がいるところじゃ流石に恥ずかしいからこれにしたけど、ビキニの方がよかった?」
「あっ、いえ! ……その、その水着は本当によくお似合いで……その、とても可愛いです」
「……そっ、そっか……ふふっ」
そう、たどたどしく感想を口にする。更科さんが纏っているのは、フリルワンピースの純白の水着。もちろんお世辞とかじゃなく、爽やかで清楚な彼女の雰囲気によく似合っていてとても可愛……いや、それはいつものことだけども。
「それじゃあ、泳ごっか、遥くん!」
飛び交う水飛沫を背景に、パッと僕の手を取りそう口にする更科さん。射し込む光にキラキラと映えるその笑顔に、未だにドキドキしつつ僕も笑顔で答えプールの中へと向かっていく。……あっ、ちなみにですが準備運動はちゃんと終えてます。




