ぬいぐるみ
「――いや〜、やるねえ遥くん。ふふっ、流石は葎黎の狙撃手だね」
「……葎黎の、狙撃手? えっと、それはどちらさまですか?」
「おいこら。まあ、それはともあれお味はどう? あたしが買ってあげたそのお味は」
それから、10分ほど経て。
弾けるような笑顔が溢れる賑やかな道を、ほのぼのとした雰囲気で歩いていく僕ら。……でも、葎黎の狙撃手とはいったい……ああ、そうだ。僕が言ったんだった。
まあ、それはともあれ、更科さんが仰っているのは僕の手にあるフランクフルト――先ほどの射的にて僕が勝利したため、約束の通り更科さんが買ってくださったフランクフルトのことで。ちなみに、更科さんはフランクフルトではなくカスタードのたい焼きを購入なさって。クレープの時もそうだったけど、更科さんはカスタードが好きなのかな? うん、それならいつか彼女になにかカスタード系のスイーツを作りた……あっ、そうだ。質問に答えないとね。
「はい、美味しいですよ。あっ、よかったら召し上がります? 僕はもう十分いただいたので」
「あれ、いいの? 間接キスになっちゃうけど」
「……あっ! その、でも……はい、大丈夫です。そもそも、恥ずかしいだけで、決して嫌というわけではないですし」
「ふふっ、そっか。でも、やめとく。それは遥くんが勝ち取ったものなんだし、負けたあたしがもらうわけにはいかないよ」
「いえ、そんなのお気になさらなくても……」
「ふふっ、いいのいいの。そもそも、別にフランクフルトがそんなに食べたかったわけでもないし。それに、あたしとしては遥くんのフランクフルトの方が美味……んぐっ」
その後も、何とも楽しそうに話す更科さんのお言葉が止まる。思わず、僕が本物のフランクフルトを突っ込んでしまったからで……いや、本物のって言い方もおかしいけど、それはともあれ……その、やっぱり恥ずかしいといいますか。
「ところでさ、遥くん。さっきも聞いたけど、こっちこそよかったの? これ、もらっちゃって」
ややあって、フランクフルトを食べ終えそう問いかける更科さん。そんな彼女の右手には、可愛らしいウサギのぬいぐるみ――先ほど棚に並んでいた、更科さんがほしいと仰っていたぬいぐるみが。それを、僕が最後の一発で何とか取ることができたわけで。そして、どうしても取りたかった理由は――
「……ええ、もちろん。というより、それは更科さんにもらってほしくて取ったものですから」
「……そ、そっか……うん、大切にするね」
僕の返答に対し、少し目を逸らし――それでも、ほどなく僕の方へと微笑み答える更科さん。その笑顔は本当に嬉しそうで、むしろ僕の方が何倍も嬉しくなるくらいで――
「――っ!! 遥くん、こっち!」
「…………へっ?」




