最終章 第66話 最終話—エピローグー
ーーーーーーーエピローグーーーーーーー
音楽は続く それから、しばらく後。
帝国は沈黙した。精霊石の採掘が止まり、各地で精霊が解放された。
大陸全土で精霊の光が上がり、百年間失われていた音楽が——この朝、完全に帰ってきた。
創音王国の首都となった大地に、新しい朝が来ていた。
ラベルは一人、アナンダ峰の頂上に立っていた。
ノエルを持って。タクトを持って。
空が青かった。
精霊の光が風に揺れていた。
タクトが——温かかった。
「師匠」ラベルは空に向かって言った。
「聴いてるか?」返事はなかった。
しかし——タクトが、微かに光った。
「聴いてるんだな」ラベルは笑った。
「そうだよな。師匠だもんな」ラベルは弦を鳴らした。
旋律が、空に広がった。精霊たちが応えた。
遠くで、フレイムが空に上がった。
大陸全土の精霊が——ラベルの音楽に応えた。
そして——タクトが、光を増した。
まるで、別の次元から——届いているように。
まるで——ありがとうと言うように。
まるで——まだ、ここにいるように。
「師匠が言ってた」ラベルは弾きながら言った。
「音楽は消えない、って。形が変わっても、どこかに残るって」弦が鳴った。
「だから——師匠も消えてない。タクトの中に。精霊の中に。俺の音楽の中に——いる」
タクトが、温かかった。
「だから俺は——弾き続ける。師匠が聴いてくれる限り。
師匠が聴いてくれなくなっても——弾き続ける。それが、師匠から受け継いだものだから」
下から、ロロの声が聞こえた。
「ラベル!! 飯ができたぞ!! 降りてこい!!!」
「今行く!」
「早く来い! 俺が食う前に来い!!」
「食うなよ!!」
「もう一口だけだ!!!」
「それが一番ダメです!!!」
音楽は——終わらない。
旋律は——続く。
タクトは——温かい。
それが——初代マエストロ・ソニック・バスターとしてウィーク・ボソンが、この世界に残したもの。
根源力が、人として生きた時間が——音楽として、永遠に鳴り続けている。
最終話 完
【作者より 最終話に寄せて】
長い旅が、終わりました。
廃村で一人でいた少年ラベルが、謎の聖者ウィークと出会い、ノエルを手に取り、カイと並んで歩き、テレーズに怒鳴られ、フレイムの歌を聴き、母と再会し、七つの試練を越え——そして最終決戦で、師匠と共に音楽を奏でた。
ウィークの正体は、別次元の根源力でした。
しかしその根源力は、この世界で——愛することを学びました。
音楽から。精霊から。ラベルから。仲間たちから。
それが——この物語の、核心だったと思います。
音楽は消えない。
どんな力も、音楽そのものを消すことはできない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ラベルの音楽は——今もどこかで鳴り続けています。




