第42話 ヴァッソの到着
ヴァッソの到着
翌日。
ラエールから使節と共に——ヴァッソが来た。
変わっていた。
六年間ダンジョンの中にいた時の疲弊が、消えていた。目が生きていた。その指先が——来るべき音楽に向けて、すでに構えているような緊張感を持っていた。
「遅かったか」ヴァッソはラベルを見て言った。
「早かった」ラベルは言った。
「ありがとうございます、来てくれて」
「約束したからだ」ヴァッソは言った。
「それに——楽器が五日前から鳴り始めた。止まらなかった。来るしかなかった」
「楽器が呼んだのか」
「おそらく」ヴァッソは小脇に抱えた楽器を見た。
「六年間、精霊が来なかった楽器だ。しかし——今は鳴り続けている。精霊が、戻ってきた」
「ライラックスで——扉が開いたから」ラベルは言った。
「あなたのおかげだ」ヴァッソは言った。
「しかし今日は——礼を言うためではなく、戦うために来た」
「頼りにしてます」
「頼りにする前に——」ヴァッソはラベルを値踏みするように見た。
「弾いてみろ。最近どのくらい上達したか確認する」
「テレーズさんも似たようなことをする」ラベルは苦笑した。
「あの人と私は——根本的な教え方が似ているらしい」ヴァッソは言った。
「二人で話したことはないが、おそらくそうだ」
「弾きます」ラベルはノエルを構えた。
建国の楽曲「創音」の第一節を——弾いた。
ヴァッソが聴いた。
しばらくして、ヴァッソは言った。
「……上達している。ただし——」
「ただし?」
「指揮者としての音楽が、まだ弱い」ヴァッソは言った。
「一人で弾く音楽は本物になってきた。しかし——複数の音楽を束ねる音楽は、まだ発展途上だ」
「指揮者の音楽……」ラベルは言った。
「セレスティアル・フィルを指揮するなら——お前の音楽が羅針盤にならなければならない」ヴァッソは続けた。
「お前が示す方向に、七カ国の音楽が向かう。それだけの音楽を——今から作る」
「二週間で?」
「やるしかない」ヴァッソは言った。
「私が手伝う」
「助かります」
「礼はいらない」ヴァッソは言った。
「これが——私がここにいる理由だから」




