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第41話 伝承楽器の遠隔覚醒

伝承楽器の遠隔覚醒


 二日後。


 ラベルは三角形の中心、アナンダ峰の麓に立った。


 全員が周囲に集まっていた。




「今から——各地の伝承楽器を遠隔で覚醒させる」ラベルは言った。


「うまくいくかわからない。でも——やってみる」




「支えます」セシルが四人を代表して言った。




「ドノヴァンさんは——タクリタンを頼む」




「五時の陣か」ドノヴァンは右手の中指の爪を光らせた。


「召喚魔術の強化だな。精霊との接続を最大まで引き上げる」




「師匠は——」




「空間を整える」ウィークはナノ・ワールドを展開し始めた。


「大陸全体の精霊の流れを、私が把握する。お前の音楽が乗る経路を、確保する」




「ありがとう」




ラベルは目を閉じた。


(全ての精霊が繋がっている。ブランガの精霊も、ザザントの精霊も、コプラスの神樹も、ミミールの霧精霊も——全部が、音楽で繋がっている。俺の音楽は、その繋がりの中を伝わっていける)




弦を、鳴らした。


(建国の楽曲「創音」——全節を)


(一節ずつ、各国に向けて)




第一節——アルメアへ向けて。


 カリンが百年間守り続けた旋律。古代竪琴が眠る大書庫に向けて。


アルメアの古代竪琴が——強く鳴り始めた。と、後に使節が報告した。




第二節——レプラカンへ向けて。


 港の精霊が媒体となって旋律が届いた瞬間、倉庫で眠っていた管楽器が明確な旋律を奏で始めた。




第三節——ミミールへ向けて。


 霧精霊たちが旋律を受け取り、ミミール全土に運んだ。大書庫の隣で、復元された打楽器が自発的に響いた。




第四節——ファフニールへ向けて。


 竜鉱石の弦楽器がフレイムの咆哮と共鳴した。ヴァルド王の玉座の前で、楽器が鳴り響いた。




第五節——ソラスへ向けて。


 光精霊と影精霊が同時に媒体となった。光を閉じ込めた音叉が、虹色の音を放った。




第六節——ラエールへ向けて。


 音精霊が踊り出した。音楽の都フィーラで、全ての楽器が一斉に旋律を始めた。ヴァッソが——その音楽の中心で、目を閉じて聴いていた。




最終節——シルベルトへ向けて。


 北風精霊が、旋律を北の果てまで送った。北風を音に変える民族楽器が、嵐のように響いた。




「……繋がった」ラベルは感じた。「全部が——繋がった」


カタログ化完了——各国伝承楽器、全七カ国分・覚醒確認。精霊的接続——確立。


「セレスティアル・フィルの接続が——完了した」ウィークは書物を確認した。




           世界楽団・セレスティアル・フィル——結成。




構成:各国伝承楽器七種、レゾナントの声、カルテットのボイスプレイ、ドノヴァンのスペリングネイル精霊、フレイムの竜歌。


指揮:ラベル・ソナーレ(シンフォニックキング)、ウィーク(龍使い破邪白眉斎)。




「結成された——!」エラが言った。




「しかし——まだリハーサルが必要だ」ウィークは言った。




「各国の音楽の様式が違いすぎる。一つの旋律に合わせるのではなく——同じ目的に向かって、それぞれが全力で弾く。精霊が繋ぐ。その在り方を、全員が理解しなければならない」




「どのくらいの時間がある?」ラベルが聞く。




「二週間だ。しかし——」ウィークは続けた。


「本番で完成させる、という覚悟も必要だ。リハーサルだけで完成することは——おそらく、ない」




「本番で完成させる、か」ドノヴァンが言った。「大胆だな」




「しかし——音楽とはそういうものだろう」ウィークは珍しく、音楽師のような言い方をした。




「師匠が音楽の話をしてる……」ラベルは少し驚いた。




「学んだ」ウィークは静かに言った。

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