第40話 各国への呼びかけ
各国への呼びかけ
その日から、ウィークは書物を通じて各国への連絡を取り始めた。
アルメアのカリン女王に。レプラカンのガルヴィス王に。ミミールのエルドゥ王に。ファフニールのヴァルド王に。ソラスのエイランに。ラエールのファルナ女王に。シルベルトのゼイン王に。
全員への内容は同じだった。
音界が崩壊しようとしている。帝国が音界を破断しようとしている。
今こそ——各国の伝承楽器を覚醒させ、世界楽団として結集する時だ。
創音王国は、その指揮を担う。各国は——楽器と共に、音楽の戦いに加わってほしい。
返答は——想像より早く来た。
アルメアからの返答が、その日の夕方に届いた。
「百年前の約束を守る。アルメアの古代竪琴は、既に鳴り始めている。楽団に加わることを約束する」——カリン女王
翌朝、レプラカンから。
「精霊石採掘場から解放された精霊たちが、この知らせを聞いて動揺している。彼らを落ち着かせるためにも——楽団への参加を決める」——ガルヴィス王
ミミールから。
「記録を残す者として——この歴史的な瞬間に立ち会わない理由がない。霧精霊たちも、既に参加を望んでいる」——エルドゥ王
ファフニールから——フレイムからの直接の返答も添えられていた。
「ヴァルド王は参加する。私も——空から支える。竜の歌が、楽団に加わる」——フレイム
ソラスから。
「光と影の均衡を守るために。エイランは、この楽団に全力を尽くす」——エイラン
ラエールから。
「音楽の国として——この呼びかけを断る理由がない。音精霊たちは既に、楽器を鳴らし始めている。ヴァッソも——参加を強く望んでいる。指揮台の傍に立ちたい、と」——ファルナ
シルベルトから。
「龍使いが覚醒した時から、この日が来ることはわかっていた。シルベルトの伝承楽器は、北風の歌と共に参加する」——ゼイン
ラベルはその最後の一文を読んで、目が潤んだ。
「ゼイン王は、見届けると言っていた。これも——見届けてくれているのか」
「そうだ」ウィークは静かに言った。
「ヴァッソが——来てくれる」ラベルは言った。
「ラエールで約束したことを——守ってくれた」テレーズは杯を持ちながら言った。
「あの男は、言ったことを実行する男だ」
「テレーズさんは——セレスティアル・フィルに参加しますか?」ラベルは確認した。
「当然だ」テレーズはあっさり言った。「私がいなければ、誰がラベルを怒鳴る?」
「……それが理由か」
「それも理由の一つだ」テレーズは言った。
「しかし——緋炎のアルデも、既に鳴り始めている。私が参加しなければ、アルデが怒る」
「楽器が怒るのか」ドノヴァンが言った。
「長く共に在れば——楽器は意志を持つ」テレーズは静かに言った。
「ラベルのノエルが百年間待っていたように。私のアルデも——この日を待っていた」




