第29話 ”北風のロロ”見参
北風のロロ
ウィークが右手を上げた。
今度の光は——冷たかった。
冬の夜明けのような、鋭く澄んだ光。北の空から来るような、寒さを帯びた光。
「ギフト召喚——第三英雄」
光が収まった時。
そこに、男が立っていた。
大きかった。
ラベルが今まで見た人間の中で——一番大きかった。背が高く、肩幅が広く、腕が太い。顎鬚が長く、目が鷹のように鋭い。腰に、片手用の大型の斧を下げていた。その斧に、北風精霊の紋様が刻まれていた。
男は周囲を見回した。それから——ウィークを見た。
「——久しぶりだな、師匠よ」
豪快な声が、空気を震わせた。
「ロロ」ウィークは静かに言った。
「来てくれたか」
「来たくないと言っても、召喚されてしまうのが俺の運命よ」男——ロロは豪快に笑った。
「しかし! 今回は待っていた気がする。そろそろ来ると思っていたから」
「どうしてわかった?」ラベルが思わず聞いた。
ロロがラベルを見た。その目が、ラベルを頭から足まで確認して——ノエルで止まった。
「……ノエルじゃないか」ロロは言った。声が、少し変わった。
「本物のノエルを持っている。ということは——ソナーレの末裔か」
「はい」ラベルは答えた。
「ラベル・ソナーレです」
「ラベルか!」ロロは豪快に笑った。
「俺はロロ。北の高地の生まれ、ハイランダーの称号を持つ男だ! 師匠に召喚されてきた! よろしくな!」
「よろしくお願いします」
「師匠」ロロはウィークを見た。
「今回は何が起きているんだ? 簡単に教えてくれ。腹が減っているから、飯の後で聞く」
「聞きながら食え」ウィークは言った。
「二つ同時は難しい!」
「慣れろ」
「師匠は相変わらずだ!」
三 ロロの固有スキル
食事をしながら——ロロに状況を説明した。
帝国の干渉。静寂の花嫁。三角形の防衛。
ロロは食べながら聞いた。確かに二つ同時だった。しかし——しっかりと聞いていた。
「音殺しの干渉を、外周で止めるんだな?」ロロは言った。
「そうだ」ウィークは答えた。
「俺が行く」ロロは即座に言った。
「俺の武器は——音楽じゃない。風だ」
「風?」ラベルが聞いた。
「固有スキル——北風刃だ」ロロは立ち上がり、腰の斧を一度持ち直した。
「北の高地で生まれた者には、大気を操る力がある。俺の場合は——大気を、刃にする」
「大気を——刃に?」
「見るか?」
「見たい」
ロロは外に出た。全員が後に続いた。
ロロは斧を構えた。
次の瞬間——空気が動いた。
音もなく。見えない刃が、前方の岩に走った。
ズドォン——!
岩が、真横に切断された。
「……大気が刃になった」カイは言った。目が、少し大きくなっていた。
「音殺しは俺には効かない」ロロは豪快に笑った。
「俺の武器に、音楽は関係ない。大気があれば——戦える。音楽を消す連中に対して、俺は最適な相手だ」
「確かに」ドノヴァンが頷いた。「音系の干渉が通じない戦士が、外周に立てれば——ラベルの音楽が守りやすくなる」
「そういうことだ!」ロロは言った。「師匠は相変わらず、必要な時に必要な者を呼ぶのが上手い」
「当然だ」ウィークは言った。
「威張るな!」ロロは笑った。




