第30話 ドノヴァンとカルテット
ドノヴァンとカルテット——音戦闘
翌日から、ドノヴァンとカルテットの四人は、三角形の北側の境界付近に展開した。そこが、音殺しの干渉が最も強い場所だった。
ドノヴァンは五指を広げた。
「まず——どの程度の干渉か確認する」
スペリングネイルの感知紋様を一本の指で描いた。その紋様が、外側の空間に向かって広がる。
「……来ている」ドノヴァンは表情を変えた。
「音殺しの波動が、境界の外から断続的に送られている。周波数が——精霊の活動帯域に合わせてある。精妙な設計だ」
「帝国は音楽の専門家を使っている」セシルが静かに言った。
「音楽を知っている者でなければ、こんな精密な干渉はできない」
「おそらく——元は音楽師だった者を、帝国が改造したのかもしれない」ティアが言った。その言葉が、全員の心に重く落ちた。
「……ヴァッソと同じ境遇か」エラが小声で言った。
「今は考えない」ドノヴァンは言った。
「まず止める。その後で考える」
「はい」
「ではやってみよう。俺が精霊召喚紋様を展開する。お前たちの声がそれに乗ることで、射程と持続力が上がるはずだ」
「理解しました」セシルは四人に目配せした。
「では——声から入ります」
カルテットが声を重ねた。
低音のロクが、地を固める基音を出した。高音のエラが、その上に旋律を乗せた。セシルが中間音で旋律を支え、ティアが変色する声で色を変えた。
四声が重なった瞬間——ドノヴァンが五指を動かした。
五種同時展開。
炎、雷、風、重力、聖光の紋様が、空中に描かれた。その紋様が、カルテットの声に乗った。
「……これだ」ドノヴァンは感じた。
「カルテットの声が——紋様を遠くまで運んでいる。そして持続させている」
「音楽が続く限り——紋様も続きます」セシルは歌いながら言った。
五種の紋様が乗った四声の音楽が——外側の干渉波にぶつかった。
ズドン——!
音殺しの波動が、弾かれた。




