第24話 アナンダ結界の展開
峰の頂上。
ラベルは目を閉じた。
(どんな音楽を弾けばいい)
(回復と再生のための音楽。治癒のための旋律。)
(怪我をした誰かに——どんな音楽を届けたいか)
思い浮かんだのは——ルーナの顔だった。
ソラスのダンジョンの中で、膝を抱えて座っていたルーナ。長い間一人で逃げ続けて、疲れ切っていた母の顔。
(あの時——音楽を届けたかった。苦しみを癒す音楽を)
その気持ちを——そのまま音にした。
旋律が流れた。
怒りでもなく、喜びでもなく——ただ、*寄り添う*音楽。傷ついた者の傍で、静かに鳴り続ける旋律。
峰の花が——一斉に開いた。
草が、光を帯びた。
土が、温かくなった。
そして——アナンダの守護龍が現れた。
最も小さかった。他の七体と比べると、そう感じた。しかし——その温かさは、圧倒的だった。
「……ずっと、呼ばれるのを待っていた」
「待っていてくれたか」ラベルは言った。
「七峰が揃うまで、ここには来られなかった。でも——あなたの音楽が、たまに聞こえてきた。
遠くから」
「遠くから?」
「ブランガで。ザザントで。コプラスで。七つの試練の全てで。あなたが弾くたびに——ここまで届いていた。それが、待つ力になった」
ラベルは動けなかった。
「……ずっと、聴いてくれていたのか」
「あなたの音楽は——遠くまで届く。それが、創音王の音楽だから」
「一緒に守ってくれるか。この内側を。ここに住む者たちを、精霊たちを、レゾナントたちを」
「それが——私の使命だ。あなたの音楽が呼んでくれたなら、喜んで」
ウィークが前に出た。
「アナンダ」ウィークは言った。
「一つだけ、伝えたいことがある」
「なんだ?」
「あなたを縛るつもりはない。最終召喚の時——私の指揮は、あなたに従うことを強制しない。あなたが選んで、共に在ることを望んだ時にのみ、この指揮は意味を持つ」
「……龍使いが、そんなことを言うのか」
「それが、私の龍使いとしての誓いだ」
「面白い誓いだ。これまで多くの龍使いを見てきたが——縛らないと言った者は初めてだ」
「縛れば——最終召喚の時に、最大の力が出ない。信頼から生まれる力の方が、束縛から生まれる力より——遥かに大きい。それを、私は知っている」
「……そうだな。では——共に在ることを、私も選ぼう」
「アナンダ——結界展開」
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光が——三角形の内側に満ちた。
アナンダ結界が、峰の中心から広がり、七峰の結界と繋がった。
八つの結界が——初めて、一つの完全な防衛システムとして機能し始めた。
サーガラ結界——アナンダ結界に接続。
マナシ結界——アナンダ結界に接続。
ウハツラ結界——アナンダ結界に接続。
タクシャカ結界——アナンダ結界に接続。
ヴァスキ結界——アナンダ結界に接続。
ナンダ結界——アナンダ結界に接続。
サナンダ結界——中央リンク完全稼働。
アナンダ結界——内部守護完成。
八峰守護龍結界——全結界連結完了。
絶対不可侵の三角形——完全防衛ライン確立。
「……完成した」ウィークは静かに言った。




