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Take It All!~異世界転生でチート級の超絶イケボに!冴えない営業マンが勘違いで伝説の英雄を掛け持ち美少女ハーレム無双? だけどスマホの充電がきついっす~  作者: 硫化鉄
第三章 火の章

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第八十五話 火の民との遭遇。

 気がついた時、っていうか、気を失っていなかった。恐怖のあまり気を失いそうにはなっていたんだけどね、気を失えれば楽だったんだろうにね。


 俺は落ちている間の恐怖を存分に味わいつくして、ガイオウごと地面に突き刺さった。相変わらずガイオウの衝撃吸収性能は神レベルで、俺に肉体的ダメージは全くなかった。


 続いて俺の右側10mくらいの所に緑の鎧が降ってきて突き刺さった。


「おにいちゃん、大丈夫ー?」


 緑の鎧が地面から身体を引き抜こうともがきながら俺に声をかけてきた。


「あ、あぁ、大丈夫……」


 俺はシェリーにそう答えかけて、周囲の異変に気付いた。さっきまでは聞こえていなかったざわめきが、俺たちを囲んでいた。そう、この滝の近くに住む人たちが、大きな音に驚いて集まってきていたのだ。





「近隣住民の方々、お騒がせして大変申し訳ない。私は【白き鎧】の操者、カイと申します。実ははぐれた仲間を探してここに参りました。どなたか、お力をお貸し願えますか?」


 俺は集まってきた住民達に言うと、半分埋まったままのガイオウから出た。


「シェリー、今はそのままにして降りておいで!」


 緑の鎧に向かって声をかける。


 スマホを使う事ができない現在、ガイオウと緑の鎧をしまっておく事はできない。ここにおいて行かなければならないのであれば、半分埋まったままの方が盗まれにくいだろうと考えたのだ。まぁそれに、スマホのない状態で、うまく地面から身体を抜くように操縦できるかどうかも自信ないし。


 シェリーは緑の鎧から出てくると、俺のそばまで来て、集まってきていた人々に一礼した。


「私は大地の民、長老直属の特別兵長、シェライアと申します。緑の鎧の操者であります」


 おおぅ、というざわめきがわく。俺は滝の方を手で指した。滝つぼのほとりで、セレンは岩に腰掛け、髪や上着、スカートを絞っていた。いや、もちろん着たままで絞っているんだよ。当たり前だけど。


「あそこにいるのが、青の鎧の操者、セレンです。

 実は先日、私の仲間である赤の鎧の操者とはぐれてしまい、探しております。つきましてはそのご相談もかねて、王宮にご挨拶に伺おうと思っております。どなたか、王宮までの道をお教えいただけないでしょうか」


 俺は超絶イケボを響かせた。まぁね、そりゃあね、みんなかなり好意的に見てくれてるのは感じます。だけど、水の民のあの声フェチぶりを見慣れていたせいか、どうも反応が鈍い気がする。


「あの……私でよければ……」


 集まってきていた群衆の中から声がして、その声をきっかけにざわめきが収まった。そして、モーゼが海を割るがごとく、群衆がさーっと二つに分かれた。

 その奥から、しゃなりしゃなりと歩み寄って来たのは……。


 すらりとスタイルの良い、なかなかの美人さんだった。






 最初に発した声の遠慮がちな雰囲気とは大分違い、その美人さんは余裕を持ってゆっくりと歩いて来た。もっと遠くにいたはずのセレンがぱたぱたと俺に駆け寄ってきた時にはまだ道半ばといったスローペース。二つに割れた群衆の注目を一身に浴びて、ファッションモデルか何かのように気取って歩いている。なんだよこいつ、待たせんなし。


 彼女が近づいてくるまでの間に、群衆の中の囁き声で、彼女のステータスをかなり知ることが出来た。


 村一番の美人と名高い才媛、モエ。王都への進学も決まっており、既に王都に家を持っているらしい。


 まぁ、美人には間違いないんだろうけど、好みから言うとまぁ微妙……ってところか。こっちの世界に来てから美少女や美人に会いすぎているせいもあるだろうなぁ。


 ……ん? 待てよ。


 俺はふと違和感を覚えた。


 そう言えば、火の領域の住民は、あの天使のような美少女であるサヤを「ブス」だの「醜い」だのと言っていたんだ。だから、他の女はどれだけ美人なんだよ、と思ったりもしたけど……。


 どう見ても、どう考えても、サヤの方が可愛い。間違いない。


 これがね、このモエさんが逆にとんでもないお顔をされていたとしたら別ですよ。「あー、俺の美的感覚とは真逆なんだね」で済むから。


 でもこのモエさん、ちゃんと美人さんなんですよ。それは間違いないんですよ。だから美的感覚がまるっきり違うと言う事でもないんだよね。


 ならなんでなんだ? 何故あのサヤが「醜い」とまで言われなきゃいけないんだ? 自分でもそう信じてしまっているんだ?


 俺の中の違和感は、どんどん強くなっていった。


 群衆の反応にも、それを当然のように受け止め「私は絶世の美人よ」という表情でゆっくりと歩くモエにも、俺の違和感は増すばかりだった。得体の知れない違和感が、俺の中で渦巻いていた。なんだろ。気持ち悪ぃ。


 俺が違和感の正体をつきとめられずだんだん苛立ち始めた頃、モエがやっと俺の前に立ち止まり、お辞儀をして名乗った。


「はじめまして、白き鎧の操者様。私はモエと申します。近々王都へ引っ越すという事もあり、王都には何度も足を運んだ事がございます。お役に立てることも多いかと存じますわ」


 モエは礼儀正しくエレガントにそう名乗ると、俺に微笑みかけた。うん。美人さんだね。うん。


 俺は彼女の表情に一抹の「ほら、私って美しいでしょう?」という雰囲気や、俺に気に入られて今後うまく立ち回りたい、という空気を感じてちょっと辟易した。


 あ、いや、これは俺の気のせいかもしれない。そもそも俺がそう感じるのは、もともと火の民それ自体に反感を持っていたからなのかもしれない。


 シェリーとセレンが俺の顔を見つめていた。あ、そうか。俺が黙っているせいで話が進まないわけか。


「あぁ、ごめん、ちょっと考え事しちゃってて。

 モエさん、ですよね。よろしく頼みます」


 俺が返事をすると、またもや群衆がどよめいた。なんだなんだ。別に俺はたいした事言ってないぞ。

 目の前でモエがドヤ顔で髪をかきあげていた。感心したようにどよめく群衆。


 なるほどそうか。どうやら、俺が黙っていたのはモエのあまりの美しさに見とれていた、という事になっているらしい。んなバカな。


「それでは、皆様、一旦私の家にいらしてください。王都へ向かうにしても、少しお休みいただいてからの方がよろしいでしょう」


 モエの提案に、またも群衆がどよめく。そりゃあ「村一番の美人」の家にご招待されたわけだ。男性陣から羨望の声が上がるのも無理はない。


 しかし俺にとってはもっともっともっと大事な事があった。


「みなさん! さっきも言いましたが、私ははぐれた仲間を探しています。赤の鎧の操者である、サヤと言う女の子です。この村へ流れ着いている可能性もあるんです。どなたかご存知ありませんか?」


 群衆が驚きの声を上げて一斉に俺を見た。モエの招待に返事もせず呼びかけたからだ。

 唇をきゅっとかむモエ。そしてあっけに取られている群衆。


 俺は何か知っている者がいないかと、群衆の顔を一人一人眺めた。男女半々くらいで、誰もサヤを目撃してはいないようだった。


 だがその時、俺はとんでもない事に気付き、思わず目を疑った。


 俺の中で高まっていた違和感の正体。



 ここにいる女性は、みんな同じ顔をしていたのだ。

次回予告。


モエでーす!


白き鎧と共に降り立った英雄、カイさん。

彼らは王都を目指していました!

これをチャンスと言わずして何をチャンスと言いますか!


次回、Take It All! 第八十六話

「王都への道。」お楽しみに!



まぁ、カイさんが素敵か……というと微妙ですけどねっ。

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