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Take It All!~異世界転生でチート級の超絶イケボに!冴えない営業マンが勘違いで伝説の英雄を掛け持ち美少女ハーレム無双? だけどスマホの充電がきついっす~  作者: 硫化鉄
第二部 水の章

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第七十四話 セレンの音色。

「な……何っ!? ば、バカな!」


 悠々と水上に着地したガイオウを見て、マスク野郎達がパターンなリアクションを見せた。ほーんと、おつむの悪い悪役達だこと。


「おいおい、そんなリアクションして恥ずかしくないの? パターン過ぎんだろ。

 ……あ、そうか! だから恥ずかしくてお面外せないんだね!」


 もう一度強烈に煽ってやった時、ガイオウの足元がぐらりと揺れた。


「わ……わぁちょっ……おおぅ!」


 踏ん張って耐えようとするも、足が滑って思いっきり転倒してしまった。パターンな展開をかっこ悪く破ってしまうのは本意ではないが仕方がない。だって青の鎧は人魚の形のままだもん。平らじゃないから立ちにくい事おびただしい。


 かー、マスク野郎どもにこんなみっともないとこ見られるとは一生の不覚。


「ちょ、ちょっとセレン、あいつらの魔操鎧みたいに変形とかできないの?」


 俺はセレンに呼びかけてみたが、応答はない。そうだ。セレンは喋れないんだっけ。くそ、筆談するわけにもいかないし、どうしようもないぞこれ。


 なんとか青の鎧にまたがる形で乗った俺に、さらに最悪な事態が迫っていた。水位が上がって来ているのだ。いや、そうじゃない。俺達が沈み始めているのだった。


「おいおい、いきなり面白い事やってくれるじゃんか。英雄様より道化師の方がお似合いだぜぇ」


 わかりやすい単純クソアホ悪役Bが下品な笑い声を漏らしながら悦に入っていた。クソむかつく。しかも相手は水上に立っており、こっちは小さいし座ってるし沈みかけてるしで、完全に見下ろされているのだ。クソむかつく。


 三機は嵩にかかって集中砲火を浴びせてきた。やべえ、避けられない。頭にガンガンあたる。俺は青の鎧から滑り落ちないようにしがみつくのがやっとだった。


 セレンはどうしたんだ。避けるなりなんなりして欲しいんだけど。


 とうとうガイオウの頭まで完全に水没してしまった。水中ではエイのような形に変形した水の魔操鎧が水中銃でこちらに狙いをつけている。


 俺達が沈むスピードはだんだんと増してきていた。これってやばいんじゃね?


 いや、もしかしたらセレンはまず緑の鎧を救出する為にもぐっているのかもしれない。第一、俺は最初にそう頼もうと思っていたのだ。俺だったら鎧の中に閉じ込められたまま水中深く沈んでいたら怖くてたまらない。


 海底深く幽閉されていた経験のあるセレンが、そんなシェリーをまず第一に助け出しに行こうとしてくれるのはうなずける話だった。


 だが、いかんせんスピードが遅い。これって自分の意思で潜航しているというより、やっぱ自然に沈んでいってる感じだ。


「セレン! 緑の鎧が沈んでるんだ! 頼む、助けてくれ!」


 呼びかけてみても返事はない。くそう、どうにかならないのか。


 水の魔操鎧は人魚というより半魚人といった形態に変形し、追ってきた。背にはマスク野郎どもの魔操鎧がまたがっている。あいつら、俺の乗り方パクリやがったな。


 大きな魔操鎧がまたがっているのであまり思うように動けていないようだが、それでも確実に俺達に肉薄してきていた。そりゃそうだ。こっちは完全に「ただ沈んでいってるだけ」なんだから。これはまずい。


 俺はガイオウを後ろ向きに座りなおさせた。とにかく連中を近づけさせないようにしなきゃ。

 だがガイオウには武装がない。んー、どうしたもんか。


 俺はガイオウの両手を前に突き出して、ばたばたと動かした。ちょうど水泳におけるバタ足を手でやってる感じ。こんなんで何とかなるとは思えんが、何もしないよりはましだろう。


 だが、ガイオウのパワーは俺の想像以上だった。強烈な水流が発生し、俺達の鎧はぐんと加速した。マスク野郎達は水流に巻き込まれ、くるくると回転しながら遠くへ流されていった。


 お。これ、いけんじゃね? 推進力が得られるのなら、ガイオウは「泳げる」ってことだ。 マジいけんじゃね?


 とにかくまずシェリーを探す事が先決だ。小さいがパワーのあるガイオウと違って、緑の鎧は泳げないのだろう。それが出来れば、すぐに上ってきていたはずだ。アイビー・ウィップでつかまるものもなく、シェリーは途方にくれているに違いない。


 だが、いくらガイオウでも、自分の三倍もの大きさがある緑の鎧を抱えて泳げるんだろうか。サイズで三倍って事は体積にすれば27倍だ。


 もう一つ、青の鎧の事も気になっていた。全く動く気配がない。乗ったはいいが動かし方がわからないのだろうか。


 俺は初めて緑の鎧に乗った時のシェリーを思い出した。シェリーは、その心に潜む呪縛のせいで緑の鎧をまともに動かす事が出来なかったのだ。もしかしたら、セレンにも同じ事が起きているんじゃないだろうか。


 青の鎧に後ろ向きにまたがって、手をバタバタ振るというなかなかシュールなスタイルのまま、俺はシリアスに考え込んだ。あれ? 今この状況って結構やばい状態なんじゃ?


 ガイオウと青の鎧は、強烈な水流の推進力によって随分移動してきてしまっていた。しかもかなり深い。沈んでいくところを追いかけてきたマスク野郎達に向けてバタ手|(バタ足の手バージョン)をしたんだから当然だ。やべえ、ここどこだ?


「セレン、セレン!」


 返事など返ってくるわけはないのに、俺は呼びかけずにはいられなかった。


「セレン! 大丈夫か!? 操縦の仕方がわからないのか?」


 もちろん返事などあるわけがない。一体どうすりゃいいんだ。


 俺はとりあえずバタ手を止めた。これ以上わけのわからない方角に突き進むのは危険だ。だが水中で急に止まれるわけもなく、どんどん流されていくし、どんどん沈んでいる。ここにマスク野郎達が追いついてきたらどうしようもないぞ。




――私には、何もできなかった。

  あなたを助ける事も、この鎧を動かす事も――




 突然、セレンの心が俺の中に流れ込んできた。

 静かに、セレンの奏でる琵琶の音が響いていた。




――私はあなたの愛を得られなかった。

  あなたを殺す事もできなかった。

  だから――




 悲しみをたたえたその音色は、それでも純粋な響きを持っていた。伝わってくる内容は物騒なのに、なんでこんなにも澄んだ響きを持っているんだ。




――そう。私は消えなければならない。

  泡となって消えるのが、私の運命。――




 覚悟を決めているという事か。

 消えてしまうというその運命を、素直に受け入れるというのか。


 禁忌を犯してまで、禁呪に頼ってまで得ようとした自由を、全てあきらめて死を受け入れるというのか。


「ふざけるな……」


 押し殺したような声が出た。彼女に対してだけではない。あまりにも何も出来ない自分に対する怒りも上乗せされていた。


「ふざけんなぁっ!!」


 俺は声の限りに叫んだ。


「……っ!!」



 悲鳴に近い、明らかに声の混じった息遣いが聞こえ、セレンの演奏が止まった。

次回予告ぅ!


ティティですっ!


ぶちきれたカイ様へ流れ込む、セレンさんの心。

最大のピンチを前にして、カイ様はセレンさんの心の鍵を開けることが出来るのか?

さぁ、どうなる次回!


次回、Take It All! 第七十五話

「セレンの【鍵】。」へ急げ!



こ、これってもしや、オトナのセカイ……!?

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