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第六十九話 荒ぶる亀神。

 なんだなんだ。何が起きた。


 思いっきり吐き出された俺は、かっこいい登場とは程遠い雰囲気でみんなの前に姿を現した。なんだよグランデ・トルチュめ。もっとかっこよく登場したかったのに。


 敵の度肝を抜いて、心理的な優位を確保したい俺の目論見は完全に失敗した。もう絶望的だ。


「お、お前は……! ど、どうやって……!?」


 マスク野郎がパーフェクトに度肝を抜かれた声を出した。あれ? 作戦成功してる?


「よぉ、また会ったなお面の兄ちゃん。まだ顔出しできないとは、相変わらずシャイだねえ」


 俺は立ち上がってそう(うそぶ)いた。

 そ、そう。こ、この登場の仕方は予定通りなんだからね! 失敗なんかしてないんだから!


「か、カイ様、ご無事だったんですね……!」


 サヤの声が涙ぐんでいる。シェリーもティティもうるうるした目で俺を見上げていた。


「当たり前だろ? なんたって俺は……」


「閃光の魔術師様!」

「ピクシーオーナー!」

「完全なる奏唱者様!」


 俺が言いかけると、三人が同時に声を上げた。思わず俺はくすっと笑うと、思いっきりイケボを響かせた。


「いーや。そんな肩書きは関係ねえ! 俺が死なないのも! みんなを助けに来るのも!

 俺が、みんなのヒーロー、カイ様だからだ!」


 いやー、冷静になってみるとかなり痛い台詞だが、こういう状況では効果てきめんだ。

 サヤたちはうっとりして俺を見上げているし、マスク野郎達にとってはイラつく事この上なかろう。ザマ見ろ。


「ねぇ、おにいちゃん、その人は……?」


 シェリーの言葉に振り向くと、俺の背後にはセレンが倒れていた。その傍らに彼女の短剣が転がっている。そうか。この短剣が口の中に刺さったから、痛くて吐き出したんだな。それにしても刺さってから反応するまで時間かかりすぎだ。痛覚鈍すぎだろ。


 俺は彼女の短剣を拾うと、悠々とサヤ達を縛っていたロープを切って自由にしてやった。奴らは怖気づいているのか、俺に近づこうともしなかった。そりゃあね、死んだと思ってたのに生きてるし、こんな深海まで普通に来るし、俺の力をはかりきれないんだろう。


 俺は短剣を【O-TS】を使ってスマホの中にしまいこんだ。こんなものなくたって、彼女が生きていけるようにしてやらなきゃな。


「マスク様、奴が妙な魔法を使う前に、魔操鎧に!」


 【気色悪いA】が慌てて立ち上がった。大地の領域での戦いがトラウマになってんだろうなぁ。


 状況はやばくなったが、まぁでも、これはどうしようもない。


 敵はマスク野郎どもが操る大地の魔操鎧が三機、ディーノ達が操る水の魔操鎧が三機。

 こっちはニミュエが操る水の魔操鎧一機。後はサヤのカグツチ・カノンとシェリーのアイビー・ウィップが主な戦力だ。ティティに戦闘力はないし、セレンは気を失って倒れている。


 んー、どうしたもんか。


 奴らは陸上での戦いは避けて水上から俺達を狙うだろう。俺達ができるだけ奥へ行ったとしても、敵の飛び道具の射程内だろうなぁ。ニミュエが水中から援護してくれたとしても、状況は不利すぎる。


 でも、だからこそ俺はあきらめるわけにはいかなかった。必ず何か手はあるはずだ。もし打つ手がなければこの作品も70話を目前に終了と言う事になる。


「マスク様、やっぱりあの男は、殺すのですか……?」


 ディーノの声だった。あいつ、もしかして俺に未練があるのか?


「もちろんヤツだけは確実に殺す。殺さなければならない」


 マスクが冷淡に答えた。


「お願いです、マスク様……あの男……」


 なんだなんだディーノ。未練が余って命乞いしてくれるのか?


「あの男だけは、私に殺させてください! あの男だけは!」


 そっちかーい。まぁ、そんな事じゃないかとは思ってたけど。


「さぁそれはどうだかな。私達にも、ヤツをこの手で殺したい理由があるのでな」


 いやー。なんかやたら俺を殺したい人がたくさんいるんだけど。なんか悲しくなってきたぞ。俺が何したっつうんだ。つうか全部逆恨みじゃねえか。一部(セレン)謎の殺意もあるけどさ。


「おにいちゃん……」


 シェリーが俺を心配そうに見上げていた。サヤも、ティティも俺を心配してくれていた。


「カイ様をやらせはしませんよ。下がっていてください!」


 ニミュエが俺とマスク野郎たちの間に割って入った。一機で全員を相手にする気だ。


「いやぁ、人気者過ぎてごめんな。みんな」


 俺は明るい声を出した。


「でも安心してくれ。こんなお笑い三等兵達に俺が負けるわけねーから。俺は奇跡の存在だ。そうだろ?」


「はいっ!」


 サヤが笑顔で答えた。うーん、いい返事だ。


「サヤ、シェリー、ティティ、頼みがある。そこに倒れている女性は、俺の命の恩人だ。助けてやって欲しい」


 俺はセレンを三人に託した。みんなまとめて、危険から遠ざけておかないと。


「わかりました!」


 ティティが敬礼して答える。おお、こういうの可愛いな。


 サヤ達が気を失ったセレンを介抱している間に、俺は彼女達から距離をとった。奴らの狙いは俺だ。出来る限り巻き込まないようにしなきゃな。


「あの人は、まさか……」


 その様子を見ていたニミュエがつぶやいた。セレンと知り合いなのだろうか。だとしたらセレンにとっては大分まずい事になる。セレンを幽閉しないように頼み込む事は出来るだろうか。


 そんな事に気を取られているうちに、マスク野郎達はフォーメーションを完成させていた。大地と水一機ずつでペアを組み、いつでも水上戦に出られるようにしながら、マスク野郎は俺に、【気色悪いA】はニミュエ機に、そして【わかりやすい単純クソアホ悪役B】がサヤ達に銃口を向けた。くそ、なかなか考えてやがる。


「さぁ、どうする? 人間。手も足も出まい。これで終わ……」


 マスク野郎が勝ち誇ろうとした時、神殿内に怒りとも苦悶とも思える声が響き渡った。


 グランデ・トルチュが再び吼えていた。首を大きく振り回し、水面を激しく波立たせた。まだ短剣が刺さった所が痛いのか?


 大きな波が襲い掛かり、俺達は神殿の奥方向に流された。波の勢いはマスク野郎たちの魔操鎧も飲み込んで押し流した。これで少しだけでも時間は稼げる。


 奴らの機体が立ち上がるまでに駆け寄る事ができれば俺の勝ちだ。奴らの機体に触れさえすれば。


 俺は絶望的とも思えるその距離を走破すべく走り出そうとして、慌ててその足を止めた。グランデ・トルチュがまだ動きを止めていなかったからだ。


 グランデ・トルチュはまた勢い良く何かを吐き出した。吐き出された何かは正確に俺達の方に向かって滑って来た。それを見つめていたシェリーが息を呑んだ。



 俺達の前に滑って来たのは、緑の鎧と、ガイオウだった。

次回予告。


シェライアだ。


白き鎧と緑の鎧が戻ってきた。反撃開始だ!

しかし、私とおにいちゃんはなぜか合体する事ができない。

防戦一方の私達に勝機をもたらすのは何か。


次回、Take It All! 第七十話

「再会、反撃、そして峻拒。」お楽しみに!



私がみんなを守る……。守ってみせる!

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