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Take It All!~異世界転生でチート級の超絶イケボに!冴えない営業マンが勘違いで伝説の英雄を掛け持ち美少女ハーレム無双? だけどスマホの充電がきついっす~  作者: 硫化鉄
第二部 水の章

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第四十七話 深海の攻防。

 人魚たち水の民は随分先行してもう見えなくなっていた。

 俺たちは三人水入らずで(シャレじゃないぞ)海中遊覧を楽しんでいた。


 その時。


 コツコツ……というガラスを叩く音。なんだなんだ。


 ひやりとするものを感じた。音は背後から聞こえている。当然俺の背後は、海の中だ。

 まさか……。


 前の二人も音に気がついたのか、黙り込んで固まっている。


「か、カイ様、その音……」

「おにいちゃん、シェリーたちを怖がらせようとしても、だ、ダメなんだからね……?」


 二人とも完全に震え声だ。


「お、俺は何もしてな……」


 俺の言葉を遮るように、音が変わった。

 コツコツ……という音からガンガンガンガンという激しい音へ。

 不気味さで言えば前者だが、危機感で言えば圧倒的に後者の勝ちだ。


 いやもうね、わかってますよ。一昨日の化け物……ですよねそうに決まってる。


 昨日は水の民が見張っててくれたおかげで出てこれなかったんだろう。その鬱憤を晴らすかのような激しさだ。


 しかしここは海の中だぞ。ってことは、あの化け物は水の民なのか、既に呼吸する必要がない者なのか……。


 俺は振り向いて確かめる勇気もないままぐるぐると考えていた。考えることによって、振り向くことから逃げていたというわけだ。でも、何とかしなきゃ。


 俺は振り向いた後でどうするかを考えた。さすがに水中ではサヤのファイアーウォールも効果あるまい。こっちは潜水艇の中にいるんだから、外にいる化け物に物理攻撃はできない。サヤのカグツチ・カノンもシェリーのアイビー・ウィップも全く役に立たないわけだ。


 つまり、打つ手はない。


 やべえ、考え終わったら振り向かないですむ理由がなくなる。どうすりゃいいんだ。


 音はどんどん激しくなっていた。深海の水圧に耐えられるんだからおいそれと割られはしないだろうが、やっぱり危機感はハンパない。


 俺は意を決して、ゆっくりと後ろを振り向いた。


 そこには予想通り、黒くどろどろの顔があった。その化け物は大きなナイフを片手に、その刃を何度も何度も俺に向かって振り下ろしていた。





「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 俺は叫んだ。そりゃ叫ぶっしょ。


「わあああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 俺はわめいた。そりゃわめくっしょ。


 とにかくヤツに殺意があること、そしてその殺意が俺に向けられている事ははっきりしたわけだ。


 いや、マジ怖い。シャレになんないんですけど。


 ってゆうか、俺が命を狙われている理由がわからなかった。そりゃそうだ。だって俺、この世界に来てまだ数日だ。誰かの恨みを買う暇なんてなかったはずだ。


 いや、あったな。


 大地の領域のマスク野郎や、あのAとB。特にBあたりは相当俺を恨んでいてもおかしくない。でもあいつら大地の領域にいるでしょ。飛ばされてきてないでしょ。たぶんだけど。


 なんで俺が命を狙われなきゃならないんだ!!


 ……そうか。あれだ。長老が言ってた「闇」とかってやつじゃないのか。


 サヤたちが俺の事を伝説の英雄と勘違いしたように、その闇とやらも俺の事を「伝説の英雄を掛け持ちしてるすごいやつ」と勘違いしてるのかも知れない。いや、やめてくれ、俺じゃないんだ。全部スマホの機能なんだってば!


 そんな事を考えつつも俺は悲鳴を上げ続けていた。超絶イケボの悲鳴。想像つかないかも知れないが、そこは無理にでも想像してくれ。


 サヤもシェリーも、俺に負けじと声を上げ続けていた。たまりにたまっていた恐怖のエネルギーが、俺の悲鳴をきっかけに爆発した感じだ。


 化け物は俺達三人の悲鳴に少したじろいだようだった。少し離れて様子を伺っている。


 俺の視線に対して縦になっているのでヤツの全身は確認できない。どろどろの黒い頭部と、ナイフを持った黒く太い触手のような手。いやもう恐ろしい。

 どす黒い色合いといい、闇の存在であるのは間違いなさそうだ。


 ……しかし、なぜ単独で?


 悲鳴を上げながらもふと疑問がわいた。


 ……闇のやつらって、このガラス割るのも無理なん?


 さらにもうひとつの疑問が浮かぶ。


 おかしいぞ。


 俺の悲鳴は音量を減じて行き、とうとうストップした。なんだ、あいつ闇の存在とかじゃないんだな。

 少し落ち着きを取り戻しつつ考えた。


 あんな弱い闇の存在などいるわけがない。じゃあ、なんなんだあいつは。やっぱり幽霊の類か。何かが化けて出て……るの……か?


「わあああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 俺は改めて悲鳴をあげた。





 永遠に思えた恐怖の十数分が過ぎた。俺達は悲鳴をあげ疲れてぐったりしていた。ヤツもまたいきなり俺達が大声を上げるんじゃないかと警戒して、距離を置いて追ってくる。


 もうだめだ。怖くて頭がおかしくなりそうだ。

 俺がそうなんだから、サヤやシェリーは推して知るべしだった。


 二人の恐怖を何とかしてあげなきゃ。


 そう考え始めると、俺自身の恐怖感はどうでも良くなっていった。

 前席の二人を見ると、ぎゅっと目をつぶって耳をふさぎ、何事かつぶやいている。


 二人とも、俺の名を繰り返して呼んでいた。


 俺の心の中に熱い物が駆け抜けていった。そうだ。俺はこの二人を守るんだ。その心も!

 俺の中の熱いハートがうなりをあげていた。そうだ。恐怖を乗り越えるんだ。そのためには……!


 俺はスマホを取り出すと、動画再生アプリを起動した。そうだ。熱いハートを燃やして恐怖を吹き飛ばすんだ!


 スマホから熱いイントロが流れ出す。そう、当然曲は【蒼翼の獣戦機トライセイバー OPフル】だ!


 俺は二人をかばうように身体ごと後ろを向き、歌い始めた。


 ヤツに異変が生じた。


 一瞬、びくっと震えるような反応。そして、ゆっくりと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。化け物でも俺の超絶イケボ歌唱には心惹かれるという事か? それとも、化け物も意外と熱血好きなのか?


 サヤとシェリーは目をつぶったまま、うっとりと聞いている。この荒ぶる魂のソングで、心が恐怖から解き放たれつつあるらしい。化け物はどんどん接近してくるが、彼女達には気づかれないように黙っていよう。


 その化け物は、ゆっくりと引き寄せられるように近づいてきたが、その手にはまだナイフを握っている。もう至近距離まで接近してきていた。やべえ怖ぇ。


 近づいて来られた後の事は全く考えていなかった。殺意を捨ててくれていればいいなぁ、と危機管理能力ゼロな思考をしていると、ヤツはやっぱりナイフをこちらに向かって振り上げた。ですよねー。やっぱり。


「奏唱者様ー! また素晴らしい演奏ですね!」


 遠くからディーノの声が聞こえた。


 化け物がびくっと震えた。あわてて最後の一撃を俺に向けて降りおろす。が、明らかにその手は震えていた。その震えのせいか、ヤツの腕の肉がごっそりと削げ落ちた。


 俺は思わず声を上げた。恐怖の声じゃない。驚きの声だ。


 削げ落ちた肉の下から、白い腕が見えた。あまりにも白いので、最初骨だと思ったんだけど、その太さからしても腕に間違いはない。とするとさっき削げ落ちたのは。


 ヤツは自分の腕が露出してしまった事にうろたえて、そして迫ってくるディーノ達の声に焦って、一瞬体勢を崩した。その瞬間、崩れたどろどろの顔が剥げ落ちた。

 いや、剥げ落ちたのはどろどろに溶けた顔なんかじゃなかった。


 大量の、海草。


 顔も腕も海草で覆い隠していたんだろう。それが全部一気に剥がれ落ちてしまったのだ。

 ヤツ――いや、彼女は身を翻して、逃げるように泳ぎ去っていった。


 俺は彼女に見覚えがあった。

 そう、どうして忘れていたんだろう。



 彼女はこの水の領域に飛ばされてきた時最初に遭遇した、あの超巨乳の美人さんだった。

次回予告。


シェライアだ。


恐怖は去った。

だが、おにいちゃんが水の民に抱く、不信感。

一体水の民とはどのような種族なのだろうか。


次回、Take It All! 第四十八話

「心理戦。」お楽しみに!



あれが竜宮…いやドラゴンパレスキャッスルか。

なんかシェリー、緊張してきたよぅ……(汗)

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