第四十六話 はいっ! ネタざんまい!?
とりあえず朗読してみたあの書簡、ツッコミどころが満載すぎて、もうどうにもなりませんですよ、はい。(第四十五話「ため息不可避の男たち。」参照)
あれで【大地の民の長老から水の民の総帥に宛てた書簡】なんだからもうね、なんかね、痛い。(第四十五話「ため息不可避の男たち。」参照)
水の民の総帥の名前が【乙姫】なのは、まぁ許すとしても、あの元気爺さんの名前が【キュアライトアネスト】というのは衝撃が強すぎる。お前はプリ○ュアか。(第四十五話「ため息不可避の男たち。」参照)
80年で5㎜伸びた、とか必要か? 必要な情報なのか? あんだけでかいんだから、5㎜とか誤差だ誤差。(第四十五話「ため息不可避の男たち。」参照)
まぁこれ以上あの書簡にツッコミを入れていても、文字数稼ぎと捉えられかねないので先に進もう。でもこれだけは言わせてほしい。あの書簡のノリ、最高に気持ち悪い。あの爺さんが書いていると思えばなおさらだった。(第四十五話「ため息不可避の男たち。」参照)
「と、とにかく、この書簡をおとひm……いや、水の民の総帥に渡せばいいって事だな。うん」
俺は書簡を丁寧に畳んでシェリーに渡した。
「あとは、明日の朝、ディーノさんが来るのを待つだけですねっ」
サヤはうきうきした表情で言った。海の中の世界に行くのが楽しみなようだ。ディーノはサヤに対して丁寧ではあるが素っ気無い態度だったのにサヤは全く気にしていないらしい。生まれ育った村での扱われ方に慣れてしまっていて、ディーノの態度ですら好意的なものに感じられたのだろう。そんなサヤが不憫で、また俺の心がちくりと痛んだ。
「そうだな。じゃあ、また着替え用意しておくよ。あちらさんのトップに会うわけだから、それなりの格好をしないとな」
二人の元気な返事を聞いて、俺は部屋に戻った。
翌朝、ディーノが俺たちを迎えに来た時、俺たちは既に着替えも朝食も済ませ、準備万端整えていた。
今日の衣装は二人とも花柄ビキニに花柄ロングパレオ。サヤはオレンジ系、シェリーは黄緑系だ。俺は先日の反省からスーツはやめ、白いTシャツ+短パンに、青のアロハを羽織ったラフないでたちにしておいた。
「みなさんとても素敵ですね。準備はもうよろしいですか?」
ディーノはシェリーを上から下まで舐めるように眺めながら言った。昨日より落ちついた声なのは、かっこつけていやがるのか。こいつ。
「そうだな。我ら大地の民の長老から書簡も預かっている。到着次第、その旨取り次いでもらいたい」
シェリーはもう、睨みつけるようなまなざしでディーノにそう告げた。こりゃかなり嫌っていそうだ。
「もう出発できるのか? だとしたらこの家を引き払うけど」
俺はスマホの画面を覗いて言った。待ち受け画面ではミュウが天蓋付きのベッドで眠っていた。こないだは布団だったくせに随分いいご身分だなおい。
充電を確認すると87%。昨日は動画再生したくらいしか使ってないからほとんど減ってない。
「あぁ、じゃあ、手伝いを寄越しましょうか」
ディーノの申し出を手を上げて謝絶して、俺たちはログハウスを出た。
引き払うのは簡単だった。そう、【O-TS】機能だ。
俺のスマホ操作とともにログハウスが消失するのを見てディーノはぽかんと口を開けてあっけに取られていた。
「これは……さすが【完全なる奏唱者】のお力は底知れませんね……」
「いや、これは【ピクシーオーナー】のお力だ」
感嘆してまた少し声が高くなったディーノの言葉をシェリーが一蹴する。
「私は、【閃光の魔術師】様のお力だと思うんですケド……」
サヤが遠慮がちに付け加えるが、いや、これ【スマホの機能】です。
「それでは、我らが自慢の潜水艇【プッティ・トルチュ】へご案内しましょう」
ディーノはサヤの言葉を完全にスルーして、海岸へ俺たちを誘った。
これはネタか。ネタなのか。
海岸で俺たちを待っていた潜水艇【プッティ・トルチュ】は大きな海ガメだった。
あ、いや、たぶん海ガメではない。甲羅にシートが4つ付いている。前部座席2席、後部座席2席。後部座席は少し幅広の座席がくっついて並んでいるため、ひとつの大きなシートとも言える。横になれるほどの幅はないが……ちょうど、そう、タクシーのイメージ。それにしても、ちょっとふざけすぎてやしませんか? このデザイン。
「……これ?」
俺は完全にドン引きした表情で海ガメ型タクシーっぽい潜水艦【プッティ・トルチュ】を指差した。
ってかさー。総帥の名前が「乙姫」で? その居場所が「ドラゴンパレスキャッスル」? 日本語訳したら「竜・宮殿・城」。「竜宮城」じゃねえか。で、カメに乗っていくと。
ちょっと日本昔話にインスパイアされすぎだろ。さらに言うなら、俺の知ってる浦島太郎は猟師で、音楽は奏でなかったはずだが。
「これが……水の民の潜水艇なんですね! カイ様! すごいですねっ!」
頭の中でツッコミ入れすぎて疲れ始めていた俺に、意外なほどテンションの上がったサヤの声。おいおいマジか。
「私も始めてこの目で見た……。一生の思い出になるな」
シェリーも感嘆のため息をひとつ。マジかシェリー。本気か。
「では早速……」
俺たちを【プッティ・トルチュ】に乗せようと、ディーノが言いかけたその時。
「おにいちゃん、シェリーと……」
「カイ様っ、前と後ろ、どっちが……」
二人が同時に言いかけ、同時に顔を見合わせた。表情はにこやかだったが、なんか火花が散ってないか?
「お、おい二人とも、俺は……」
俺が言いかけた時、二人は同時に俺の方を向いて同じ事を言った。
「私とシェライアは前に乗りますから、カイ様は後ろでゆっくりくつろいでくださいねっ」
「シェリーはサヤと前に乗るから、おにいちゃんは後ろでゆっくりしててね!」
……なるほど、そう来たか。抜け駆け禁止の紳士協定、いや淑女協定? というわけか。女の子にこんな風に取り合いをされた事なんかなかったぞ。押し付け合いをされた事はあるけど。たくさん。いっぱい。
ちょっと涙ぐみそうになる俺。本当に転生してきてよかった。
でもまてよ。俺を真ん中に三人でくっついて後部座席という手もあるんだぞ?
とも思ったが、まぁさすがにこれは言えない。
俺はおとなしく一人で後部座席に陣取り、サヤとシェリーは前の座席にちょこんと座った。
ガラスのような透明の壁が左右からせり出してきて、ドーム状に座席を包み込んだ。おお、これなら海中の様子が見える。水族館なんてメじゃないぞ。
「【プッティ・トルチュ】は自動で私たちを追尾するようになっています。では、良い旅を」
ディーノは白い歯を輝かせて俺たちに挨拶すると、海へ飛び込んだ。後を追うようにゆっくりと歩き出す【プッティ・トルチュ】。海に入ると、意外なスピードで潜行し、ディーノたちを追いかけ始めた。
ゆったりとした海中旅行。もちろん、そんな簡単に済むわけはなかった。
次回予告。
サヤです。
プッティ・トルチュで行く海の中。
そこで私達を待っていたのは、更なる恐怖体験でした。
海の中で私達を襲ってきた者は……。
次回、Take It All! 第四十七話
「深海の攻防。」お楽しみに!
楽しい旅になるはずだったのに、あんな事になるなんて……。




