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第四十話 あこがれのシチュ!!

 朝食はチキンライスとスクランブルエッグだった。


 俺のいた世界の料理はオムライスしか知らない二人が、俺のいた世界の食材を使ってなんとか工夫して別の料理を作ろうとしたんだ。その努力がいじらしいよね。


「もっといろんなレシピ覚えて、食材の味とかも覚えて、カイ様にもっと喜んでもらえるようにしたいですっ」


 ほら、これだ。サヤは本当にいい娘なんだけど、俺はふと心配になった。サヤ、無理してたりしないかなぁ。


「私だって料理の腕は確かだ。サヤには負けぬぞ」


 シェリーがすかさず対抗意識を燃やしていた。この辺可愛いんだよな。

 この二人なら、そのうちあっちの世界とこっち世界の融合メニューなんかも作ってくれそうだ。


「ねえマスター、サヤ達にもスマホ使わせてあげればいいじゃん」


 食後、ミュウがおなか一杯食べた満足げな表情で言った。


「サブ使用者として指紋登録しておけばいつでもレシピ見られるし」


 へー、そんな機能があったのか。PCのユーザーアカウントみたいなもんかな。


「そっか、それもそうだな。サヤ、シェリー、手、出して」


 二人は顔を見合わせて、ぱっと顔を輝かせた。


 俺は【サブ使用者登録】というシステムアプリを起動して、二人の指紋を登録した。二人が使う事の出来るアプリや機能は、オーナーである俺が設定できる。


 まずはブラウザと【R-DL】機能を二人に開放した。これでレシピの閲覧と食材の調達だけでなく、洋服も自分で好きなのを選べるようになるわけだ。

 スマホの使い方は後でレクチャーすることにしよう。まずはやることやらなくちゃだ。


 食後の後片付けを終え、水着の上に白いTシャツを着た可愛い二人と生意気な妖精を連れ、俺はログハウスを出た。


 明るい日差しの中で、サヤとシェリーがまぶしかった。水着をまともに見るのは気恥ずかしいが、白いTシャツを一枚着てもらうだけで遠慮なく見ることができる。狙い通り、白いTシャツに透ける水着の色が、余計色っぽかった。うん。正解。


 ちょっと悔しいが、ミュウも十分にまぶしかった。こいつ、羽があるせいか基本ノーブラなのだ。チビT姿はちょっと反則だぞ。


 やはりまずは気にかかっていたシェリーの部屋の窓枠を確認してみた。サヤとシェリーはまだ怖いようで、遠巻きに見ている。


「この世界で幽霊が出るなんて聞いてなかったけどなぁ」


 ミュウが俺の肩に座って首を傾げた。そうなの? じゃああれは何だったんだ。


 窓枠の少し下に、微かにひっかき傷が残っていた。マジか。あの「カリカリカリカリ」という音はこれか。


 実際に傷がついているところを見ると、あいつは実体があるタイプらしい。幽霊とかというよりゾンビ系というわけだ。ならば幽霊よりは戦いようがありそうだ。なにせ物理が効く。


 俺は続いて地面を調べ始めた。炎の壁による焼け跡は発見できなかった。あの壁は地面より少し上に発生するものなのかな。


 良く調べてみると、地面にぱらぱらと灰のような物が落ちていた。あいつの身体の一部だろうか。相当に気持ち悪いんだけど。


 まぁでも、これが本当にあいつの身体の一部なら、物質的な存在である証拠の一つだという事だ。


 この島には、なぜか植物の類も一切ないし、だから虫も動物も全くいない。つまりこの灰の正体があいつの一部であることはほぼ間違いないだろう。


 俺は二人を振り向いて、笑顔を作って見せた。


「大丈夫。化け物の類じゃない。実体があるモノなら、鍵かけとけば絶対に入って来られないから、安心していいよ」


 まぁ、ゾンビ的な物だったら厄介な気はするけど。それに、シェリーが憑依されたのは何だったのかという問題もあるけど。あまり彼女らの不安をあおる必要もないだろう。


 二人は不安そうに顔を見合わせたが、おそるおそる、といった感じで俺に近づいてきた。

 俺は二人に、窓枠の傷と落ちていた灰を見せて俺の解釈を説明した。


「まだ正体はわかんないけど、ほら、ひっかき傷があるって事は、簡単に中に入って来られないって事だろ? それに、こうやって灰も落ちてるって事は、炎の攻撃も有効だってことだ。俺たちが怖がる必要はないってことだよ」


 二人の頭をぽんぽんっと撫でると、二人はやっとほっとした笑顔を見せた。


「じゃあ、海岸に行こう。鎧を回収しなきゃな」


 俺がにっこり笑って言うと、すかさずミュウが飛び上がった。


「よーし! 海! 海!」


 ……ずいぶんテンション上がってるが、また濡れて飛べなくなるんじゃないだろうな。学習能力!


 俺は心の中でミュウにツッコミを入れながら、昨日二つの鎧を発見した海岸にサヤ達を連れて行った。






「結構……遠いですね……」


 数十メートル先に見える二つの鎧を眺めてサヤが言った。


「そうだな……。どうしよう、おにいちゃん……」


 シェリーも不安げに俺を見上げた。泳げない距離ではないが、二人ともカナヅチなのだろうか。


「あたしが飛んで行こうか?」


 ミュウが俺の肩の上で胸を張った。いや、お前が行ったところで持って帰って来れねえだろ。


「俺が行ってくるよ。泳げない距離じゃないし」


 【R-DL】でボートを出すという手も考えたが、まぁそこまでしなくてもいいだろう。


 俺は波打ち際で靴を脱ぎ捨てて、海に足を浸した。お。程よく冷たくて気持ちいいぞ。よく見るとなかなか透明度の高い海だった。さすがは【水の領域】だけの事はある。


「サヤ、シェリー、気持ちいいぞ! おいで!」


 俺は二人に手招きをした。実は、昔からやってみたいことがあったんだ。


「はい……っ」


 二人はおそるおそる近づいて来た。どうもテンションが低いなぁ。まぁ化け物見たし、泳げないし、何にもない島に閉じ込められてる状態だし無理もないか。


 二人を元気にするのは、俺の役目だ。


 俺は海水を手にすくって、思いっきり二人にかけた。


「きゃっ……!」


 二人が同時に声を上げる。俺は思いっきり声を上げて笑って見せた。


「おにいちゃ~~~~ん!?」


 シェリーがジト目で俺を睨む。


「カイ様! もぉ~!」


 サヤはぷうっと膨れた。二人とも髪から水滴を滴らせ、飛沫でところどころ濡れたTシャツから水着の鮮やかな色が透けて、これはもうやばい。


 二人は裸足になって駆け寄ってきた。仕返しをするつもりだ。そうそう、これこれ!

 シェリーはぱしゃぱしゃとしぶきを上げて海に入り、思いっきり俺に水をかけた。


「うわっぷ! やったな!」


 ……あれ? この水、しょっぱくない。真水か。


 もとの世界とは違うんだし、真水でもおかしくないんだが、なんだか違和感。イチゴ味だと思って口に放り込んだアメが梅味だった時みたいな感じ……かな。


 俺とシェリーが楽しげに水をかけっこしているのを見て、サヤもおそるおそる足を水につけた。


「ひゃんっ……! つめたい……」


 見渡す限りの水に入っていく事が怖いのか、自分の足元を見つめながらおそるおそる歩を進めている。

 俺はシェリーと顔を見合わせて、にやりと笑った。


「サヤ~」


 俺の声に、足元を見つめていたサヤが顔を上げた瞬間、俺とシェリーはサヤの顔めがけて思いっきり水をかけた。


「はい……きゃんっ!」


 思わず足を滑らせてしりもちをつくサヤ。可愛い。可愛すぎる!


「もぉ! カイ様! シェライア!」


 ぷぅっと頬を膨らませて抗議するサヤのTシャツは濡れて肌にはりつき、真っ赤なビキニが透けている。あー、こういうのあこがれてたんだ。転生してよかった。生きてて良かった! いや、死んで良かった!


 サヤが立ち上がろうとしたその時、ぐらっと地面が揺れた。地震か!?


「二人とも、岸に上がって! 地震だ!」


 俺達は慌てて岸に上がったが、揺れは一瞬でおさまった。しかし、海面に見えている二つの鎧はぐらりと傾いて……。



 俺たちの見ている前で、二つの鎧はゆっくりと海中に沈んで行った。

次回予告。


サヤです。


緑の鎧とガイオウが海に沈んでいく。

責任を感じているのか、静かに部屋にこもるシェライア。

シェライアを元気付けるために、私ができる事は……!


次回、Take It All! 第四十一話

「深海とオタクと。」お楽しみに!



え!? カイ様、それってもしかして……!!

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