第三十七話 まさかのホラー展開?
想像してみてほしい。赤いビキニの上にエプロンを着けた美少女を。そして、緑のスク水の上にエプロンを着けた、ロリエルフを。
夕食自体にも惹かれるんだが、いやもう二人のそのたたずまいと来たら。
また俺の戦闘民族が目覚めてしまう。まずい、この服装では目立ちすぎる。
俺は慌ててテーブルについた。
「ありがとう、俺が前に言ったの、覚えててくれたんだね」
そう、第十一話で俺がリクエストしたオムライスを覚えててくれたのだ。感動。といっても、あれは昨日の昼か。時間経過が遅いなこの小説。
二人はエプロンを外してテーブルについた。
「じゃあ、いただきます!」
二人が作ってくれたオムライスは美味しかった。美味しかったのだが、食べながら気もそぞろだった。やっぱり二人の水着姿は刺激が強い。
俺もそこまでウブなわけはないんだがなぁ。二人が可愛すぎるからもあるだろうが、スマホの充電が切れかかっている事の影響もやっぱりありそうな気がする。
俺は先ほどガイオウと緑の鎧を発見した事を伝えた。シェリーはほっとした表情になった。大切な緑の鎧が一緒に飛ばされて来た事で安心したのだろう。
食事が終わると、二人とも眠そうな顔になっていた。それはそうだろう。神殿の中をやたら歩き回らされたり、閉じ込められたり、戦ったり、吹っ飛ばされたり。疲れもピークのはずだ。
俺達は、朝になったら鎧の回収に行こうと決め、今日はもう寝る事にした。
ベッドで横になってもなかなか寝付けなかった。いや、疲れているんだよ。眠いんだよ。でも、ほら。なんつーの? 神経が昂ぶっているというか、なんというか。ありていに言えば、俺の戦闘民族が臨戦態勢というわけ。
これは俺のせいじゃない。二人が可愛すぎるからだし、スマホの充電が切れかけてるからだし。あ、それに! この島で最初に出会ったあの巨乳眼鏡美人さん! あの胸に顔をうずめちゃったんだぞ。刺激が強すぎるってもんだろ。
俺はついうっかりあの素敵なおっぱいの感触を思い出してしまった。うかつだった。悶々とした感情がどんどん内圧を高めてくる。あーーーもう、どうにでもなれ!
辛抱たまらず、ハードコアでグルーヴィなソロ活動を開始しようとした瞬間、俺はハッと硬直したように動きを止めた。
誰かが、俺を見ているような気がしたのだ。
ゆっくりと身体を起こした。そーっと音を立てぬようにベッドを降りた。
ぐるっと見回しても誰もいない。隠れる所があるとすればクローゼットの中だが、扉はぴったりと閉じている。俺は少し乱暴に、クローゼットの扉を開け放った。
……やはり誰もいない。
海岸で感じた視線と同じだ。同じ危険な匂いがする。
やはり、幽霊……?
恐怖が俺の心にわきあがって来た。しかし、同時に怒りもわいて来ていた。いくら幽霊だからって、俺が戦闘民族とタイマン勝負する所を見学するとは許せん。誰得なんだよ一体。
残すは窓。一番可能性が高い場所だ。
どうせ覗かれているのなら、足音をひそめたところで意味はない。俺は大股で窓に近づくと、レースのカーテンを一気に引いた。
外の暗闇の中で、青い燐光が二つ、逃げるように飛び去っていった。
……。
……えーと。今のは。
俺はたっぷり数分間、凝固していた。さっきの怒りはすっかり消え去っていた。やっぱね、実際見ちゃうとね。怒りなど簡単に萎えますよ。はい。
俺はぶんぶんと頭を振った。冷静に考えようとした。
いやぁ、まさか。まさかでしょ。
幽霊のわけないよな。だってほら、この作品、ホラーじゃないもん。どっちかと言うと、いや確実にコメディでしょ。ホラーとは対極にある世界観のはずでしょ。
俺が現実逃避気味に「幽霊なんかいないもん音頭」を作詞作曲しようとした時、ログハウスの中に少女の悲鳴が響き渡った。
バタンと音を立てて扉を開き、リビングに飛び出すと、サヤも飛び出してきていた。
「カイ様! 今のは……」
ただ事ではない悲鳴に、サヤの血相も変わっていた。悲鳴は主はシェリーだ。
俺達はノックもせずにシェリーの部屋に飛び込んだ。
「おにいちゃあん!」
部屋にはいると、シェリーがスク水のまま飛びついてきた。うんうん、怖かったんだろうなぁ。
「大丈夫か? シェリー」
俺が優しいイケボで言うと、シェリーの目にみるみる涙が溜まっていった。安心して涙腺が決壊したんだろう。
「あのね、変な音がして、窓を見たら、青い光が……」
そうか、俺が見たのと同じヤツかもしれないぞ。それにしても、変な音?
「カイ様……っ」
サヤも青い顔になって俺にしがみついてきた。やばい。ビキニ姿でしがみつくのは反則だぞサヤ。
密着してくる二人の美少女に気を取られながらも耳を澄ますと、その音がはっきりと聞こえてきた。
カリカリカリカリカリカリカリカリ……。
何かを引っかくような音。シェリーの言う通り、窓の方から聞こえてくる。
カリカリカリカリカリカリカリカリ……。
音自体は小さく、だからこそ余計に不気味だ。
カリカリカリカリカリカリカリカリ……。
よく聞くと、音は移動しているようだった。窓枠の幅で左右に往復している感じ。シェリーの言っていた青い光は、今は見えなかった。
俺は勇気を振り絞って、窓へ一歩近づ……けなかった。
左右からしがみついているサヤとシェリーが俺を引きとめて首を横に振っていた。
俺に引っ張られて窓に近づくのはイヤだし、かといって俺から離れるのもイヤなんだろう。うんうん可愛い。
「大丈夫だから。ほら」
俺は二人の頭にぽんっと手を置いて、くしゃっと撫でた。
その時、窓枠の下から青い燐光が二つ現われ、めらっと燃えた。同時に激しい衝撃音が響いた。
ドスッ!
「きゃああああっ!」
サヤが大声を上げてさらにぎゅうっと抱きついてきた。
「おにいちゃん、あれ……シェリーがさっき見たの……!」
シェリーはぎゅうっと目をつぶって、必死に俺にしがみついている。そう、やっぱり俺が見た光とシェリーが見た光は同じものだったのだ。
……ドスッ! ……ドスッ! ……ドスッ!
断続的に衝撃音が続いていた。いやもう不気味すぎるんですけど。
……ドスッ! ……ドスッ! ……ドスッ!
一定間隔で、何かがぶつかるような、何かを殴りつけるような音が響く。もう完全にホラーじゃん!
なんだよこの作品はコメディだろ! ホラー要素いらねんだよ!
俺は恐怖のあまり、逆に腹が立ってきた。
「おいてめえ! どうせ幽霊とかじゃなくて、なんかのギャグキャラかなんかなんだろーが! 正体を現せこのお笑い……ええと」
くあー! ここでディスり言葉に詰まるとは一生の不覚。
それでもこの俺の熱い思いは先方に伝わったらしい。青い燐光はもう一度燃え上がり、ひときわ大きな「ドスッ!」が響いた。そして同時に、燐光のそばに薄ぼんやりと何かが見えた。
「な……なんだ……?」
よく見ようと、思わず身を乗り出す。
屋内からの光を反射して、白いものがちらちらと見え隠れしていた。さらに目を凝らして見つめてみる。
「うぉあああああああああ~~~~~!」
俺は思わず大声をあげた。
窓の外に見えていたのは、どろどろに溶け崩れかけた、人間の顔だった。
次回予告。
サヤです。
とんでもない恐怖体験に、私ももうおかしくなっちゃいそうです。
その時カイ様が……!
カイ様、そ、その呪文は……っ////////
次回、Take It All! 第三十八話
「絶……。」お楽しみに!
わたし、もぉ……なにもかんがえられないですぅ……////////




