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第三十二話 明かされた秘密。

「こら、ミュウ!」


 俺は慌ててミュウを叱りつけた。


「長老に対して失礼にも程があるだろ! ……すみません、しつけがなっていなくて」


 俺は鼻を撫でながら「あいてててて……」と涙目になっている長老に平謝りした。


 でもまぁ、ミュウの気持ちはわかる。じいさんの話は長いもんだと相場が決まってるけど、さすがにまるまる一話分は長すぎだろ。


「いやいやなんのなんの。ピクシー殿に蹴られるとか、長老冥利に尽きるのじゃ。ほれ、もっと蹴ってぇ」


 長老はぽっと頬を染めながら言った。うん、きもい。


「ご、ごめんなさい、おじいちゃん」


 ミュウもかなりの勢いでドン引きして、俺の肩に戻ってきた。そう、少しは反省しろ。ガタイのいい元気なドMじいさんとかニッチ過ぎんだろ。


「と、とにかく、シェリーが緑の鎧に選ばれたのはわかりましたけど、俺、本当にピクシーオーナーなんですかね?」


 確かにガイオウを動かせたのは確かだけど、ミュウはピクシーじゃなくてスマホのナビだぞ?


「うん、間違いないと思うよ。だっておにいちゃん、シェリーの鎧と合体したでしょ?」


 シェリーが言った。コクピットにいたときのような、甘く上気した感じはもう消えているが、妹口調は変わっていない。声も素直に出しているのか、高い可愛い声だ。


「でも、カイ様はやっぱり閃光の魔術師様かも知れないと思う! 閃光の魔術師様だって、白き鎧に乗れるはずだもん!」


 サヤがぷうっとふくれて地団太のように身体をゆすった。程よくボリューミィなサヤの胸がぷるんと揺れる。


「それはそうなんじゃがな。緑の鎧と合体したという事は、カイ殿は緑の鎧の力を使う英雄という……」

「でもでも!」


 サヤは一歩も引かなかった。そういやここはエルフの地だから、サヤとしては、俺をエルフ達に取られてしまうような気がしているのだろう。さっきの戦いでも、俺はシェリーと合体しちゃったわけだし。


「あれだって、カイ様がシェリーをかばおうとしたから……」


「サヤ。私はシェライアだ」


 シェリーがいつもの口調で言った。え、あの妹キャラ対応は、俺だけ?


「え、え、でも、カイ様は……」

「おにいちゃんはいいのだ。だがサヤ。私はサヤよりも年上だぞ? 呼び方はきちんとすべきだろう」


 シェリーはいつもの口調で淡々と言った。でも、前と明らかに違うのは声の高さだ。あの無理して低い声を出していた感じはすっかり消え失せていた。

 いやぁ高く可愛い声のままでこの口調というのもなんかギャップ萌えるなぁ。


「うー。シェライアは、何歳なのよぅ……」


 見た目的には明らかに年下なのだが、ファミルエリシャと同い年と聞くと、一気にわからなくなる。ファミルエリシャはにこやかに黙って見ていた。


「確か、139歳じゃったかな? シェライアとファミルエリシャは」

「あら、長老、覚えていて下さったのですね」


 ファミルエリシャがにこやかに微笑んだ。


「ひゃ、ひゃく……」


 サヤが信じられないという顔で言いよどむ。そりゃそうだ。139歳って。てゆーか長老、お前がゆーな!


「エルフは人間の8倍くらいの寿命があるんですよ。そうですね、私とシェライアの年齢を人間の年齢に換算したら、17歳くらいですね」


 いや、どちらにしても、二人とも年齢相応に見えないんだけど。


「じゃ、じゃあ、カイ様だってシェライアよりずーっとずーっと年下じゃない! それなのにおにいちゃんっておかしいでしょ!」


 サヤの猛抗議もシェリーはどこ吹く風だ。


「おにいちゃんはいいのだ。ねっ、おにいちゃん」


 シェリーは甘えた声を出し、愛くるしい顔でにっこり笑った。これで139歳。うむむ。

 ミュウが俺の肩に座ったまま、首をかしげた。


「ねーねー、あたしはぁ? シェリ……」

「シェライアだ」


 食い気味に答えると、シェリーはふくれっ面のミュウを尻目に長老へ顔を向けた。


「それにしても、先程のゴーレム軍団は一体何だったのでしょう。明らかに鎧を狙っているようでしたし、それに、お気づきかも知れませんが、警備兵の中に、おにい……ピクシーオーナーを陥れようとしている者がいたようです。何かの前触れのようにも思えるのですが」


 確かに、俺が感じていたのもその懸念だった。闇が迫った時に伝説の英雄が遣わされるのなら、逆に言うと伝説の英雄の出現は闇の到来の前触れだとも言える。せっかく転生してきたのにその先の世界が物騒なんて最悪だ。


 あれ? ……ちょっと待てよ。俺って「神から遣わされた英雄」じゃなくね? ミュウだって伝説に語られてるピクシーじゃないだろうし、閃光の魔術師だって、写メのフラッシュだし。


 それよりあの「いけすかない男ズ」たちの方が問題じゃね? マスクかぶったやつとかも相当怪しいし。


 なんか釈然としないことだらけだった。


「そうじゃな。今回襲撃してきたゴーレムは石のゴーレム、つまり大地の眷属じゃ。闇の存在などではなく、わしらエルフが生み出し、使役する物。それが反乱を起こしたとなると……」


 長老は腕を組んでうーんと考え込んだ。マジか。あのゴーレムを操っていたのはエルフだという事か? 闇とか伝説とか関係ないエルフの内乱って事だろうか。


 それにしても目的がよくわからなかった。エルフなら、鎧の破壊を目的にする意味はないからだ。


 そして気になる「マスク」の存在。ミュウを精神制御して利用しようとしたクソ野郎。あいつだきゃあ許せん。


「あのマスクをかぶった男についてはご存知ありませんか?」


 これは長老と言うよりはファミルエリシャを意識して聞いてみた。


 昨夜からここに現れるまで、ファミルエリシャに何があったのか。それが今回の事件の本質なんだろう。あのいけすかない男ズが長老にどんな報告をしていたのか、長老はマスクをどんな人物だと聞かされていたのか。

 あまり考えづらいが、この長老自身が黒幕である可能性だって完全には否定できない。


「そう言えばあの男は、昨日報告を受けた男じゃな? ファミルエリシャ」


「いえ。長老。私が昨日部下を通じてご報告申し上げたのは、このカイさんの事でした。

 ……今回の件については、私の不手際、力不足が原因であると思います。部下をしっかり把握できていなかった事、このような暴挙を許してしまった事、全て私の責任です。

 カイさんやサヤさんやミュウさん、もちろんシェライアにも、大変失礼なことをしてしまいました。本当にごめんなさいね」


 ファミルエリシャが申し訳なさそうに頭を下げた。

 状況を考えるに、ファミルエリシャは監禁されるか何かして自由を奪われていたはずだ。マスクの一派が、マスクがピクシーオーナーだとでっち上げるために、俺達を監禁したのだとしたら、真実を知るファミルエリシャを自由にしておくはずはない。


「ファミルエリシャは、あのマスクの男の顔は見ていないのか?」


 シェライアの問いに、ファミルエリシャは目を伏せて首を横に振った。


「ごめんなさい、見ていないの。昨夜神殿に帰って来てからの記憶がはっきりしなくて……。気がついたら地下牢にいたの。

 なんとか脱出してかけつけてみたんだけど……」


 ファミルエリシャは悔しそうだった。それはそうだろう。大地の神殿を守る警備兵長が、自分の部下の暴走を許し、大聖堂の破壊を防ぐことが出来なかったのだから。


 ファミルエリシャの記憶が飛んでいるのも、マスクに記憶を消されている可能性が高い。

 ミュウのように完全に精神を支配されなかったのは幸いだった。もちろん、ミュウはその時マスクの顔を見ている可能性が高いが、その間の記憶はリセットされている。


 マスクの正体については完全に手がかりがない状況だった。


「じゃあ、今日は闇の人たちが来たわけじゃないんだ」


 サヤがぽつんと言った言葉に、俺達ははっとした。

 そうなのだ。闇からの侵攻は、まだ始まったわけではない。今回の事件に闇が襲来した気配はない。


 だが、それならなおさら疑問は残るし、ある意味問題は深刻なんじゃないか。

 【自己虐殺戦争(セルフジェノサイド)】。闇の襲来の前に起きたと言われる、愚かな殺し合い。


 これから何が始まろうというんだろう、この世界で。





 ……って、ちょっと待て! この物語はそんな重い感じじゃないだろ!


 もっと軽くテキトーに! 俺は重い話の主人公なんか出来るタイプじゃないんだからな!



 よし、次回から無理矢理にでも軌道修正してやるぞ!

次回予告。


サヤです。


旅立ちの時がきました。

そして、それは別れの時でもあります。

旅立つカイ様と私。シェライアの涙を残して――。


次回、Take It All! 第三十三話

「別離。」お楽しみに!



これから、カイ様と二人っきりの旅が始まるんですね……☆

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