第三十一話 伝説。
「むか~しむかしの事じゃった。
あるところにおじいさんもおばあさんもおらんほどの大昔じゃ。天地開闢からそれほど経っておらんでな。世界にはまだ神しかおらんかった。
神は寂しくてな。話し相手に、羽の生えた妖精をお作りになった。そして神は、世界に大地を、水を、火を、風を作り、この世の中を整えられたと言われておる。
整えられた世の中には我らエルフや人間をはじめ、様々な種族が溢れた。世界には光が満ち、笑顔があふれ、神の寂しさは癒された。
神が最初にお作りになった妖精は大地に移り住み、ピクシー族となった。そして幸せを運ぶ神の使いとして大地に繁栄した。
じゃが、物事には必ず反作用というものがある。神の行った創造に対しては破壊が、そして光に対しては闇が生まれた。それらは神の創りし楽園に忍び寄り、害をなそうと企てておった。
だが神はその闇を滅ぼそうとはしなかった。望んだ物ではなかったとは言え、破壊も闇も、神が生み出したものに違いはなかったからじゃ。
そのかわり、神は我らに闇に対抗する術を与えてくれた。それが、四つの魔操鎧じゃ。
我ら大地の民エルフには緑の鎧が与えられた。そして水の民には青の鎧、火の民には赤の鎧、風の民には無色の鎧がそれぞれ与えられた。【神より賜りし四つの鎧】と言われる、最初の魔操鎧じゃな。
世界に危機が迫る時、【神より賜りし四つの鎧】の力が必要になった時、それぞれの鎧を使いこなす英雄が現れ、世界を救うというわけじゃ。
大地の民に与えられた緑の鎧にはピクシーオーナー。つまり、カイ殿じゃな。
ん? 緑の鎧を操ったのはシェライアだった? うん、そうじゃな。
伝説によるとこういう事じゃ。
四つの鎧は、民の中から操者を選び、操者とともに英雄を助ける。英雄達がそのまま鎧を操るわけではないのじゃ。
それと言うのも、英雄達の力はあまりにも強大だったからじゃ。もし四人の英雄同士で争いが起きでもしたら、そしてその戦いに魔操鎧が使われたら、それこそ世界が滅びかねん。
そこで神は四人の英雄の中で最も力があり、神に近い存在にのみ鎧の力を使う事を許すことにした。
その証が白き鎧、【神の鎧】じゃ。
白き鎧に選ばれた英雄のみが、世界を救う鎧の力を振るうことが出来る。ピクシーオーナーであるカイ殿が、白き鎧を通して緑の鎧を使いこなしたようにな。
過去何度も繰り返されてきた闇との戦い。ある時は火の民の赤の鎧が、またある時は水の民の青の鎧が、闇を退けた。
数千年前に起こった最後の戦い……。これは苛烈を極めたと言われておる。これまでに例を見ない規模の精鋭を擁した闇。それに対抗するため、過去最強と謳われた四人の英雄が遣わされた。
だが愚かなことに、民達はそれぞれの英雄を先頭に立て、戦を始めおった。自分達の英雄が最も神に近いのだ、とな。自分達が最も神に愛されているのだという驕りがあったのじゃろう。
その戦いは【自己虐殺戦争】と呼ばれ、最悪の愚行として現在まで語り継がれておる。
闇の軍勢が迫っておるというのに、【自己虐殺戦争】は続いた。本当に愚かなことじゃ。
その戦いを終わらせ、白き鎧に選ばれたのが、先代のピクシーオーナー、ワッジエルマイト様じゃった。
ワッジエルマイト様も、他の英雄達も、この戦いの無意味さや愚かさをわかっておられた。そこで英雄達は戦いを終わらせるため、四人での決戦を行った。
英雄同士で決着が付けば、民達も納得せざるを得んからな。闇はもうそこまで迫っておった折、この手段しかなかったのじゃ。
ワッジエルマイト様が白き鎧に選ばれるだろうという事は、英雄達にはわかっておった。だから、なるべくワッジエルマイト様の力を使わせないように、そして自分達もこの後起きる闇との戦いでワッジエルマイト様をサポートできるように、力をセーブして戦っておったのじゃが、民の目を納得させるのは容易ではなかった。
英雄達は傷ついた。一人はこの戦いで亡くなってしまっておる。
ワッジエルマイト様の勝利で戦いが終わった後、失望した民達によってたかって殺されてしまった英雄もおった。
ワッジエルマイト様は傷つき果てた状態で、闇の軍勢と対峙しなければならなかった。
他の英雄の協力もなく、戦のために疲弊した民にはワッジエルマイト様を支援する力もなく、ワッジエルマイト様はピクシーと緑の鎧の操者とたった三人で、命の限り戦われた。だがいかんせん多勢に無勢。世界を守りきる事など出来るはずもなかった。
世界の大部分が焼き払われ、多くの民が死に、文明は失われた。多くの動物が、種族が絶滅した。ピクシー族が滅びたのもこの頃だとされておる。
ワッジエルマイト様に付き従うピクシーも、サポートし続けた緑の鎧の操者も命を落した。満身創痍のワッジエルマイト様は、それでもたった一人で闇の軍勢を蹴散らした。
とうとう闇を束ねる暗黒皇帝を追い詰めたワッジエルマイト様は、刺し違える覚悟で一騎打ちを挑み、自分の命と引き換えに暗黒皇帝を滅ぼされたのじゃ。
石像と化した二つの魔操鎧が発見された時、民は悟った。自分達がかけがえのない大切なものを失ってしまった事を。
壮絶な戦いは終わりを迎えたが、後に残ったのは、自らの愚かさから英雄達を失ってしまったわずかな民と、見渡す限りに広がる廃墟だけじゃった。
このような結末になってしまった事を民は悲しんだ。自分達自身の愚かさが、大きな犠牲を生んでしまったことを悔いた。
自分達が殺してしまったのも同じじゃ。大変な罪を犯してしまった。
民の数は以前の百分の一にも満たない状態まで激減しておった。しかも、そのうちかなりの数が、民同士の戦で失われたのじゃ。復興は、自らの過ちへの反省の上にはじめねばならんかった。
英雄達を、自分たちの傲慢さの象徴にしてはならない。英雄達も、神より賜りし鎧も、闇を払い民を護る物。だが自分達もまた、鎧や英雄達を守らねばならない。
民はそれぞれ自分達の神殿を建造し【神より賜りし四つの鎧】を祀った。
ワッジエルマイト様の功績を称えて、白き鎧は我らが大地の神殿に祀られる事となった。
……これが、我ら大地の民エルフに伝わる伝説の全てじゃ。
古い古い伝説じゃ。おとぎ話の類だとも言われておったが……。
ピクシーオーナーが実在し、鎧が復活したのじゃから、本当にあった話なのかも知れぬなぁ」
長老は静かに語り終えた。
「おじいちゃん、話が長ーーーーーい!」
ミュウの飛び蹴りが、長老の鼻の頭にヒットした。
次回予告!
やっほー!ミュウだよ!
おじいちゃんの長話もやっとおわったぁ!
ほっと一息ついたところで、とんでもない秘密が暴露される!
え?なになに?急にシリアス展開!?
次回、Take It All! 第三十二話
「明かされた秘密。」
読まなかったら鼻に飛び蹴りだからねっ!
シリアス展開なんてあたしには無理だと思ってるでしょー!
楽しみにしてなさい、あたしの、お・い・ろ・け(はぁと)




