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第三十話 緑の鎧feat.ガイオウ

 強烈な緑の光がおさまった時、ガイオウのコクピットでは信じられない事態が起こっていた。


 俺の足元にはもう一つのシートがあり、そこにはふんわりと脱力し、火照った顔をしたシェリーが座っていた。


 いや、足元というと語弊があるな。位置関係的には、俺の膝の間にシェリーの頭がある。俺の両足が踏んでいたペダルは左右に開き、目の前にあったコンソールパネル、つまりスマホは右手側に移動していた。


「え、え! シェライア? なんで? どうして?」


 ミュウが大声を上げた。いや、驚くのはわかるがうるさいっての。

 シェリーはのろのろと振り向いて俺達を見上げた。


「ミュウ……? おにいちゃん……?」


 お、おにいちゃん? 俺の事? なんか、今までとのギャップが……。

 シェリーの顔はまだ上気して赤く、少し意識がぽわんとしてしまっている表情だった。なんだろ、この童顔でこの感じ、なんかエロいぞ。


「カイ様! 大丈夫ですか? シェライア!」

「カイさん! シェライア!」


 サヤの声とファミルエリシャの声。そうだ。まだ戦いは終わっていない。

 棍棒で殴られている衝撃がなくなっていた。俺はガイオウを立ち上がらせると周囲を見回した。


 え。高さが全然違う?


 ちょっと離れたところでサヤがこっちを見上げていた。長老はまだぶら下がっているが、もうこっちが見下ろす感じ。ファミルエリシャの【スプリーム】は、三体のゴーレムと戦闘していた。まだあのすごいやつのエネルギーがたまっていないのだろう。機銃とトンファーでは決定打に欠ける状態のようだ。


 俺達を襲っていた残りのゴーレムどもは、散り散りにぶっ倒れていた。あの緑の光に弾き飛ばされたのだろう。それでもサヤや長老には影響がないあたり、敵味方識別性能が半端ないな、あれ。


 倒れているはずの緑の鎧は見当たらなかった。


 そうか、なるほどわかったぞ。

 緑の鎧とガイオウが合体したんだ。ならばこのコクピットにシェリーがいるのもわかる。ってゆうか、コクピットまで合体するとか、すごい変形機構だな。


「シェリー、行くよ」


 俺はシェリーの頭をそっと撫でた。シェリーの身体がビクッと震えた。あの時のサヤと同じだ。


「うん……。おにいちゃん……」


 シェリーはその尖った耳まで真っ赤にして、素直にこっくりとうなずいた。キャラ崩壊しているようだが、完全にこっちの方が似合う。


 吹き飛ばされたゴーレム達は起き上がり始めていた。さぁ、反撃だ。

 ガイオウにはめぼしい武器はなかったが、緑の鎧はどうなのだろう。そういえば、シェリーが緑の鎧に乗り込むとき、緑の宝玉が輝いていた。ってことは。


「アイビー! ウィップ!」


 俺の声に呼応して、ガイオウin緑の鎧、いや、緑の鎧feat.ガイオウというべきか。とにかくその両手首から鋭い先端を備えたイバラの蔓が一直線に伸び、左右から棍棒を振り上げて突進してくるゴーレムの胴体中央を貫いた。


 中心に風穴をあけられた二体のゴーレムが崩れるように倒れ、動かなくなった。外側は頑丈だが、内部を破壊されるともろいという事か。


 二体をやられたゴーレム軍団は、スプリームと戦闘中の三体をのぞき、一斉にこちらへ向かってきた。その数、八体。二体ずつ串刺しにしていたのではとても間に合わない。


「ねえねえマスター、やばいよぉ! いっぺんに来てるって!」


 ミュウが俺の頬をげんこつでぐりぐりしながら叫ぶ。だから! 痛ぇしうるせぇっての!


「おにいちゃん、シェリーも、がんばる……!」


 まだぽわぽわした感じのシェリーが操縦桿を握った。だ、大丈夫か?


「いけるのか? シェリー」


 そもそもシェリーはまだ緑の鎧をまともに操縦していない。いくら直感的な操作が可能と言っても……。


「うん、おにいちゃんと一緒だもん。だから……」


 おお、そんなキラーワード言うタイプだったか? やばいぞシェリー、おにいちゃん、いけない気分になってしまいそうだぞ。


 そんなあほな事を考えている間にもどんどんゴーレムは近づいてくる。


「だから……もういっかい、頭ぽんぽんして? おにいちゃん」


 シェリーは俺を見つめて、首をかしげた。おおおおおおい! ほんと、どうしたんだ!


「ダメ……?」


 ダメじゃないダメじゃないダメじゃない! いくらでもしてやるぞ!

 俺はシェリーの頭をぽんぽんっと撫でて、超絶イケボを繰り出した。


「いくよ……シェリー。一緒に」

「うん……っ、おにいちゃん!」


 緑の鎧feat.ガイオウは力を溜めるように少し屈み、一気に力を解放した。


「いっけぇー!」


 ミュウの叫びをきっかけに、緑の鎧feat.ガイオウの両腕と背中から無数の蔦が伸びた。近づいてくる八体のゴーレムを粉々に突き崩し、スプリームと戦闘中の三体を絡め取る。


「ファミルエリシャ!」


 シェリーが叫んだ。


「ええ!」


 スプリームはバックステップして三体と距離を取り、胸の装甲を開いた。


「スプリーム・クラスター・カノン……!」


 スプリームの胸部に高圧のエネルギーが集中しているのが、なんとなくわかる。そうか、あのすごいやつか!


「……シュート!」


 スプリームの胸から幾重にも束ねられたビームが発射された。ビームの奔流は至近距離の三体を直撃し、飲み込んだ。


 ビームの発射を終えたスプリームの胸部装甲が閉じた時、十数体いたゴーレムは全て動作を止め、沈黙していた。


 戦いは、終わった。





 それにしても大聖堂は大惨事だった。ほぼ廃墟だ。無傷の壁は、ガイオウと緑の鎧が安置されていた一番奥の一角だけで、あとはもう目も当てられない状況。まだ天井が落ちてこないのが不思議なくらいだった。なんて言ってる場合じゃなく、すでにミシミシといやな音がし始めている。


 緑の鎧feat.ガイオウがサヤを、スプリームが長老を手に乗せて中庭に脱出すると、大聖堂は大轟音を上げて崩壊した。





「長老、申し訳ございませんでした。大聖堂を護ることが出来ず……」


 ファミルエリシャが沈痛な面持ちで頭を下げた。長老直轄の警備兵長としては、この神殿の中枢である大聖堂が破壊されてしまった事に責任を感じているのだろう。歴史的価値も高そうな大聖堂が失われてしまった事は、もう取り返しがつかない。


「んむ? あぁ、まぁいいだろう。気にするな。伝説の白き鎧と緑の鎧が無事だった、ってゆうか、その活躍が見られただけでわしはもうね、ほんとにね。めっちゃテンション上がったし」


 長老は大聖堂の残骸を眺めながら上機嫌で言った。長老、ノリ軽っ!


 中庭のあちこちには撃破された魔操鎧やゴーレムの残骸が転がり惨憺たる有様だった。よくもまぁ長老はこの状態で上機嫌でいられるものだ。肝が据わっているというのか、なんというのか。


 俺達はこの長老の提案によって、戦闘の傷跡生々しい中庭にピクニックシートを敷いて、会食の席についていた。まるで遠足だ。


 さすが長老主催の会食だけあって料理は豪勢だった。昨夜宿で食べたものよりさらに豪華|(と思われる)フルコース。ただ、ナイフとフォークを使う料理は、ピクニックスタイルには合わんぞ、絶対。どうやって食えばいいんだ。

 ミュウは肉を一切れ素手で持って、「あちあちあち!」等と騒ぎながらかぶりついている。


「ピクシーオーナー殿、シェライア、よくぞ伝説の魔操鎧を復活させてくれた。わしが生きている間に見られるなんて、超ラッキーじゃよ。改めて、礼を言わせてもらう」


 長老が改まって座りなおし、俺達に頭を下げた。


「ねえおじいちゃん、あたしは? あたしも頑張ったんだけどー!」


 ミュウがふくれっ面で長老の肩に乗り、猛抗議した。いや、お前何もしてないだろ。


「あぁ、もちろんじゃよ、ピクシー殿。ピクシーあってのピクシーオーナー殿じゃもんなぁ」


 長老が目を細めてミュウの方を振り向いた時、ミュウの抱えた肉が長老の鼻に当たった。


「あちあちあち!」


 騒ぐ長老に跳ね飛ばされたミュウは俺の肩に戻って、長老の鼻に触れてしまった肉片を見つめた。


「あーあ、もう食べらんないじゃん。マスター、これあげる」


 いやいらねーし。


「ところで長老、ピクシーオーナーや白き鎧の事、教えていただけませんか?」


 俺はミュウを完全に無視して長老に聞いた。


「カイ様は、記憶を失ってらっしゃるんです。私は、カイ様は【閃光の魔術師】様だと思うんですケド」


 サヤとしては、やっぱり俺の事を【閃光の魔術師】だと思いたいのだろう。


「わかった。わしの知っている事を、全て話そう」



 長老は肉汁の付いた鼻の頭を拭き、真剣な表情で語り始めた。

次回予告。


この世界に伝わる伝説をお話しよう。

むかーしむかしの事じゃ……


大地の長老は、静かに語り始める。


次回、Take It All! 第三十一話

「伝説。」



……ついに語られる、創世の秘密。

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