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Take It All!~異世界転生でチート級の超絶イケボに!冴えない営業マンが勘違いで伝説の英雄を掛け持ち美少女ハーレム無双? だけどスマホの充電がきついっす~  作者: 硫化鉄
第一部 大地の章

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第二十一話 罠と俺の決意

 思った通りだった。もっといけすかない男Bは俺達をだましていたのだ。多分ミュウがいないのも、こいつらが誘拐したからなのだろう。悪役としては三流レベルのわかりやすさだった。よし、この際こいつの事は「わかりやすいアホ悪役B」と呼ぶ事にしよう。


「さすが、素直ですねえ人間様は。そこで一生、来るはずのない会食の時を待っていて下さい。おちびちゃんと一緒にね」


 わかりやすいアホ悪役Bの笑い声がこだました。

 血相を変えてシェライアが立ち上がった。サヤも不安そうに俺を見ている。


「最も優れた種族エルフってのも、かなりの個人差があるみたいだね、シェライア」


 俺はわざと相手に聞こえるように言った。扉の外から聞こえる笑い声が途切れる。俺の反応が予想外だったのだろう。底が浅いなぁこいつ。


「こいつさ、俺達がだまされたと思ってるみたいだぜ。自分が引っ掛けられたことにも気付かないでさ」


 俺は大声で笑ってやった。こんな時でも俺の声は超絶イケボだ。扉の外で、わかりやすいアホ悪役Bの血相が変わるのがわかった。


「ふ、ふざけた事言うな。俺の口車に乗ってここまでのこのこやってきたくせに!」


「あーらら、ほんとに気付いてないんだ。お前が言ってた事、矛盾だらけだったんだけどさ。ねえ、バカなの?」


 俺は思いっきり煽ってやった。

 俺はもともと営業マンだ。交渉術は一応叩き込まれている。俺の場合は商談をうまくまとめる力は乏しかったが、むしろ効率的に相手を怒らせる方向に特化していた。まぁ、営業マンとして底辺だったのはこの辺が原因だ。お世話になった先輩営業マン(超有能)にいつも怒られていたのを思い出す。


「お前はほんと、営業マンより芸能レポーターとか取調べ官とかの方が向いてるんじゃねーの? 怒らせて本音引き出すのは有効だけど、それじゃあ契約はまとまらねえんだよ」


 ああああ、ごめんなさい先輩。俺、もう死にたい。


「ど、どんな矛盾だ。俺の完璧な計画が、人間ごときに見破られるわけがない。強がりを言うな!」


 わかりやすいアホ悪役Bが何かほざいているがどうでもいい。俺は一人で、思い出に打ちのめされていた。


「カイ殿には全てお見通しなのだ! ピクシーオーナーなのだからな!」


 シェライアが凛とした声で言い返した。くぁぁ〜! シビれるぞこの全幅の信頼。


「カイ様、矛盾って、何ですか?」


 サヤが俺にささやき声で尋ねた。サヤも俺の言葉をなんの疑いもなく信じていた。俺の謎解きを期待するキラキラした瞳だ。

 俺はあっけなく立ち直った。


「種明かしってレベルでもないけどな。おいアホ。お前、ここに俺らを入らせる時、なんて言った?」


「一旦ここでお待ち下さい。準備が出来次第、すぐにご案内します」


 わかりやすいアホ悪役Bは、一言一句間違えずに言った。なるほど台本か。しかも口調まで全く同じだったから、相当練習をしたに違いない。あーあ、痛々しいなぁ。


「じゃあ、この神殿に入る時は? 台本丸暗記してるみたいだから、覚えてるだろ?」


「ふん、当たり前だ。俺があの時言ったのは、『こちらへどうぞ。長老と会食の準備が整っております』だ。あああああっ!」


 さすがに気付いたか。


「整っていた準備が、ここまで来たら準備中に変わった。他にもまだまだつっこみたいとこはあるけど、やめといてやるよ。台本以外の事喋るのは苦手みたいだしな」


「ほざけ。強がったところでお前らが囚われた事にはかわりないのだ。人間風情がピクシーオーナーを騙りやがって。ピクシーオーナーはエルフがなるべきなのだ!」


 扉の向こうでわかりやすいアホ悪役Bが顔を真っ赤にして叫んでいた。なるほどね、そういう事だよな。ほんとわかりやすいわ。


「じゃあ、ミュウをさらったのも……」


「ああ俺達だよ。ピクシーを連れてきた事には礼を言ってやるよ。お前らはここで干からびて死んでいけ!」


 わかりやすいアホ悪役Bは勝ち誇って去っていった。うん、ほんとわかりやすいバカだった。


 俺はとりあえず必要な情報は得られたので満足だった。ミュウの事だ。単に迷子になられていたら厄介だと思ってたんだけど、あいつらに捕まっているなら手の打ちようはある。

 殺されるわけはないだろうし、スマホをなんとかうまく使ってミュウを探し出せば、そこがやつらのアジトである可能性は高い。


 俺は石造りの椅子に座って、スマホを取り出した。


「カイ殿、本当に大丈夫なのか?」


 シェライアが心配そうにそばへ来た。


「もちろん。シェライアは心配しなくていいよ」


 俺はシェライアの頭をぽんぽんと撫で……はっとして手を離した。シェライアは驚いたように目を見開いている。俺はシェライアの瞳の奥を見る事が出来なかった。彼女の心が傷つくのを見るのが怖かった。シェライアはこういうのが嫌いだったはずだ。


「ご、ごめんシェライア!」


「いや……お気になさらぬよう」


 シェライアはよそよそしくそう言って、俺から離れた。


「これからどうするんですか……?」


 サヤが俺の隣の椅子にすわり、スマホの画面を覗き込んだ。


「そうだなぁ。まずはミュウを助け出して……。そうだ、せっかくだし、【白き鎧】と【緑の鎧】も見学しよう」


 俺は能天気に言いながらスマホを操作した。


「無茶を言うな。私達は閉じ込められているんだぞ?」


 シェライアの声にはとげとげしい響きがあった。俺のせいだった。彼女の誇りを傷つけてしまったのだから仕方がない。でも、今俺に出来ることは、この状況を打開することしかなかった。


「俺が何とかする」


 俺は短くそう答えた。この部屋に閉じ込められていることは全く問題じゃなかった。俺は【鍵】能力の保持者だ。俺に開けられない鍵はない。

 それより問題は、この神殿の構造だった。色々と連れまわされたお陰で、この建物の構造も、自分達の現在位置も、皆目見当がつかないのだ。

 しかしそれも何とかできる自信があった。


「よし、あった……。あとはうまく使えるか……」


 もとの世界ではやたら使っていたのに、こっちでは全然使っていなかったアプリだ。ってゆうか、使えるのか? まぁ、あるんだから使えるんだろうけど。


 俺はちょっとドキドキしながら【地図】アプリをタップした。


 画面は真白だった。ですよねー。知ってた。

 地図アプリって、GPS使ったり衛星写真使ったりと、凄まじいハイテク技術をふんだんに使っているのだ。こっちの世界に人工衛星なんかあるわけねーし。

 ならこんなアプリ入れんなよ! とブチ切れそうになった時、真白な画面の真ん中に信じられないメッセージが表示された。


 【初期設定を行います。地図データをダウンロードしますか?】


 あのね、これで「いいえ」を選択する人、いるんでしょうか。


 俺は迷わず「はい」をタップした。

 ダウンロード中を示すバーが表示され、あっという間に100%に達した。むぅ。相変わらず早い。


 地図アプリが正常に起動した。マジか。上空から見た大地の神殿が映し出された。形としてはくそでかい日本武道館みたいな感じ。


 【ルート】というアイコンをタップすると、神殿の入り口付近に水色の点が表示され、ピンが立った。ん? どういうこと?


 指で広げて拡大していくと、その水色の点が、ぐちゃぐちゃと絡まる線の塊であった事がわかった。入り口から狭い範囲を行ったり来たりさせられて、結局少しも奥に入っていないことがわかる。


 俺は勝利を確信した。完璧な地図と完璧な解錠能力があれば、この神殿内で行けない所はないという事だ。それに……。


 俺は【ナビを探す】を起動した。思ったとおりだ。赤い点の背景に地図が重なっている。拡大してみると、ミュウは神殿の中心部に近い部屋にいるようだった。最初に見た時は背景がなかったせいで気付かなかったのだが、かなり広範囲のモードで表示されていたらしい。赤い点が微妙にしか動かなかったのはそのせいだった。


 これで準備は整った。反撃だ。


 俺は壁に寄りかかってうつむいているシェライアを見た。その身長のせいで仲間にも馬鹿にされ、評価もされず、傷つけられた誇りを抱え続けている女。


 俺は隣に座っているサヤを見た。醜いと罵られ、人間であることすら許されず、廃棄物として売られかけていた、自分が存在して良いという自信すら持てない女。


 二人とも、俺の大切な存在だった。

 俺の中に、怒りが湧き上がってきた。何故この二人が、こんな悲しい思いをしなければならないのか。


 俺は決心した。俺は必ずシェライアの誇りを取り戻させてやる。そしてサヤ。俺はサヤに本当の自信を持たせてやるんだ。俺の大事な二人を、傷ついたままにさせておくわけにはいかない。



 俺は意を決して立ち上がり、石造りの扉に触れた。

次回予告。


サヤです。


敵の罠を脱出して、ミュウちゃんを助けに向かう私達。

そんな私達に次々とピンチが……!

でも、カイ様は閃光の魔術師の力を使って……。



次回、Take It All! 第二十二話

「【鍵】→【鍵】→おっぱい、そして壁。」お楽しみに!



暗闇って、人を大胆にさせちゃうんですね……恥ずかしい///////

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