作戦開始
翌朝、全国から集まった結界師や支援要員は、キャンプ場近くの研修施設のホールで開始を待っていた。
やがて前方の壇上へ宗厳が登ると、会場がシンと静まり返った。
「皆さん、おはようございます。まずは、富士結界修復へのご協力、ありがとうございます」
穏やかな声がホール全体へ響く。
「本日より第一段階を開始します」
会場の空気が少しだけ引き締まった。
「今回は六つの班に分かれ、それぞれ担当地点へ向かっていただきます。これから班分けと担当地点を発表します」
宗厳は一度言葉を切った。
「結界班のリーダーはそれぞれ藤崎悠真、白川勲、北野源太郎、浜崎浩一、赤嶺颯、そして私です。それではリーダーの方、地図と班分けの表を五条があちらで配っています。受け取り次第、配置について下さい」
リーダーに指名された人物がそれぞれ前の方へ動き出す。
「それぞれの旗の下の掲示板に班の名簿を掲示しています」
ホールの周りには、班ごとの旗が立ち並んでいた。六つの結界班に加え、巡回班や医療班など、それぞれの旗の下へ名簿が貼り出されている。
「それでは、各自所属を確認してください」
宗厳の声が響くと、参加者は一斉に動き出した。
寺の見学組はあらかじめ悠真班へ同行することになっている。香月達は紫色の旗の下で地図を広げている悠真のもとへ向かった。ただ一人、拓也だけは一成の後を追う。
一方、静子達教師陣は掲示板の前で自分の名前を探し始めた。
香月達が悠真のもとに着く頃には、紫色の旗の下には既に何人かの結界師が集まっていた。悠真は一人一人と挨拶を交わしている。
「お久しぶりです」
「今回もよろしくお願いします」
そんな声があちこちから聞こえてきた。しばらくして静子も姿を見せた。
「同じ班でしたね」
悠真が笑う。
「ええ。改めてよろしくお願いします」
静子も軽く頷いた。
全員が揃ったのを確認すると、悠真は地図を指した。
「私達の担当は北西です。ここから車で三十分ほど移動します」
皆が頷く。
「では、行きましょう」
施設の外へ出ると、協会が手配したマイクロバスが待機していた。荷物を積み込み、それぞれ席へ着く。ゆっくりと走り出したバスは、キャンプ場を離れ、樹海に吸い込まれて行った。
香月は静かに窓の外を見つめながら、これから始まる結界修復に思いを馳せた。その胸には期待と少しだけの緊張が入り混じっていた。




