表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻獣の絆  作者: 斎佳奈
富士編
PR
59/73

前夜

予約されていたキャンプ地は湖畔沿いの眺めの良い区画だった。悠真がテントを取り出した。


「まずはテントを張りましょう。生徒達も手伝って下さいね」


「「はーい!」」


子供達が一斉に返事をして早速一緒に設営を始めた。


「最近のテントは設営も楽になったな。昔は地面に杭を打ったり、重いポールを布に通したりして大変だった」


巌が呟いた。


作業は思ったより早く終わった。気付けば湖畔に五張りのテントが並んでいた。荷物をテントへ運び込んだ後、皆が自然にピクニックテーブルの周りに集まった。


「夕食までは少し時間がありますね」


悠真が辺りを見回した。


「せっかくですし、少しお散歩しましょうか」


子供達が真っ先に悠真の後をついていく。大人達はそれぞれ忙しそうにしているが、香月は何となく手持ち無沙汰だったので付いて行くことにした。


悠真を先頭に、一行は湖畔の道を歩き始めた。しばらく歩くと、不意に脇から声が掛かった。


「藤崎先生!」


悠真が足を止める。


「これは浜崎会長。お久しぶりです」


青龍の里で出会った浜崎浩一だった。


「皆さんもお元気そうで何よりです」


浩一は香月達にも軽く会釈する。


「悠真君も、すっかり立派になりましたね」


「いえ、まだまだです」


悠真は照れくさそうに笑った。


「宗厳先生に紹介した頃が懐かしいですよ」


「その節は、お世話になりました」


浜崎は「では、また」と手を振り、人混みの中へ戻っていった。


「おや?」


今度は向こうから見覚えのある男が歩いてきた。


「あ、商店街の!」


香月が声を上げる。


「おう。やっぱり来とったか」


北野小次郎は笑いながら手を挙げた。悠真が尋ねる。


「鉄斎さんも来てるんですか?」


「来とるで。同じキャンプ場や。兄貴も向こうの区画におる」


小次郎は別の方向を指差した。


「宵司さんも来とるし、商店街からは俺ら三人やな」


香月が驚く。


「皆さん来られてたんですね」


「こんなん十年に一度あるかないかやからな。せっかくやし顔くらい出さんとな」


生徒達に気づくと、小次郎は軽く手を振った。


「じゃあ、また後で顔出すわ」


「はい。また後ほど」


再び歩き始めると、一人の女性が足を止めた。


「藤崎先生!」


悠真が振り返る。


「お久しぶりです」


「お元気そうですね」


女性は嬉しそうに笑った。


「先生のおかげで、結界師になれました」


悠真は少し驚いたような顔をする。


「私のおかげ、とは?」


「覚えていらっしゃらないかもしれませんけど、もう諦めようと思っていた時、先生が『焦らなくていい。君の力を必要としている人は必ずいる』って声を掛けてくださったんです」


女性は照れくさそうに笑った。


「先生のおかげで、結界師になる夢を叶えることができました」


悠真も穏やかに微笑む。


「それは、あなた自身が頑張った結果ですよ」


「ありがとうございます」


女性は深く頭を下げた。


「それでは、失礼します」


香月はその後ろ姿を見送りながら、小さく呟く。


「先生、本当に知り合いが多いんですね」


悠真は少し照れたように笑った。


「長く続けていると、自然とこういう機会も増えるんですよ」



キャンプ地へ戻ると、あちこちの炊事場から夕食の支度をする音が聞こえてきた。


「そろそろ私達も始めましょうか」


陽奈が立ち上がる。


「今日はカレーですよ」


「やった!」


康太が嬉しそうに声を上げた。


「それじゃあ、じゃがいもとにんじん、それから玉ねぎを洗って切って下さい」


陽奈の一言で、それぞれが自然に持ち場へ散っていく。


「私は何をすればいいですか?」


「じゃあ香月さんはお米をお願いします」


「はい」


子供達も皮をむいたり、食器を並べたりと、それぞれ出来る仕事を手伝っていた。


「うわっ。玉ねぎが目に染みる」


智樹が泣きそうな声で言うと、千春が励ます。


「頑張って。半目にするとマシになるよ」


やがて炊事場にはカレーの香りが漂い始めた。


皆で囲んだ夕食は、いつもより少し賑やかに感じた。食事が終わる頃には太陽がほとんど森に沈み、湖が茜色に染まっていた。


「明日の朝は集会です」


悠真が皆を見回す。


「今日は皆さん、早めに休んで下さい」


「「はーい」」


子供達の元気な返事が夜のキャンプ場に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ