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幻獣の絆  作者: 斎佳奈
里巡り編
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ただいま

寺へ戻ったのは夕方だった。見慣れた山門が見えた瞬間、香月はどこかほっとした気持ちになった。


境内へ足を踏み入れると、真っ先に声が飛んできた。


「香月姉ちゃん!」


康太だった。その後ろから千春や拓也、智樹も続いていた。


「おかえりなさい!」


「おかえり!」


口々に声が飛ぶ。香月は思わず笑った。


「ただいま」


その言葉が自然に口をついて出た。


「お土産です」


香月が桃太郎のイラストが描かれた紙袋を子供たちに差し出す。


「きびだんご!」


康太が目を輝かせた。


「桃太郎だ!」


子供たちはさっそく袋を覗き込んでいた。



その日の夕食は、いつも以上に賑やかだった。里で見たもの。食べたもの。温泉の話。


子供たちからは寺であった出来事が次々と報告される。話題は尽きなかった。香月は時折笑いながら耳を傾ける。気付けば食卓を囲む時間が、以前よりずっと自然に感じられた。



夕食後。事務所には宗厳達と教師陣が集まっていた。


宗厳は今回の旅で見聞きしたことを順を追って説明した。全国各地で起きている異変。各地の龍脈の乱れ。協会の動き。そして数か月後に予定されている富士での大規模な結界修復。説明が終わると、しばらく沈黙が流れた。


最初に口を開いたのは悠真だった。


「状況は思っていた以上に切迫していますね」


宗厳は頷く。


「楽観できる状況ではないのう」


静子も表情を引き締める。


「こちらも訓練内容を見直した方が良さそうですね」


「そのために来たんじゃ」


宗厳は湯呑みを置いた。


「結界を扱える者はできるだけ育てておきたい」


そして悠真へ視線を向ける。


「特に香月はこれから伸びるじゃろう」


悠真は黙って耳を傾ける。


「今回の旅で確かな手応えがあった。ここから先は訓練次第じゃ」


「分かりました」


悠真が頷く。宗厳は続けた。


「康太もじゃな」


巌が腕を組む。


「まだ荒いですが、伸びています」


「そうじゃろうな」


宗厳は静かに言った。


「明日から特訓を強化する」


全員が頷いた。


富士まで残された時間は多くない。そのことを誰もが理解していた。



その頃。香月は客間の外にある縁側へ腰を下ろしていた。お風呂上がりの火照った体に、夜風が心地良い。

遠くから子供たちの笑い声が聞こえてくる。康太の声も混じっていた。香月は小さく目を細める。


本当の意味で物事が動き出すのは、これからなのかもしれない。そんなことを考えながら、静かな夜空を見上げた。

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