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幻獣の絆  作者: 斎佳奈
里巡り編
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帰る場所

家へ戻ると、宗厳たちは居間で茶を飲んでいた。向かいに腰を下ろす。


「どうじゃった?」


宗厳が尋ねる。香月は少し考えてから答えた。


「何かを、感じました」


宗厳が静かに頷く。


香月は鏡の前で感じたことを話した。今まで一つにしか感じられなかった流れが、二つに分かれて感じられたこと。互いに絡まりながら存在していたこと。


話を聞き終えると、宗厳は腕を組んだ。


「やはりのう」


由里子も頷く。


「それだけはっきり感じられたなら取っ掛かりとしては十分ですね」


宗厳は香月を見る。


「ここから先は訓練あるのみじゃ」


祖母も静かに頷いた。


「昔の巫女はな、力を繋ぐ役目をしとったそうじゃ。力を強くすることもあれば、逆に整えることもあった。複雑に絡まった力をほどいて、本来の形へ戻すこともできた」


祖母は少し笑った。


「もっとも、私にはできんけどね」


香月はふと思いを馳せた。玄武の地の奥深くから伝わってきた大きな流れ。青龍の海と潮の流れ。白虎の空気の流れ。そして麒麟が人を、力を、繋ぐ。


今まで旅の中で感じてきたことが、全てひとつに繋がったように感じた。



「次は朱雀へ向かう予定じゃったが、予定を変えるかの」


由里子が顔を上げた。


「寺へ戻るんですか?」


「うむ」


宗厳は頷く。


「香月はしばらく訓練に集中した方が良い。ここまで見えたのなら、後は伸びやすくなっとるじゃろう」


清志も頷いた。


「僕もそう思います」


香月は少し驚いた。まさか予定を変えるとは思わなかった。


だが宗厳は真剣だった。由里子も清志も当然のように頷いている。それだけ重要だということなのだろう。



夕刻が近づく頃、宗厳が立ち上がった。


「そろそろお暇じゃの」


香月は祖父母へ頭を下げた。


「今日は、ありがとうございました。お会いできて嬉しかったです」


祖母が微笑む。


「こちらこそ来てくれてありがとう」


祖父は腕を組んだまま頷いた。


「また来い」


短い言葉だった。少し間を置く。


「秋は神楽の時期じゃ」


祖母がくすりと笑う。


「おじいさん、今でも毎年舞うんじゃ。香月さんに見てもらいたいんじゃよ」


「余計なこと言わんでええ」


祖父が顔をしかめた。香月が答える。


「はい、是非また来ます」



麒麟の里での滞在を終えて、東京行きの新幹線に乗る。見慣れぬ街並みが目まぐるしく後方へと置き去りにされていく。香月は窓にもたれた。頭の中に様々なことが浮かぶ。父と母のこと。祖父母のこと。力のこと。そして寺のこと。


康太、悟、悠真、静子、千春、沙耶香、寺のみんな。離れていたのはほんの1週間ほどだ。それなのに、なぜだろう。もうずいぶん長い間会っていないような気がした。香月は小さく息を吐く。


知らない間に、あそこは自分の帰る場所になっていたのだ。

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