3(終) 「隠れスタグフレーション」が進んでいく可能性
◇スタグフレーションは起き始めている
筆者:
今回の最後の項目では今後起こりうるというか起こりつつある「隠れスタグフレーション」について語っていこうと思います。
質問者:
何で「隠れ」が付いているんですか? そもそもスタグフレーションってどういう状況なんですか?
筆者:
スタグフレーションというのは景気後退と物価高が同時に起きる状況を意味します。
景気後退や不景気の場合は本来であれば物価は下がるのですが、供給力不足による物価高が起きるという事です。
実際のところ今の日本では、総務省が発表した直近の家計調査(2人以上世帯)によると、26年5月に発表された3月分の実質消費支出は前年同月比2.9%減となり、4ヶ月連続のマイナスを記録になっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA116VD0R10C26A5000000/
需要が下がりながら物価高は止まらない――限りなくスタグフレーションに近いと言えます。
現状ナフサ不足が多くの企業に直撃していますが、
企業にはやはり「赤字を出して倒産するわけにはいかない」という強烈な損失回避バイアスが働くために、「ナフサ高騰によるコストを価格に転嫁しなければ、企業生命が絶たれてしまう」と言う形で対応することになると思います。
それに対して消費者は給料も上がっていないのにそれ以上に値上がって買わなくなるという「デフレマインド」になっていっていると思います。
しかし、売れないからと言って企業は価格を下げるわけにはいきません。
売れば売るほど赤字が膨らむという状況は事業をやらない方がマシだからです。
この「売れないのに値上がり」という状況はナフサ不足が解消されなければ解消されることは無いのです。
イノベーションによる革新と言うのも短期間では期待できないでしょう。
質問者:
ナフサの供給力不足が、市場の原理である需給バランスの問題では無くなるという事なんですね……。
筆者:
ただ、今の日本の状況とスタグフレーションの定義と決定的に違うのは「賃金は上がっている」という事です。
それは好景気からでは無く日本特有の人口減少(特に現役世代が減少)に伴う人手不足に伴い人材の争奪戦になっているからです。
離職を防ぐための賃上げ――いわゆる「防衛的賃上げ」と言われており、中小企業の多くの場合は儲かっているから賃上げが出来ているわけでは無いのです。
そして人を雇うことが出来ていない中小企業は倒産しており(人手不足倒産と呼ばれている)、日本の企業構造全体に変化が生れています。
ただ1965年のイギリスにこのスタグフレーションという用語は出来たとされているので、60年以上経った今、人口減少社会の日本の中で定義が変わってもおかしくは無いと思いますけどね。
また、政府と日銀は「景気拡大が続いている」としているので、仮に賃金の上がり方が止まったとしてもスタグフレーションと認めることは無いと思われます。
質問者:
確かに物価高で景気後退それも物資不足から――その条件は整いつつあると言えますね。
しかし、用語のインパクトがあまりにも悪いために認める可能性はゼロに近いという事ですか……。
◇統計上見えにくい構造
筆者:
ここで僕が「隠れ」と先に付けている意味について説明したいと思います。
現在物価高は「落ち着いている」状況なんです。
26年4月の消費者物価は1.4%上昇と3カ月連続2%割れになっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA216700R20C26A5000000/
生鮮食品を除く食料は4.1%と品目の中では突出して上がってはいるものの、9カ月連続で上昇率が縮小しているようです。
質問者:
筆者:
ここで以前僕が調べたことで「同一の商品」とする定義について確認したいと思います。
商品名が変わっても品質が同じであれば同一の商品として扱われるのですが、
https://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm ※このページのF―1の解答
逆を言えば、
「品質を換えてしまえば違う商品としてカウントされ、物価上昇から除外される」
※詳しくはこちらに書いてあります。
https://ncode.syosetu.com/n3753kb/
質問者:
あ! もしかすると今はナフサ不足で品質が変更される可能性が高いですから、「違う商品」としてカウントされるかもしれないという事ですか!
筆者:
大正解です。
更に同じような品質で作られる住宅などは「受注を中止」と言う事態にもなっています。
しかしそうやって売買が行われなければ価格がそもそも判定される機会すら無いので「上がった」と判断されることもありません(違うもので代替えした場合それはそれで”品質の変更”扱いになる)。
ナフサ不足の事象は逆に「物価高に反映されない」と言う珍事としてデータ上は判定されてしまうのです。
※住宅に関しては新築では無く既にある中古住宅が売れる可能性が上がります。
◇「好景気」に見せかけて利上げをしたい日銀
質問者:
確かに供給がストップすればそもそも売ることが出来ませんからね……。
筆者:
本来であれば柔軟に定義を変更するべきだと思うのですが、大抵変更する場合は「政府の増税理論に有利」にするために変更するだけです。
1で見たように「持ち家の帰属家賃を除く総合」にすることで物価高を無理やり抑制することをしているぐらいですからね。
質問者:
なるほど……。小手先の統計の仕方を変更するだけの見せかけ上の改善だけで、本質的に国民の生活を改善してくれないという事ですか……。
筆者:
ただ、数値上ほどではないにせよ品質の根本を変更できない商品は値上がり、物価高は間違いなく進行するんです。
そしてその後、「利上げ」と言うのも実行しやすくなるんです。
利率を「標準的」と言われる2%前後にしたいという欲求を日銀から感じられます。
しかし、経済成長率以上に利率を上げてしまえばそれこそ景気後退になります。
ただ、「好景気演出」は引き続き行われるでしょうから強引にそこまで上げてしまうでしょうね。
ですが、好景気でもない状況で利上げをしてしまえば更なるコストプッシュインフレは加速し、利息分が価格転嫁されてさらにインフレは加速するでしょう。
利上げはさらに借り入れをすることが出来なくなり、日本経済が見た目以上に萎んでいきます。そして変動金利で住宅ローンを組んでいる方々は生活が困窮していきます。
質問者:
コスト高のコストプッシュインフレと景気の好循環のディマンドプルインフレをメディアが区別してくれないのは本当に問題ですよね……。
筆者:
メディアも日本を破壊したいことに加担したいと思っているでしょうから、日本人が個々人で構造的問題に気づいていくしか無いように思いますね。
ただ、僕のようにマニアのような人間でない限り、逐一定義だの他のデータだの細かいところまで読み込まないことから、なかなか気づくことは難しいのかなと思います。
質問者:
我々庶民はこの「隠れスタグフレーション」の状況下でどう対策したら良いんでしょうか?
筆者:
まずは密かに買いだめておいた方が良いでしょうね。将来的に値上がることは目に見えているので、特に缶詰など賞味期限が長い商品を買った方が良いです。
いつもより1ずつ多く買い足していき備えた方が良いでしょう。
あとは、少しでも場所があるのなら家庭菜園をして野菜などを自活した方が良いです。
肥料なども値上がるのであらゆる農作物は値上がることが予想されますからね。
インフレが目に見えているのであればNISAなどで少しでも投資をした方が良いでしょうね。
景気が良い悪い関係なくインフレや財政出動を各国が行うだけで株価が上がっていきますからね。
質問者:
ちょっとずつ国民が締め上げられている感じなので、
筆者:
何でも簡単に一発逆転という事は難しいですし、現実的ではありません。
少しずつの地味な積み重ねが大事なのかなと思います。




