if-1 網上
これは、「レセプター」が大型ビジョンをハックしていない、「もしも」の世界線……
新緑の木々が生い茂げ、心地よい風が吹く初夏。
自衛隊宿舎の中庭で、律子、北上、ハヤト、大門、ミサオが何かを準備している……
「北上くん、ハヤトくんはコンロに火をつけて、大門くんは肉の下処理、ミサオと私は野菜を切るから手伝って」
「うぃ~っす」
「はい!」
どうやら五人で「バーベキュー」を始めるようだ。
律子の号令の下、手際よく作業をこなす四人。
準備が整い、肉を焼き始める。
ジュゥゥ……
「う~、うまそう~」
ハヤトがよだれを垂らして見ている後ろから、大門が大量の肉をもって現れた。
「この近くで、新しく『お肉屋さん』ができるって聞いて、そろそろ『オープニングセール』をやるだろうと思って見張っていたんだ。
結構いい肉をたくさん買ってきたから、今日はみんなでたらふく食べられるよ」
「さすがは大門、素晴らしい分析力だ」
トングを持った北上が、うなずきながら感心している。
「さすが大門さん、『上ホルモン』に『上ミノ』、『ジンギスカン』まであるじゃないですか!」
玉ねぎを切りながら、涙目のミサオが叫ぶ
「野菜もたくさん切ったし、『焼きそば』と『ウインナー』もあるわよ」
律子が、トレーにいっぱいの野菜と焼きそばの麺とウインナーを持ってきた。
「うお~、スゲェ―!」
「ハヤト、俺たちは『命をいただく』んだ。
残さず、感謝して食べろよ」
「わかってるよ……北上、お前はオレっちの母ちゃんか!」
ジュウウゥゥゥ……
コンロの網の上いっぱいに、野菜とお肉が並ぶ
「もう我慢できねぇ、いっただき……」
ハヤトがお箸で肉をつまんだ、その時――
バシッ
律子が自分のお箸で、ハヤトのお箸を抑える
「えっ」
「ハヤトくん、その『カルビ』はまだ半生よ、あと『13秒』待ちなさい」
「え~~?」
「そして焼肉には食べる順番があるわ……
まず『野菜』から。野菜に含まれる食物繊維が体内で糖質や脂質の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑え、『インスリン』の分泌が少なくて済むわ」
「は、はぁ……」
「次に『タン塩』よ、味の濃い肉を食べた後だと、さっぱりとした淡白なタンの味を感じづらくなる」
「……」
「そして前半おすすめは、赤身系のロースやハラミ、最期に王道の『カルビ』よ。
最初から『タレ系』や『味噌タレ系』を焼くと、網がすぐに汚れてしまうから、『イチボ』『ミスジ』や『ホルモン』などは後半に取っておくのがいいわね」
全員、あっけに取られている……北上以外は。
「さすがは律子先輩だ……『網上の戦術女王』の通り名は、伊達じゃない。
これもある意味『専守防衛』、みんな、律子先輩の指示通りに」
「北上、こんなとこでそんなうまいこと言わなくていいから!」
「この分だと、ジンギスカンまで辿り着けないかも……」
「自信満々に説明している律子先輩も、素敵です……」
結局、律子の長い説明により、三人はいつもの半分くらいしか食べられなかったという……
(残りはちゃんと、次の日の晩御飯のオカズにして完食)




