if-2 奉行
これは、「レセプター」が大型ビジョンをハックしていない、「もしも」の世界線……
『冬』……自衛隊宿舎の外は、幾万もの『白い結晶』が降り注ぎ、辺りは一面『白い絨毯』が敷き詰められている。
自衛隊宿舎の部屋で、律子、北上、ハヤト、大門、ミサオが何かを準備している……
グツグツグツ……
部屋の真ん中には、大きな『鍋』が準備されている。
「北上くん、ハヤトくん、鍋の火力を調整して。
ミサオ、まず鍋は出汁が出る魚類や鶏を先に入れて」
「はい」
「次は火の通りにくい『根菜系』、そして崩れやすい『豆腐』や『しいたけ』よ」
「はい」
律子の指示に従い、手際よく鍋を準備する四人。
「大門くんは肉の下ごしらえをお願い。
『しらたき』は、カルシウムが含まれていて肉を固くしちゃうから、離して入れてね」
「わかりました」
ハヤトが、ビールジョッキを片手に、乾杯の音頭をとる
「ではでは、『防衛大カードゲーム同好会プラスワン』の『大鍋パーティ』を開催しまーす。かんぱーい!」
「かんぱーい!」
ゴクッゴクッゴクッ……ぷはぁ!
「ようし、ではさっそく……」
ハヤトが鍋にお箸を入れようとした、その時――
バシッ
大門が自分のお箸で、ハヤトのお箸を抑える
「えっ、またこのパターン?」
「ハヤトくん、女性もいるんだ、鍋からとるときは『取り箸』を使うのがマナーだよ」
「お、おう、そうか……」
ハヤトが自分の小鉢に、オタマでスープを入れようとすると……
「ハヤトくん、まずは野菜をを先に、その後に魚や肉を入れた方がゴージャスに見える。スープは最後で」
「そ、そこまで気にしなくても……」
そう言いつつ、また自分のお箸で鍋をつつこうとした、その時――
バシッ
「ハヤト、言ったはずだ、『取り箸』を使えと」
「だ、大門、呼び捨て……」
そのやり取りをみて、全員呆然とする……北上以外は。
「フッ、さすがは大門だ。
俺や律子先輩に隠れてはいたが、大門の通り名は『怒れる河馬』……
自分がこだわっているものに対しては、俺ですら止めることはできない」
ミサオが、タブレットを見ながら話す
「『怒れる河馬』……これリアルに一番怖いです。
カバさんは実はアフリカで最も人を殺める動物の一つ、普段はのんびりしているけど、一たび一線を越えると、地上で最恐の『猛獣』となります」
律子も冷静に、『取り箸』でみんなの分をよそいながら、説明する
「対戦相手からも密かに、『大門くんは怒らせちゃいけない』と言われていたの、知っているわ」
「大門、『鍋奉行』だったのか……」
結局、ハヤトは大門に叱られ、泣きながら鍋を食べる羽目に……
(次の日、大門はいつも通りに戻っていた……)




