16-4 墓標
最終話まであと2話です。お楽しみに!
「もう、『切り札』を使うしかないか……」
「北上、『切り札』って?」
「俺たちの連携技、『マイクロブラックホール』だ」
「あの『メビウスの輪』から脱出するとき使った連携技か」
「確かに、あの威力ならレセプターを倒せるかもしれない……」
「今ならレセプターは空中にいる。
『マイクロブラックホール』を空中に放つことができれば、俺たちや、街への被害も最小限で済む」
三人は、向かい合い、お互いを確認する。
「大門、行けるか?」
「うん、僕は大丈夫、ハヤトくんは?」
「へへっ、まかしとけ、まだ『誘電』できる位の電力は残っている。
レセプターの、慌てふためく顔が目に浮かぶぜ」
三人とも、レセプターの方を見て、覚悟を決める。
「こんな時、きっとミサオならこう言うだろう……」
「「「命があれば、何とかなる!」」」
三人は、同時に叫んで、笑い合う。
「これでダメなら、もうほとんどレセプターに対抗できる手段は残っていない……これで決めるぞ」
「了解!」
三人は、少し離れて、それぞれ向かい合う。
「『人身掌握術、ヒトカゲ』!」
ズオオオオオオ……
三人の中心で、大門の『ヒトカゲ』が発動、重力の塊が、どんどん大きくなっていくのがわかる
「『人身掌握術、ヒトスジ』、誘電!」
ジジ・ジジジジ……
『テレビギルド』の局内の電気、そして周辺のビルの電気が消えていく。
ハヤトが『誘電』で電力を集め、それを重力の塊に注ぐ
「『人身掌握術、ヒトナミ』!」
北上が、全エネルギーが『一点』に完全に重なるような『定常波』へ調律……
ゴゴゴゴゴゴ……
テレビ局全体が、共振して揺れている……
レセプターも、訝し気に三人を見下ろす
「いったい何を始めるつもりだ……?」
「ハヤトが収束した電撃による『エネルギー加速』で、粒子の運動エネルギーを光速近くまで加速して、『シュバルツシルト半径』に届かせる……」
ガガガガガガ……
三人の周りは、共振で揺れ、細かいものは重力の塊の中に消えていく
その重力の塊を、三人の力で、上の方へ
「よし、これなら!
いくぞ! 連携技、『マイクロブラックホール』ーーーーッ!」
ブワアァァ……
放たれた、黒い重力の塊は、周りの物を吸収しながら、そして大きくなりながらレセプターの方へ飛んでいく!
「いっけーーーーっ!」
レセプターは、最初少し驚いた様子だったが、すぐに口元に笑みが零れる
「フッ……『人身掌握術、ヒトフデガキ』・『メビウスの輪』!」
キュウゥゥン……
レセプターが、空中に『メビウスの輪』を描くと、三人が放った『マイクロブラックホール』を呑み込んだ!
「なにぃっ!?」
レセプターは、右手を前に出し、指を鳴らす
「『掌握』、だ!」
パチンッ
シュンッ
『マイクロブラックホール』を呑み込んだ『メビウスの輪』は、そのまま縮小していき、消えた。
レセプターの周りは、書類などが風に吹かれて舞っているが、最初から何もなかったかの如く、静まり返っている……
「そんな、バカな……」
「いったい、どうやって……?」
レセプターは、驚いて固まっている三人に、言い放つ
「『人身掌握術、ヒトフデガキ』の奥義、『メビウスの輪』で、お前たちの『マイクロブラックホール』を別空間へ封印した。
別空間だから、その威力はこちらの空間には作用せず、そのまま空間ごと圧縮して、消去……と、まあそんなところだ」
「くそっ」
ハヤトは、悔しさからか、地面を拳で殴る
大門は、膝から落ち、ガックリうな垂れる
「強すぎる……」
さすがの北上も、今回ばかりはショックを隠し切れない
「……旧人類にしては、素晴らしい連携技だった、これならどんなやつだろうと倒すことができるだろう……相手が私ではなかったらな」
三人は愕然とする、言い返すこともできない
「あんなやつ、いったいどうやったら倒せるんだ……?」
「もう、僕たちじゃ……彼は、やっぱり『神』なのかもしれない……」
「大門?」
「僕たちは、彼に逆らっちゃいけないのかも、彼の言う通りにすれば……」
大門は、心が折れかかっている……
「違う」
「北上くん?」
「『神』は、『希望』を持って前に進むものを、決して見捨てたりはしない。
あいつは、レセプターは、人類を『害獣』とみなし、『駆除』しようとしている……断じてあいつが『神』であるはずはない」
空中で、話を聞いていたレセプターが、北上たちに答える。
「私は別に『神』になろうとしているわけではない。
私はあくまで『地球の代弁者』であり、『地球側の新人類』……
私は地球の意思を伝え、地球の意のままに事を進めるのが目的、それが存在理由だ」
「くそっ、なんなんだあいつは? オレっち達は、いったいどうすればいいんだ?」
「もう、僕にも答えがわからない……」
「フッ……」
レセプターは、一瞬クスリと笑うと、集中し始める
「『人身掌握術、ヒトフデガキ』、『メビウスの輪』!」
キュウゥゥン……
空中に『メビウスの輪』を描く
「な、なんだ……?」
ヒュン、ヒュン、ヒュン……
『メビウスの輪』の中から、なにか音が聞こえる
「『メビウスの輪』の中は、表と裏がつながっている空間だ。つまり真っ直ぐ進んでも、永遠に同じ場所を回り続ける」
「なんだ? あいつ、いったい何を言っているんだ?」
「今この『メビウスの輪』の中で、二つの荷電粒子を飛ばしている。
『ヒトオシ』と『ヒトットビ』を使って、加速させながらな……お前なら、これが何を意味するかわかるか北上?」
北上は、言われてハッとする
「まさか、『サイクロトロン方式』……?」
『サイクロトロン』……
イオンを加速するための円形加速器。
磁場と高周波電場を組み合わせた装置で、荷電粒子を光速近くまで加速、衝突させることで、さまざまな実験や研究に使われている
「この荷電粒子を、光速近くまで加速させ、1秒間に数百万回正面衝突させることで、局所的に超高密度のエネルギー状態を作ると
『マイクロブラックホール』が誕生する、理論上はな」
「な、なんだって!?」
「レセプターが、『マイクロブラックホール』を……?」
「フッ……まさか『マイクロブラックホール』は、自分たちだけの技だとでも思っていたのか?」
レセプターの両手の中に『メビウスの輪』が浮かび、その中を光の粒が飛んでいるのが見える
「くっ……俺たちの『マイクロブラックホール』は、俺が調律して威力を抑えていた。
レセプターのあのやり方で、そのまま放ったら、その威力は『原爆』並み……
俺たちとこのビルどころか、この街がすべてが消し飛ぶほどの威力だ」
「なにーっ!?」
「そ、そんな……」
「フハハハ、焼野原となったこの街が、お前たちの『墓標』となる、よかったな、『うらやましいぞ』」




