15-2 色欲
ハヤトVSチャイナドレスの女
ハヤトは、空中から降りてきた。
ガクッ
「くっ……」
「あら、アナタもう限界が近かったのね……
そんなんじゃ、アタシに一度でも捕まったら、終わりよ」
「へっ、やれるもんなら、やってみろ!」
「言われなくてもやるけどね! 『ヒトニギリ』!」
ドガァッ!
ドガァッ!
壁や床から、巨大な『腕』が生え、ハヤトに襲い掛かる!
ハヤトがいた場所から、土煙が上がる……
「ヒャッホーーッ!」
ガラガラガラーーッ!
潰されたと思ったハヤトは、重い荷物を運ぶ際の車輪つきの『台車』に乗って滑空する!
「なにっ!?」
一瞬で、ハヤトはチャイナドレスの女の後ろをとる。
「どうだ、こんなの『ブルーインパルス』の戦闘機『T-4ドルフィン』に比べれば、オチャノコサイサイだぜー!」
「しまった!」
ハヤトは、チャイナドレスの女の腕を掴み、術を発動しようとするが……
「これは……?」
「!」
チャイナドレスの女の回し蹴り!
ドガァッ!
「ぐっ……」
「『人身掌握術、ヒトニギリ』!」
ドガァッ!
「うわあぁーーっ!」
ハヤトは捕まってしまう。
「アンタその腕、『義手』だったのか……?」
ハヤトが女の腕を触ったとき、その感触は生身の『腕』ではなく、明らかに作り物の腕だった。
「そうよ」
チャイナドレスの女は、捕まえたハヤトに近づき、ハヤトを睨みつける。
「アタシは中国の重慶出身。
当時の重慶は、とにかく治安が悪くてね、アタシは家族と買い物に来て、車で待っていた時に窃盗団に車ごと搾取されたのよ」
「車ごと……? それ誘拐じゃないか」
「その当時は珍しくもなかったわ……
アタシはそのまま、人身売買組織に引き渡され、日本に渡り、『性奴隷』として売られたわ」
「せ、『性奴隷』……」
「その時に、この腕が邪魔だと言われ、切り落とされた」
「……ッ!」
「クソジジィどもの精液とションベンにまみれたアタシのところに、レセプター様が現れ、アタシに力をくれた。
アタシのこの『人身掌握術、ヒトニギリ』は、アタシの憎しみが具現化したモノよ……」
チャイナドレスの女の『ヒトニギリ』に、力が入る。
「ぐああぁぁっ!」
「アタシを犯して、弄んだジジィども、35人、探し出してきっちり全員握りつぶしてあげたわ。
傑作だったわよ、ションベンを漏らしながら、アタシに命乞いするあの顔……アナタにも見せてあげたかったわ、フフ」
「……うう、うぅ、ぐすっ……」
ハヤトは、下を向きながら、泣きだした。
「何? 今さら同情? ふざけないでよ。
アナタたちが、へらへら青春を謳歌しているその裏で、アタシは、この世の地獄を体験していたのよ!」
ハヤトが、泣いてグシャグシャになった顔を上げる。
「痛かっただろう、辛かっただろう……アンタが、この世界を恨むのは当然だ。
こんなにつらい目にあっているのに、誰も助けに来てくれない、悲しかっただろう……
『絶望』、『諦め』、『憎悪』……
でも、オレっちは、それをわかってあげることはできない……ゴメン」
ハヤトは泣き続ける
「何それ? それで逃がしてもらおうと思ってるの? 残念、アタシはそんなに甘くないわ!
さあアナタも、あのクソジジィどもと同じく、ションベン漏らしながらアタシに命乞いしてみなよ! ホラホラー!」
チャキ……
ハヤトは、懐から拳銃を取り出し、チャイナドレスの女に銃口を向ける。
「オレっちは、アンタを許すことはできない……
アンタは、人を殺し過ぎた。 罪を犯したら、罰を受けなきゃならない」
「はぁ? 今さら拳銃? ヒューマンスレイヤーのアタシに、そんなもの通用するわけないでしょ? 気でも触れたのかしらぁ?」
チャイナドレスの女は、余裕の構え。
ダンッ
(えっ……何これ? 避けられない……?)
バスッ……
拳銃の弾は、チャイナドレスの女の眉間を貫く。
バタッ
女は、その場で倒れる。
「……この『拳銃』は、ミサオっちが、オレっちに託した、『ヒトアタリ』の能力が付与された拳銃だ。
どんな防御をしようとも、必ず当たる、たとえヒューマンスレイヤーのアンタでもな」
ハヤトを捕まえていた『ヒトニギリ』の腕は、霧散して消えていく。
ガチャンッ
ハヤトは、持っていた拳銃を地面に落とす
自分の、震える右手を、左手で抑える……
「くそっ、オレっちに、女の人を撃たせないでくれよな……くそぉっ」




