15-1 消去
「さあ、『手術』の開始だ!」
レセプターが、外科医師のように両手を掲げる。本当に手術をするかのように。
「くるぞっ!」
三人は戦闘態勢に。
「『人身掌握術、ヒトキリ』!」
バババババーーーーッ!
複数の真空の刃が、三人に向かって放たれる!
即座に三人は散開!
「『人身掌握術、ヒトタチ』!」
バシュッ!
収束された巨大な真空の刃が、ハヤトに向かって飛んでいく!
「危ねぇっ!」
ザンッ!
一瞬止まったハヤトの目の前で、真空の刃が本棚を真っ二つにする。
ハヤトの前髪が、少しだけ切れて落ちる。
「こいつ、まるでオレっちが避ける場所を、最初から知っていたみたいだ」
「『人身掌握術、ヒトニギリ』!」
ドガァッ!
ドガァッ!
そこら中の壁から巨大な『腕』が生えてきて、襲ってくる!
「くっ、あんなのに握られたら、ひとたまりもないぞ」
「『人身掌握術、ヒトツキ』!」
ジャキーンッ!
スキンヘッドの男の体中から、鋭いトゲが何本も出てきた!
「うおおぉぉーーっ」
スキンヘッドの男は、トゲを出したまま、回転しながら突進してくる!
ガガガガガガーーーーッ!
「おいおいおいおい!?」
丸まったハリネズミのように、巨大なトゲ付きのボールは、
展望室の壁や床を削りながら襲い掛かってくる。
逃げながらも、術のタイミングを計っていた大門。
「そこだっ……『人身掌握術、ヒトカゲ』!」
ズドンッ!
大門が『ヒトカゲ』で、スキンヘッドの男を抑える
「ど、どうだ!」
「『ヒトキリ』!」
バババババーーーーッ!
「危ないっ!」
北上が、大門を抱え横に飛ぶ!
ゴロゴロゴローー
「大丈夫か? 大門」
「うん、ありがとう北上くん」
一旦攻撃は収まる……
レセプターは少し下がり、『チャイナドレスの女』と『スキンヘッドの男』が前に出る。
「さすがね、ではこちらも『連携』よ!」
チャイナドレスの女がそう叫ぶと、スキンヘッドの男が、また『トゲのボール』に……
ギュルルル……
「連携技、『ヒトニギリ+ヒトツキ』……キャノンボール!」
ガッ!
『ヒトニギリ』の手が、『ヒトツキ』のトゲつきのボールを掴んで、勢いよく放り投げる!
ビュンッ!
ガンッガンッガンッ!
スキンヘッドの男は、高速回転しながら、周りの壁で反射しながら飛んでくる!
「これって、『跳弾』!?」
不規則に飛んでくる『トゲ付きボール』に、三人は回避だけで精いっぱい。
ドガァッ!
スキンヘッドは、壁に激突!
ガラガラガラ……
鉄筋コンクリートでできた外壁は、いともあっさり粉々に……
「あんなのまともに食らったら……」
「間違いなく、体中の骨がバラバラになるだろうな」
「ひえ~」
「あいつらに連携させるのは得策ではない、あの『トゲのボール』を抑えられるのは大門だけだ、頼めるか?」
「わかった、やってみる」
「ハヤト、お前は術があと二・三回しか使えない……あのチャイナドレスの女を攪乱して、とにかく逃げ回れ」
「それ、オレっちカッコ悪くない?」
「レセプターは、俺がやる」
北上は、手袋をはめ直す。
「連携させないよう、まずは三人を引き離す、いくぞ!」
「了解!」
三人はそれぞれ走り出す。
「キミの相手は僕だよ! 『人身掌握術、ヒトカゲ』!」
ズドンッ!
「どこを狙っている、オレはここだぞ」
「いいんだよ、これで」
バキバキバキ……
「なにっ?」
スキンヘッドの男の目の前の床が崩れ、大門とスキンヘッドの男は、下の部屋へ落ちていく。
ガラガラガラ……
「ゴホッゴホッ……」
「ここはどうやら、後付けした展示室だったみたいだね……接合部分の作りが少し雑だった、建築法に引っかかっているかも」
「オレたち三人を、引き離す作戦か……?」
「アタシの相手はアナタ? そんなボロボロの体で、アタシの相手がつとまるかしら?」
チャイナドレスの女の前には、ハヤトが対峙する。
「ようは捕まらなきゃいいんだろ? 『ドックファイト』は得意だぜ!」
「『ヒトニギリ』!」
ドガァッ!
ドガァッ!
壁から、巨大な『腕』が生えてくる!
「そこだっ、捕まえた!」
ドガァッ!
土煙が舞う……巨大な腕が見えるが、そこにハヤトはいない。
「ここでした~」
ハヤトは『イオノクラフト』で、空中に逃れていた。
「おのれ……」
レセプターの前には、北上が対峙する。
「……」
「北上櫂、お前の戦いは全て見せてもらった……
非常に興味深い戦い方だった、その知識、心理、『波』の応用……
その『調律』、美しさ、お前はヒューマンスレイヤーになるべくしてなった逸材……のハズだった」
レセプターは、顔に手を当て、残念がる。
「どうだ、今からでも遅くはない、『こちら側』につく気はないか?
旧人類は『害獣』……お前も気づいているのだろう? このままでは、間違いなく『地球』は、『世界』はおかしくなる」
「……」
レセプターは、北上に手を差し出す
「私と共にこい……『初期化』して、『完全世界』となったこの地球で、ともに支配するのだ」
「断る」
レセプターはため息を一つつき、手を引っ込める。
「お前の『完全世界』とやらに興味はない……
確かに、人類は『害獣』かもしれない、だが全員じゃない。
俺の周りには、自分の命も顧みず仲間を助けたり、いじめにも負けず、誰かを守ろうと必死になっているやつがいる」
「……」
「上司の指示に従いながらも、俺たちを気遣ってくれる人もいる……
自分は地獄のような日々を送ってきたのに、今も世界の平和を願うやつもいる」
「……」
「俺は、そんなやつが、たった一人でも残っているのなら、世界は『初期化』するべきじゃないと思う……
俺は、『希望』は捨てない!」
「『交渉決裂』、そうか、残念だよ……
これもきっと、地球が私に与えた『試練』なのだろう。手に入らぬのなら、消去するまで……」
レセプターも戦闘モードに
「さあ、来るがいい『害獣』よ!」




