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【完結】害獣認定  作者: みっど
第14章 表と裏・二つの正解
41/52

14-4 宣告

 レセプターは、展望のガラス窓を見ながら、ゆっくりと移動する。


「地球を、一人の人間と仮定してみよう……実は地球と人間は共通点が多い」

 ①水分量のシンクロ

  地球も、人間も、水分量は同じ70パーセント。

 ②恒常性ホメオスタシス

  地球も人間も、体温や気温を一定に保つ機能(自浄作用)を持つ。

 ③『元素』の構成

  人間の体を構成する主要元素(水素、酸素、炭素、窒素など)は、宇宙の星が爆発した際に作られたもの。 つまり、地球も人間も、元をただせば一緒ということ。

 「どうだ、もし地球がお前たち人間と同じだとしたら、お前たちは地球に、一体何をしていると思う?」


「僕たちが、地球にしていること……?」


「今もお前たちは、ひっきりなしに『石油』や『石炭』、それにさまざまな『鉱物』まで採掘している。

 それは地球にとっては、自分の『血液』や『細胞』を搾取されているのと同じこと」

「『血液』や、『細胞』を……?」


「それに加え、今まで地球はお前たち旧人類をずっと守ってきた。

 空に『オゾン層』を作り、宇宙の放射線から守り、

『地磁気』を使って、『太陽風』や『太陽フレア』から守ったり……」

「どれも、学校の授業で習ったことだ……」


「だが、当のお前たちはどうだ? せっかく地球が作った旧人類の『防壁』を、自ら壊している。こういうのを、なんというか知っているか?」

「……」


「『恩を仇で返す』……だ」

「!」


 三人とも、いや、多分ほとんどの人類がわかっていたこと……

 レセプターの言っていることは、なにも間違ってはいない。

 もし本当に、地球が一人の人間だったとしたら、多分人類は、地球に恨まれても仕方がないのかもしれない……


 ずっと黙って聞いていた北上が、静かに質問する。

「だから、人類を『駆除』すると?

 地球にとって、人類は『害獣』だから……?」


「フッ……」

 レセプターは、テーブルの上に置いてあったワイングラスを手に取ると、グイっと飲み干す。


「質問だ、お前たちニンゲンの、病気での一番の死因は何だ?」

「それは……」

「おっと、答えなくていい、それは悪性腫瘍、つまり『ガン』だ」


悪性腫瘍ガン』……

 日本の病気の死因第一位、『悪性腫瘍ガン』。

 体の中の正常な細胞の遺伝子に傷がつき、異常細胞が増え続ける病気。

 がん細胞は、周囲の組織に広がったり、別の臓器に転移する特徴がある。


「いろんな『ガン』がある、『胃がん』『肺がん』『大腸がん』……『膵臓ガン』など最悪だ、手遅れになることが多い」

「……」

「どれも、勝手に異常増殖し、周りの組織を破壊していく……厄介な病気だ」

 レセプターは、三人の顔色を確認するように、見る。


「私の考えていること、わかるだろう?」

「……」


「そうだ、お前たち旧人類は、地球にとっての『ガン』だ……」

 三人とも、レセプターを睨む。


「『ガン』に一番いい治療法は、外科手術、つまり『切除』だ。

 この私が、お前たちを切除してやろう、この『ヒトタチ(メス)』でな」

 レセプターは、右腕を上にあげる。

 その腕には、『真空の刃』が収束しているのが見える……

 キュウゥゥン……


 その時、北上が一歩前に出る。

「その前に、俺から質問だ。

 レセプター、お前は一体何をしたい? 俺たち人類を『駆除』して、その後どうする?」


『ヒトタチ』はキャンセルされる。

 右腕を下げ、レセプターが質問に答える。

「『初期化フォーマット』……」

「なに?」

「この世界の『初期化フォーマット』だ。

 この世界を、地球の望む姿に初期化する、それが私の望み」

「『初期化フォーマット』?」


「お前たちは『発展』し過ぎた……

 これからは、地球と私が、お前たちもろとも『完全管理』し、地球の望むように、地球のありのままの姿に、元に戻す」

「……『退化』させるというのか、地球を?」

「違う、これこそが『進化』……

 お前たち旧人類のような、利己的で、強欲で、傲慢な『バグ』を排除し、

 戦争も、憎しみも、差別も、不条理もない、『完全世界』『完全な地球』を作る……そのための『初期化フォーマット』だ」


「北上、お前の言ったこと、今ならわかるぜ……こいつには、言葉が通じねぇ!」


 *****


 一日で約230万人の人が訪れる、夜の渋谷ハチ公口。

 そこの巨大な四台の『大型ビジョン』に、レセプターと北上たちの邂逅が映し出されている……


「なんだよこれ! 本当に現実なのか!?」

「いや、私死にたくない!」

「頼む、海上自衛隊の人! 何とかしてくれーーッ!」



 世界は知ってしまった――、『害獣認定』の真の意味を。

 世界は知ってしまった――、自分たちが、地球にとって、『不必要』な存在であることを。

 そして世界は知ってしまった――、世界の命運が、『北上櫂』という一人の男の手に委ねられたということを……


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