13-2 犠牲
「これだけは言っておこう……
自分の命を粗末に扱うものが、世界を平和になんてできるはずもない」
「!」
アリスは、目を見開き、北上さんを睨む……
「私は、私は……」
北上さんは、ゆっくりと、自分の考えを話す。
「お前の言っていることはわかる。確かに俺たち大人は、地球にひどいことをしてきた、『罰』を受けるのは当然だ」
「……」
「だが、レセプターが行おうとしていることは、人類の『駆除』だ。
絶滅させて、『はい、終わり』では意味がない。
罪を犯した人類たちに、犯した罪を理解させ、反省させ、償わせなくてはならない」
「そんなこと……」
言った途中で、アリスはやめた。
きっと最後まで、北上さんの話を聞く気になったんだ。凄い、北上さん……
「死んでしまったらそれで終わりだ。
お前は、反省し、地球のために活動する、生まれ変わった人類を見てみたくはないのか? その『希望』は、まだ残っている」
「う、うう、うぅぅ……」
アリスはガックリ膝から落ち、涙を流す。
「そんな、そんなの無理よ……あの大人たちが、そんな……」
「諦めたら、そこで終わりだ。
やるだけやってそれでダメなら、また違う手を考えてみる。
お前だって、死ぬのが怖くないわけではないのだろう?」
アリスは自分の体を抱きしめて、ブルブル震えている……
そうか、気づかなかった、アリスも死ぬのは怖いんだ。
「大門、もういい、『ヒトカゲ』を解除してくれ」
「えっ、り、了解……」
大門さんは『ヒトカゲ』を解除。
アリスはそのまま動かない。
「よし、俺たちは進もう、もう時間もない」
私たちは、アリスをその場に残し、先へ進む。
まだ『ドブネズミのリンダ』も残っているし、レセプターがヘリコプターに乗ったら、すべてが手遅れになる」
三人が進み、私はその後をついていく、その時――
「私には、この力しかないの……
私にこの力が備わったということは、地球は私にこの術を使えと言っているのよ!」
アリスが立ちあがり、もの凄い形相で私たちを睨む。
「やっぱリ、世界を平和にするには、私が命をかけなくちゃダメなの! お願い、一緒に死んで!」
アリスは、一番近くにいた私を標的にする。
ヒイィィン……
アリスの胸に、ヒューマンスレイヤーの紋章が浮かぶ!
「人身掌握術、ヒトゴロシ!」
バオオオォォォーーーー……
何かどす黒いものが、アリスの体から立ち上のぼり、私目がけて襲い掛かってくる!
「!」
「ミサオっち……っ!」
ガバッ!
私の目の前が真っ暗に。
これは、北上さんの背中!?
バタッ……
私の目の前で、北上さんがうつ伏せに倒れる。
「き、北上さん? 北上さーーーーんっ!」
北上さんは、まったく反応しない、これって……
ハヤトさんが、北上さんに駆け寄る
「大丈夫か、北上……! そんな、心臓が、止まってる――!?」
「えっ!?」
ハヤトさんが、急いで北上さんに蘇生術を施す。
「くそっ、くそっ、北上……一人でかっこつけやがって!」
「北上さん、北上さん、そんな、私のせいで……」
「違う、ミサオっちのせいじゃねぇ!
オレっちたち自衛官の使命は『市民を守る』こと。北上は自分の使命を全うしただけだ!」
ドサッ……
隣で、アリスが倒れる。その顔にはもう、生気がない……
ハヤトさんが心臓マッサージを繰り返すが、北上さんは反応しない……
「ちくしょう、こんなことなら、蘇生術の授業もっとちゃんと聞いとくんだった!」
「ハヤトくん……」
私と大門さんは、ただオロオロするばかり……
「こうなったら……」
ハヤトさんは自分の手袋を脱ぎ、両手を北上さんの胸に当てる。
「ふぅ……『人身掌握術・ヒトスジ……カウンターショック』!」
バシンッ!
北上さんの体が、一瞬弾ける
……が、まだ起きない。
「これは、AED(除細動器)の替わり……? こんなことまで?」
大門さんが、ハヤトさんを見て驚く。
バシィッ
バシィッ
「くそっ……」
北上さんは、目覚めない……
ハヤトさんは、心臓マッサージを繰り返す。
左の壁際にいた、『ドブネズミのリンダ』が、こちらに向かって歩いてくる。
「お前たちは、あのネズミを何とかしてきてくれ、北上はオレっちに任せろ」
「で、でも……」
「大丈夫だ、すぐ追い付くからよ……『北上と一緒に』な」
「……わかった、あいつらにハヤトくんの邪魔はさせないよ、絶対に」
大門さんと私は、ドブネズミのリンダの方へ
ハヤトさんは、北上さんに心臓マッサージと『ヒトスジ』を繰り返す。
「帰って来い北上……こんなとこで死んだりしたら承知しないからな!」




