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【完結】害獣認定  作者: みっど
第12章 優性思想
33/52

12-1 計算

「くうぅぅ……」

「うおおぉぉーーっ!」

「いくぞ、連携技、『マイクロブラックホール』!」


 カアアァッ!

 ズッドオォォーーーーンッ!!

 ガガガガガガガガーー!

 ガラガラガラガラ……


 マイクロブラックホールの『ホーキング放射』により、とてつもないエネルギーの爆散が起こり、『メビウスの輪』の接合部分が、少しほつれる。


「今だ!」

 私たち四人は、その一瞬をつき、見事脱出に成功する


 ドガァーーンッ!

 その威力は凄まじく、ちょうど四階北西に位置していた『下っ端かいぞくん』の頭の部分が、爆風で首からもげてしまう。

 ギギギギギ……

 ガガガガガーーッ!

 ズ、ズズウゥゥン……

 ガシャーーン


 道路に落ちた『下っ端かいぞくん』の頭は、粉々に砕け、中の備品類も道路に散乱する


「た、助かった~」

「生きた心地がしなかったぜ~」

「『母ちゃんのツナマヨおにぎり』、おあずけですね、ハヤトさん」

「ああ、楽しみが残ったぜ」


 目の前には、爆風で真っ黒こげになったキグルミが横たわっている

「おっと、こいつ、死んじまったのか?」

「まだ生きているよ、かろうじてな」


 バッ!

 私たち四人は、声がした後ろに振り返り、戦闘態勢を維持する

「魔術師……お前は『ノーダメージ』のようだな」

「限定空間からの爆風の方角を計算しておいたからな……

 フム、まさか『特異点・マイクロブラックホール』まで生成するとは、少し『計算』を修正しなければならないようだな」


「今のオレっち達の技、見てなかったのかよ? お前たちに勝ち目なんてあると思ってんのか?」

「フッ……当然あると思っているよ、私の計算ではね」

「なんだと……?」


 ハヤトさんが両手を合わせ、『ヒトスジ』を発動しようとする……

「おい、お前」

 ビクッ!

「な、なんだよ……?」

「お前は先ほどの翁との戦闘と、『マイクロブラックホール』で能力を使いすぎだ、あと数回使えば意識を失って昏倒するぞ」

「な……」


 大門さんも、魔術師の影を踏み、『ヒトカゲ』を発動しようとしている

「そしてお前もだ」

「!」

「ここで『ヒトカゲ』を使うのはよした方がいい……

 先ほどの戦いでここの床は脆くなっている、ちょうどこの下の階は食堂の横、番組のロケで使う『爆薬』がしまってある倉庫だ。万が一床が抜けて爆薬が爆発したら……わかるな?」

「くっ……」


「わかっただろう、私はこの世のすべてを『計算』できる。お前たちがどんなに抗おうとも、私の『計算』の前では無意味だ」

 魔術師は、余裕の笑顔で、私たちの周りをゆっくりと歩く。


「まったく、お前たちのような低俗な輩がいるから、私たちのような『高尚』なものたちが苦労するのだ」

 魔術師は、やれやれと言った感じで、両手を上にして首を振る


「そこに横たわっているキグルミも、重度の自閉症らしい。

 だから全然喋れないし、顔を隠すためいつもキグルミを着ていると言っていた」

「お前……仲間だろ?」


「さっきのオカマもそうだ……男としても、女としても機能しないのなら、生きている意味などない」

「なんだ、こいつ……?」

 北上さんが、ハヤトさんの肩を掴んで説明する

「『優性思想』というやつだな……障害や疾患を持つ人間の出生や存在を、抑制・排除しようとする考え方だ」


 私はタブレットを開いて調べる。

「『優性思想』……ありました。

『遺伝的な素質の改善を名目に、優良な人間を増やし、不良な人間を減らすという思想』です。

 実際にナチスドイツや、昔の日本にも『優生保護法』という条例がありました。

 でも今は、『優生保護法』は『母体保護法』へと変わり、

 世界全体の考え方も、排除ではなく保護に変わっています」


「表向きは、な」

「なに?」

 魔術師の言葉に、ハヤトさんが即座に反応。


「みんな、心の中では邪魔だと思っているよ……実際問題、何の役にも立たず、存在するだけで不快。

 レセプター様が目指す、美しい人間、美しい地球には、不必要なものだ」


「このやろう、胸糞悪いことをべらべらと……」

「そうだよ、みんな頑張って生きているのに、僕だって……」

「世界中の人がみんな、アナタみたいな人ばかりじゃないんですからね」

「フッ、言っていろ、『劣等種』ども……」


 北上さんが前に出る。

「本当に『高尚』な人間なら、相手を卑下したり、自分を優秀だなんて絶対に言わない。お前は、自分で自分の『格』を落としていることになるぞ」


「なんだと……?」

 魔術師の顔が、凶悪に変わる……

 私は思わず、心の中で叫んでしまった。

(北上さん、カッコいい……)


「やかましい、このクソボケが!

 テメーらみたいな低能なサルごときが、私を愚弄するでないわーー!」

 肩を震わせて、ワナワナしていた魔術師が、急に激高!


「フッ……」

 北上さんは視線を逸らし、ちょっと苦笑い

「うわぁ……」

「ちょっと酷いな、あの言葉使い……」


「このザコキャラどもがぁ! 二度と舐めた口きけないようにしてやる!」

 魔術師の右の目にヒューマンスレイヤーの紋章が光る

「人身掌握術・ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ!」

 ジャララララーーーーッ


 魔術師の周りに、『数字』が集まってきて、それが鎖のように私たちに巻き付く!

「な、なんだこりゃ!?」

「ギャーハハ、どうだ、『数式』でできた鎖だ。

 それは『円周率』を10万桁まで言えないと外れない仕組みだ!」

「なっ、10万桁!?」

「そ、そんなの無理です~」


 パキィンッ

 パアァァ……

「えっ?」

 北上さんの『数式の鎖』の一部が、割れて霧散していく……

「3.14159265358979323846264338327950……」


 パキィンッ

 パアァァ……

「10万桁でいいのだろう?」

「ええ~~っ?」

 ハヤトさんが、もう呆れた顔で呟く

「北上、お前、ウソだろ……」


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